※フォルテシモはちは版権作品を舞台にしたオリジナルストーリーをお送りしています。
 原作のイメージを壊したくない方はお戻り下さい。





サイファーの訓練に付き合わされた俺は空から落ちてきた妙な3人組に出会い
しかも内一人が直撃してきて気を失った挙句
変な髪の色の男(カズヒサ)には「師匠」とよばれ
茶髪の女子(タチバナ)は「貴方が知らないのは当然よ」とか意味不明なことを言うし
俺に直撃してきた黒髪の女子は何かもう小動物で
カドワキ先生の平凡な日常のいいスパイスになってしまった(ため息)





[お世話になって]

キスティス先生との試験の課題で炎の洞窟から帰ってきてみると
寮の部屋にはあの怪しい3人組がいた。

「あ、師匠お帰りー」

「なんであんたらがいるんだ・・・」

「言ったじゃない、
 『不束者ですがお世話になります。』って。」

そんな丁寧な言葉じゃ無かったと思う。
そして俺は承諾をした憶えも無い。

タチバナが「世話になる」宣言をしたとき、
ちょうどカドワキ先生が呼んだキスティス・トゥリープが入ってきて、
それを口実に俺は保健室から出て行ったのだ。
・・・逃げてない、回避しただけだ。

「第一発見者には面倒を見る義務があるわ。」
「それは捨て犬・捨て猫の話だろ。」

ただでさえ試験で疲れているというのに、
ますます俺の疲労感は増していく。正に心身共に。
ちなみに、同じ第一発見者であるはずのサイファーは、
タチバナの好みで無かったらしく(ひどい話だ)
「もっとちっこくて俺印のニット帽被ってりゃ面倒みてやるのに」と文句を言っていた。
見てもらうのでなく、見てやるのか。

「でもさタチバナ、
 俺たちの目的は果たしたんだからもういいんじゃねえの?」

まあ若い師匠に稽古してもらうのも楽しそうだけどさぁ。
カズヒサは俺を横目でみてそう言う。
・・・というかオイまて、人の部屋で勝手に筋トレとかするな。

「目的」について少しだけ気にはなったが、
このまま話が進めばこの怪しい3人組が出て行ってくれそうだったから
俺は黙ったままにした。

黙ったままといえば。
俺がこの部屋に入ってきてから、一人だけまだ声を発していないヤツがいた。

「なあ、姫さんもそろそろ帰りたいだろ?」

カズヒサが俺の背後をみて声を掛けた。
つられて振り返ってみると、そこには黒髪の女子が立っていて、
手に持っている銀のトレイの上には湯気の立つカップが三つのっていた。

「えっと・・・
 とりあえず、コーヒーどうぞ。」

控えめな態度で差し出されたカップを俺は受け取った。
が、すぐに思ったことがあった。

何馴染んでんだあんたら。

「アタシ、旅行は滞在主義なの。」

有給休暇をまとめてとって海外旅行!って感じに。
コーヒー取ったタチバナは黒髪の女子の返答を代弁するかのように
俺のベッドにドカリと座り、カズヒサを見下ろす。

「有給って・・・タチバナお前、女子高生だよな?」

タチバナの視線から逃れるように
最後に受け取ったコーヒーに目を向けて一口すすると、すぐさま顔を上げた。

「ってことは、まだ帰るつもり無いってこと?」
「もちろん。」

満足そうな顔を見せてしっかりと頷くタチバナに
カズヒサの顔が引きつった。

「オイオイ、初耳だぞ!
 いや、何となくそんな予感はしてたけど・・・」
「よかった、あんたの勘は脳ミソよりは優秀みたいね。」

見直した。とため息をつくタチバナ。
どうやらお互いに情報が行き届いていなかったらしい。
というか、主にカズヒサが。

「なあ、あんたらどういう関係なんだ?」

二人の様子にあたふたする黒髪の女子に俺が尋ねると、
そいつは俺と二人を見比べて申し訳なさそうに眉をたらす。

「あの・・・、
 タチバナさんと私は知り合いなんですが、」

横目でちらりとカズヒサを見る。

「ちょうどあの場所にちょうどいてちょうどいいから声掛けたの。」
「つまり、俺は赤の他人。」

コーヒーをすするタチバナの足元で、
あぐらをかいていたカズヒサは深くため息をついた。
さっきまで師匠師匠とやかましかったが、こんな姿をみると
珍しいことだが俺もほんの少し同情してしまう。

