妄想ウルトラマン80■
■第1話■ウルトラマン先生  01/02

任教師が、入学式に遅刻するといったシチュエーションは、学園モノの第1話の定番か。
 本作の主人公、桜ヶ岡中学の新任教師・矢的猛も、桜の咲く早朝の通学路を懸命に走り抜ける。生徒と等身大の、人間味あふれるセンセイといえば、就任初日から朝寝坊もする…かもしれない。しかし、この矢的猛という男性は、学校に来るギリギリまで、全国各地をまわって、怪獣出現の予兆を調査していたというのだ。一般のドラマであったら、ただの妄想狂だが、ここはウルトラワールド。五年前まで怪獣が出現していたそうだから、話は違うはずだ…が。

 桜ヶ岡中学の入学式。校長先生のあいさつ、そして新任教師の紹介… 理科教師の主人公と、美人体育教師・相原京子。いかにも!な人物設定、そして予想される、いかにも!な展開。以降、予想通り、主人公はマドンナ先生に片思いする。これもまた、このテのドラマの定番か。でも、ここはウルトラワールド。
 遅刻して、まだ到着しない矢的に、生徒の笑い声が起こる。一方、相原には、「女の先生だぞ、体操できンのかよ」との声が。カチンときた京子センセイは、突然走り出し、軽い身のこなしで鉄棒の技をきめ、一発で生徒のココロを鷲づかみにした。そこに滑り込んできた矢的。生徒の笑いと、思わずふき出す京子センセイ。教頭先生はお冠だ。
 ほのぼのしていて、いいんじゃないでしょうか。でも、ここはウルトラワールド。

 矢的は、教室で生徒に、自分のモットーを話す。 “一所懸命” 「人には一生、命をかけてやらなければいけないことがある。その大きな目的を達するためには、その人が今いる所で、今やっていることに最大の力を尽くす」 これが、矢的猛だ。実は、彼こそがウルトラマン80なのだが、日本のことわざもすでに勉強済だったということか。そんな時、地震が起こる。猛は、その超能力で怪獣の気配を感じ取る。 「もし怪獣が出たら、君たちはどうする」

 東京近郊にある地球防衛軍極東エリア基地。リアルな滑走路にオモチャな戦闘機。この特撮番組的けれんみが、第1話からクール。怪奇現象・怪獣専門チームUGMのハラダ、タジマ、城野の各隊員は、レーダーの異常をとらえるが、まさか怪獣だとは思わない。それより電子ゲームの続きが気になる。怪獣の出現しない5年間の平和が、隊員たちの士気を低下させていた。ひとり怪獣の気配を感じていたオオヤマキャップ自らが、調査に向かう。隊員を叱咤するわけでなく、調査の命令を下すわけでなく、俳優・中山仁のイメージからすれば、有能なキャップであることは、説明せずとも想像できてしまうのだが、そんな彼が自ら出動するということは…孤立無援の状況が演出されている。

 生徒を校外に連れ出した矢的だが、訳のわからない生徒からブーイングを浴びる。怪獣の進行が環境を破壊していると予測する矢的は、生徒に野原の異常を観察させる。いかにも理科っぽくていいんじゃないでしょうか。
 そこで、矢的はUGMオオヤマと出会う。怪獣出現を予感する2人。
 「醜い心、悪い心が寄り集まって怪獣が生まれてくる。今の世の中にはそれが満ち満ちている。地球の人はどうしてこんなにのんびりしているのか」
 と、オオヤマ相手に熱弁を振るう矢的。“地球の人”という表現を、オオヤマは不思議がるが、視聴者はすでに承知していること。その熱い思いを伝えるために、つい口を滑らせてしまった矢的のキャラクターが表現されているといえるだろう。
 「このまま育てば怪獣のようになってしまう子供がたくさんいる。怪獣の生まれる根本を叩き潰したい」
 出てくる怪獣を倒せばいいのではない。その出現理由が、人間の心にあるのなら、出現する前にそれを阻止したい。そんな矢的の(ウルトラマン80の)思いが、地球での仮の姿として先生を選んだのだろう。理に適っている!
 教師モノが人気を集めた時代が、ウルトラマンまでも先生にしてしまったわけだが、それをプラスにかえて、ウルトラワールドで新しいドラマを展開させる。そのウルトラ的でないものを、作品に溶け込ませようとする、製作者側の意気込みには乾杯。

 職員室。矢的は、無断で生徒を校外に連れ出したことから、「生徒たちに信用され必要とされる教師」ではない、と教頭先生に説教される。見かねた京子センセイが「怪獣が出そうだというのは本当なんですか」と助け舟を出すが…
 新任教師・矢的センセイの暴走(生徒、他教師からみれば)、内に秘めたその熱い思い、が伝わらず、空回りしている様子がコメディタッチで描かれてCMへ(2000/10/09)
>>第1話研究(後半)

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