※フォルテシモはちは版権作品を舞台にしたオリジナルストーリーをお送りしています。
 原作のイメージを壊したくない方はお戻り下さい。





変な人たちがやってきた。でも僕には関係ないことだ。



警報が侵入者をしらせ、
大人たちが主力室へ行ってしまった時、
僕と幸埜さんは博士にここに残るようにと呼び止められた。

「さあJ、マシンの改良を続けるぞ。」

この人はマシンのこと以外はどうでもいい。
それはきっと僕が常に一番しか狙わないのと同じ。

「幸埜、モニターAに付きなさい。」
「はい、大神博士。」

幸埜さんがすばやく返事をする。
僕がこの研究所で生活をするようになる前からいた女性。

「騒がしいけれど、頑張ってね。」

スタートに向かう僕にそう声を掛けてくれたけれど、
僕は頷いただけだった。

優しさなんて余計なものを考えちゃダメだ。
ただ勝つことのみを考えなければ。

でないと、ここにはいられない。




[Who are you?]




「あのータチバナさん?
 確かに気づくのが遅かったのが悪いとは思うのですが、
 やっぱりあらかじめ、
 行き先とか教えてくれたっていいとおもうんですが・・・


 そしてついでに、まともに世界に着陸したいのですが・・・」

やあこんにちわおれカズヒサ。
今俺には世界が天地逆転してみえている。
なぜかというと、俺は仰向けに倒れているからだ。

そしてとても息苦しい。
体が重くて身動きが取れない。

なぜかというと

「そんなのつまらないじゃない。」

タチバナが俺の上に乗っかっている(正しくは座ってる)からだった。

万能女子高生・タチバナ。
嫌いなものは暇。
彼女に常識なんてない。

つまらなくてもいい。
普通って、幸せなことなんだぞ。
今なら悟りをひらけそうだよ俺。

動けない体を何とか言うこと聞かせて、俺は周り見渡す。
床は固くあたりは暗い。
どこかむっとしていて、機械が動いている音が辺りに響いている。

「タチバナさん、カズヒサさん、・・・?」

目の端で影が起き上がった。
高めのかわいらしい声。姫さんだ。
やっとタチバナがどいてくれて、起き上がりながら俺は姫さんに声をかけた。

「姫さん、大丈夫か?」
「はい、大丈夫で・・・?」

ビーッ!
 ビーッ!

姫さんが言いかけたとき、けたたましく警報が鳴り響いた。
赤いランプが点滅し、暗かったあたりを照らす。
ようやく見えた世界。

まず驚いたこと。


「「!?!?!?!?!?!」」

「よし、成功ね。」

「いやいやいやいや何が成功だよ、体が縮んでんだぞ!!」
「私もです、私もなんだか小さくなってます!!」

俺たちの体は縮んでいた。

「すごいでしょー、正にアポトキシン4869。」
「見た目は子供、頭脳は大人!?」

タチバナは満足そうにそういう。
聞き覚えのある名称に思わずつっこみをしてしまった俺だけど、
頭の中はパニックだった。
動きづらいと思ったのはサイズに合わないガーデンの制服がまとわりついていたからだ。
そばにあった正宗が更に長く感じるし、思えば声も高くなっている気がする。

姫さんは更に小さくなって、見た目小学校中学年ぐらい。
タチバナもまとうオーラは大人顔負けだけど、見た目は断然幼く丸い。
いっちゃなんだか、可愛い。

「ちょうど小学生ってトコロね。やればできるじゃない。」

「誰に言ってんだ。」
「企業秘密よ。」

タチバナはいつも意味深な言葉をいう。
これで分かるのは、このお子様化現象はタチバナの発案だが、
実行犯はべつにいるということだ。
・・・それは誰だかなんて、知りたくない。

ビーッ!
 ビーッ!