「まあ、まるっきりってわけじゃないどね。」

窓の外を眺めてタチバナが呟いた。
でもそれが聞こえたのは俺だけだったらしく、
カズヒサはコーヒーをすすり、
黒髪の女子は自分の分をカップに注いでいた。
(ちなみに、そいつはブラッグではなくカフェオレを飲んだ)

ってだから、

「・・・なんであんたらここにいるんだ。」
「だからお世話になります。」

タチバナから「何度も言わせるな」という声が聞こえなくても分かった。
でもそれ俺も同じ台詞だ。

「それは分かった。
 だからって女子が男子の部屋に来るのは規則違反だ。」

逆もまた然り。
最もな俺の言葉にカズヒサと黒髪の女子の二人は「そうだった」と深く頷く。
しかしタチバナはどうだ、やれやれといった様子で首を左右に振りため息をついた。

「とかいって、この先何度も女の子が来るのに。」

な ぜ 言 い 切 る

悪寒がした。


「お、スコール帰ってきたのか、おつかれー。
 麗しのキスティス先生との個人授業はどうだっ・・・どわー!?」

隣の個室を使っている男子生徒(名前忘れた)が入ってくるなり
ベッドを陣取って座るタチバナと、
椅子に座りカフェオレ(の割りに牛乳が多い)をすする黒髪の女子を見て叫んだ。
カズヒサは見えてなかったらしい。

「おま、おま、おま・・・!!
 あのキスティス先生にさえ鼻の下を伸ばさなかったお前が、
 まさか自分の部屋に女の子を連れ込んでるなんて、しーかーも2人も!
 人間見かけによらないもんなんだな、俺、なんか感動しちゃった・・・畜生、やるじゃねえかこの!」

「ちょっとまて、これは違っ」

「隠すなって、俺にはわかる、
 お前、大人受けはするのに実際はもっと年相応の子の方が好きなんだよな」

「だから、違っ」

「よーし、俺もこれを気に彼女とか作っちゃおうかな、
 実は気になっている子がいてさ、
 いつも食堂で見かけるんだけど、声掛けようか迷ってて・・・」

「話を聞け!」

「大丈夫、俺絶対言いふらしたりしないから、
 地元じゃ口の硬さはダイアモンド並み☆で有名だから!」

「☆は辞めてくれ」

「あ、でもトゥリープFCには気をつけろよな、
 お前のこと目の仇にしてるやつが多いから。」

「知るか」

「じゃあ、俺ちょっと食堂いってくるから!
 ・・・その、なんだ、お幸せに―――――!!!」

「おい!まて!」

隣の個室を使っている男子生徒もとい「口の硬さはダイアモンド並み☆」は
俺のことばもまともに聞かず颯爽と部屋から出て行ってしまった。


「行っちゃった・・・。」


少し時間が流れて、黒髪の女子があっけに取られた表情でそう呟いた。
タチバナは気にすることなくコーヒーをすすり、
カズヒサもぽかん、と口を開けっ放しにしていた。
そして俺は俺で、とても疲れた。



明日のSEED実施訓練、休もうかな



next...

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学園って、いいなぁ!! 2008.5.3
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用語メモ
・キスティス・トゥリープ スコールの教師。最年少でSEED資格を獲得し、18で教師に。美人。
・試験 実技試験。RPGでおなじみ制限時間クエスト。イフリートと仲間になれる。