※フォルテシモはちは版権作品を舞台にしたオリジナルストーリーをお送りしています。
 原作のイメージを壊したくない方はお戻り下さい。




「カズヒサ、次講義だからおくれんなよー」
「おー」

訓練場は遭遇するモンスターのレベルがピンきりで、
俺は本日3匹目になるティラノザウルスみたいなのをを倒した。
ちょうど最後の一撃を食らわせたところで出口の方から声がかかった。

ガーデンでの生活には思ったよりもすんなりとなじんでしまった。
さすがに「違う世界から着ました」とは公にはいえず、
俺たちは単なる編入生としてガーデンで暮らすことになった。
俺とタチバナはSEED候補生として。
姫さんは年少クラスに。
戦闘訓練さえ除けば、普通の・・・うーん、だいぶ豪華なアカデミーみたいなもんで、落ち着くのは簡単だった。

今思えば、この落ち着きが、
毎度毎度の騒動を巻き起こしてたんだよな・・・


[Are You Ready?]


「出かけるわよ」

腰に手を当てて仁王立ち、お決まりのポーズでタチバナは俺に言った。
たった数ヶ月の間で、ガーデンでのタチバナの地位は上がりに上がっていた。
こんな理不尽なヤツだが、実は恐ろしいほど万能女子高生だったんだ。
勉強も出来ればスポーツ(ここでは戦闘訓練になるけど)もできて、
周囲の心をキャッチするのもうまい。
頭の回転もはやく、常に冷静。
ことあるごとに輝きを見せるタチバナに、誰もが注目をしている。

いまではすっかり

「訓練ですかタチバナさん!」
「今日も精が出ますねタチバナさん!」

会う人会う人が頭を下げて挨拶をしてくるようになった。

・・・どこの族長だよ。

「へいへい・・・で、どこへ?」

俺は正宗を鞘に戻しながら聞き返した。
愛用の刀、「正宗」は今日も切れ味絶好調。
刃渡りが飛び切り長いこの刀は由緒正しい日本刀で
俺が師匠(こっちの師匠じゃない師匠。・・・ややこしっ)に会うずっと前からの付き合いだ。

「さっさとして、待つの嫌いなの。」

俺の質問はきれいに無視。
さっきまで俺が相手にしていたティラノザウルスみたいなのに向かって手を2回叩いた。
この訓練場でずば抜けて凶暴といわれているそいつは、
その音に気絶から目を覚まし、そしてタチバナをみると一目散に尻尾を巻いて逃げ出した。

恐竜も 逃げ出す彼女は 女子高生?

俺カズヒサ心の一句。


タチバナの後ろについていくと、そこは真っ白な部屋だった。

「あ、タチバナさんおかえりなさい。」

タチバナが扉を開けて入ってきたのに姫さんが気づいてこっちをむいた。
対して広くない一室だけど、壁も床も天井も真っ白で、広々と感じた。
白って膨張して見えるんだと。
だからあんまり白い服着たくないっていう女の子もいるんだよ、気にしすぎだよな。
おれは白好きだぞー、清楚そうで、ってどうでもいいか。

「よ、姫さん。」
「こんにちわ、カズヒサさん。」

俺が声を掛けると、姫さんは恭しく頭を下げる。

姫さん。改めアカネ。
俺より3つ年下の女の子。
姫さんとタチバナは付き合いが長いらしいけど、この二人の性格の違いには涙が出る。
あんな傍若無人なタチバナのそばにどうしてこんなにいい子がいるんだろう。
俺わかんない。

「さ、いくわよ。」

「姫さん、どこに出かけるのか知ってる?」
「・・・いえ。」

小声で姫さんに問いかけると、姫さんは乾いた笑いをこちらに向ける。
嫌な予感がするぞ。
タチバナがなにやら言葉をつぶやくと、床がひかりだした。
俺たちがガーデンにやって来たときと似た景色。

自分の体が透けていくのを感じながら、
見えたのはタチバナのわくわくとした笑顔だった。

「え、何、出かけるって『世界に出かける』ってことだったのかよ!!」

きいてねーよ!
  




大神研究所

火山の中にあるここではミニ四駆の開発が進められていた。
研究所の博士は大神博士。
もっとも速く強いマシンを作り上げる為には
どんな残酷なことでもやってのける彼の背中を私はずっと見ていた。

そのために集められた子供たち。

もはや楽しむ事を忘れて勝つことのみを考える姿は
『子供』とは呼べなかった。

「ナンバー4、ナンバー7、制限タイムクリアせず!」
「始末しろ!」

彼に認められないマシンはみんなマグマの中へ落とされる。

「どうした幸埜。」
「あ、はい。JBのデータがでました。」

振り向きそう問う彼にわたしは書類を渡す。
彼はそれを受け取るとくまなく目を通し、ふっと笑った。

「よし、合格だ。」

後ろから小さな安堵のため息。
見てみれば、マシンを大事そうに抱えたJ君。
でも表情はなかった。


ビーッ!
 ビーッ!


突然、警報鳴りひびいた。

「何事だ!」

彼はその大きな音に苛々としたように声を上げた。
その声に一瞬からだが縮こまる。

「研究所内に何者かが侵入しました!」
「場所は」
「主力室です!!」
「捕まえろ!」

「「「ハイ!!」」」

研究員の慌てた報告に大神博士は怒鳴りながら指示を出した。
数名の研究員たちが走って主力室に掛けていく。
私も後に続いていこうとした。けれども

「幸埜、お前はここにいなさい。Jもだ!」
「・・・ハイ、」

大神博士に呼び止められ、私とJくんはその場に残ることになった。


「主力室なんて、研究所の中心にあるのに、どうして・・・」


警報はまだ鳴り止まない。






next...

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夏といえばレツゴですから。 2008.8.9
ff8next

■レツゴ(爆走兄弟レッツ&ゴー!)の紹介

こしたてつひろさん作のミニ四駆の漫画とそれを基にしたアニメ作品。
アニメはテレビ東京系で1996年から1998年までの3年間に渡り放送されました。

第1シリーズは星馬烈(せいば れつ)、星馬豪(せいば ごう)の星馬兄弟が
ミニ四駆の研究者、土屋博士から譲り受けたセイバーというマシンを育て上げ、
様々なミニ四レーサー達と競い合うという内容。

第2シリーズは、舞台が日本国内から世界に。
「WGP編」(World Grand Prix、ワールドグランプリ)と呼ばれ、
内容は今までのライバル達とチームを組んで世界と戦うというもの。

第3シリーズは、主人公が代わり、作品名も『爆走兄弟レッツ&ゴー!! MAX』と変更。
(原作は第3話からアニメに合わせて作品名を変更。)「MAX編」と呼ばれる。
一文字豪樹(いちもんじ ごうき)、一文字烈矢(いちもんじ れつや)の一文字兄弟が
ミニ四駆のバトルレーサー養成施設、ボルゾイスクールの方針に疑問を感じ、
スクール所属のレーサー達と競い合うという内容。
この大幅な内容変更に合わせてキャラクターデザインも変更。

※フォルテシモはちは第1シリーズ(無印編)〜第2シリーズ(WGP編)仕様です。


用語メモ
・ティラノザウルスみたいなの フィールドや訓練所で出会うと絶望的なモンスター(FF8)
・ミニ四駆 早い話がモーターカー。形はF1カー。1個550円〜(モーター別売)
・大神博士 爆走兄弟レッツ&ゴー!で悪役敵存在。バトルマシンを作るひと。スカウター。
・J 研究所でミニ四駆を走らせている少年。使用マシンJB。

・幸埜 ff8オリジナルサブキャラクター。