相変わらず警報は鳴り響き、赤いランプもまぶしく点滅する。

「いい加減うるさいわよ。」

「ああ、おれの正宗!!」

タチバナが俺から正宗をふんだくって槍投げのように警報装置に向かって投げた。
オリンピックの槍投げ選手も裸足逃げ出す命中率。
正宗はまっすぐ飛び、警報装置を貫いて音を止めた。

・・・ひどい。

赤いランプも点滅をやめて、部屋の中を赤く照らすだけになった。
太さの違うパイプがはびこり、大きな機械がゴウンゴウンと音を響かせている。
この部屋がむっとしていたのは、機械が出していた熱のせいなのだろうか。

「・・・で、結局ここはどこなんだよ。」

何とか正宗を助け出し、タチバナにいた俺だったけど、
近づいてくる無数の足音に、思わず身構えた。
うーん、ガーデンでの教育が生きてるよ師匠。

「そこにいるのは誰だ!」
「大人しく出て来い!」
「子供・・・?」
「ここで何をしていた!?」

ブシュンッと空気が抜ける音とともに部屋の扉が大きく開くと、
白くまぶしい光とともに逆光で黒く陰る大人の人間の影が塊で入ってきた。
金属ばかりの無機質な部屋に響いた怒鳴り声に、
姫さんが小さな悲鳴を上げて一歩後ろに下がる。

「姫さん、大丈夫?」
「は、はい・・・」

かすれた返事に、俺は姫さんの手を握った。

「俺とタチバナがいる。怖いことなんて無いさ。」

安心させるように、俺は笑ってそういった。
姫さんは力強く俺の手を握り返してこわばりながらも笑ってみせる。
そして俺は前にいるタチバナを盗み見た。

「さて。お話の始まりよ。」

こんな状況で楽しそうい口の端をあげているタチバナ。
・・・ごめん姫さん、前言撤回。



一番怖いのは、タチバナだ。




警報がとまり、しばらくしてから研究員が連れてきたのは、子供たちだった。
この研究所にいる子供たちと同じ年頃の3人の子供。
不安そうな様子の一番歳の小さそうな黒髪の女の子と
青とも緑ともつかない不思議な髪の色をした男の子。
彼と同じ位の歳と思われる茶色髪女の子。
3人ともこの研究所にいる子達と違い体のサイズに合わない黒い服を着ていた。

「侵入者を捕まえました。」
「ほら、大人しくしてろ!」

「っ!」
「うわっ!」

研究員達は子供相手に乱暴に扱って
突き飛ばすように小さな女の子と男の子を叩く。
みていられず、私は声を上げた。

「あなたたち!子供相手になんて乱暴な!」

「ですが・・・!」

「実験に戻りなさい。
 この子達については私が博士に報告します。」

研究員の言葉をさえぎって子供達を自分の背後にまわす。
彼らは納得のいかなさそうな顔をしつつも、急ぎ足で自分の持ち場に戻った。
モニターの向こうで行われている、残酷な研究のために。

「・・・怪我は無い?」

「は、はい・・・」

振り向いて、そう問いかけた。
小さな女の子は私の手をとると、ひどく辛そうな顔をした。
それを見た私は胸がえぐられたような気分だった。

「ごめんなさいね、怖い思いをしたでしょう。」

「・・・、その、」
「お姉さん、やさしーんですね。」

小さい女の子の言葉にかぶせるように、男の子が言った。

「僕達気がついたらここにいて、・・・ここどこですか?」

人懐っこい声で私にそういう男の子。
瞳の色は髪と同じように、光の加減で緑にも青にも、灰色にもみえた。

「ここは・・・」
「大神研究所でしょ?」

さえぎって入ってきた言葉ははっきりとしていた。
振り向くと、茶色髪の女の子が楽しげな顔を見せる。

「あなたが第一発見者よ。」

あたし達の面倒を見てね?

見た目は小学校の高学年ぐらいの女の子なのに、
私がしゃがんでいるからだろうか、見下ろす目にある威圧感は
大神博士とは違う絶対的な威圧感。
その勢いに思わず私は

「は、はい・・・」

返事を返してしまった。

後ろで男の子が深く深く疲れたようなため息をついた気がした。




next...

---------------------------------------
GWのコナン映画は必ず見に行きますよ。 2008.9.20
backff8next

用語メモ
・アポトキシン4869 メルモちゃんのキャンディではない。