妄想ウルトラマン80■
■第1話■ウルトラマン先生  02/02

GM基地。オオヤマが隊員たちに、これから臨戦体制に入ることを告げる。怪獣出現の予感を信じる者が、自分以外にも一人いた(不思議な青年=矢的猛)というだけで、こんな指令を告げられては、タジマ隊員じゃなくても、納得いかないだろう。第2期ウルトラシリーズでよく取り上げられた、他人に認めてもらえない者の苦しみ、か。それでも、一人で苦しんでいる分にはいいが、部下である隊員まで巻き込んでしまうのは、隊長としてどうかとも思う。
 一人調査に向かうオオヤマに、かぶさるナレーション。「オオヤマは孤立無援だった」…ああ、いっちゃった。そこまで説明しなくてもいいのに。せっかくの演出が台無しじゃないか。が、これ以降もナレーションの暴走は止まらない。それは、結局最終回まで続き、この番組のオリジナリティになってしまうのだ。これは、制作に大映テレビが噛んでいたから、なのだろうか。

 放課後、学校の帰り道、矢的と京子センセイが並んで歩いている。「矢的先生はロマンチストでしょ。怪獣はロマンだわ」という京子センセイに、自分の予感を信じてくれていたわけではなかった、とショックを受ける矢的だったが、ここで疑問。5年前までは怪獣が出現していた世界で、怪獣はロマンたり得るか。太古の昔に絶滅した恐竜ならまだしも、現代社会の破壊者である怪獣をロマンとは? 人間なんてそんなものといってしまえばおしまいかもしれない。砂利道を懐かしんだり、絶滅寸前まで追い込んだ動物を保護してみたり…。それはそれでリアルだが、ドラマ的リアルではないだろう。この収まりの悪い矛盾をどうにかしてほしい。本編と特撮の融合が特撮映画の永遠の課題であるように、非日常的ドラマと日常的ドラマの融合は、慎重にやらないとボロがでる。仮面ライダークウガの世界ぐらい、我々をだましてくれれば納得するのだが、それも世紀末にきてやっと出来たこと(出来かけていること)だから、仕方がないのか。

 オオヤマと矢的のセカンドコンタクト。ここで矢的は、オオヤマがUGMの人間だと知る。

 で、結局怪獣は出現した。先生にも生徒にも、最後まで信じてもらえなかった矢的だったが、それにしても、あまりに気の抜けた出現シーンである。地震が起きたかと思ったら、空に青いイナズマが走り、怪獣と化す。足りない、もう少しひねりがほしい…。UGM基地で観測された「すごい影」で納得するしかないのか。
 記念すべき第1話怪獣クレッセントは、二足歩行恐竜型の可もなく不可もない、ベーシックなデザイン。首の「月の輪」には意味があるのかないのか、考えてみればシュールでもある。細い足首に魅力を感じたのは私だけか…。

 出撃するUGM戦闘機、スカイハイヤーとシルバーガル。タジマ隊員の「本当に出やがるなんて…」は、作品世界を物語る重要な台詞であろう。ミサイルで応戦するが、シルバーガルは光線を受け墜落する。ハイ、これでUGMの出番は終わり。

 逃げ惑う群衆の中、転んだ子供を助けた矢的がブライトスティックを天に掲げ、叫ぶ 「エイティ!」
 そしてそこには、左腕を高く掲げたウルトラマンエイティが、光を浴びて神々しい姿でそそり立った。
 ここでひとつ、変身の時、何で自分の名前を絶叫するのか。ウルトラマンタロウと東光太郎は、もともとは別人格だったから、もう一人の自分を呼び覚ますためととれるが、レオにしろエイティにしろ、人間体が仮の姿。なのだから、これは、俺の本当の姿はウルトラマンレオなんだ!という心の叫びか、気合か。って考えすぎ。
 どうにしろ、ローアングルから見上げる銀色の巨人はカッコいい。ついでに怪獣も同じ構図でのあおり。とうとう始まるウルトラバトルだが、ここで、矢的の生徒らが叫んだ。「あっ、ウルトラマンだ!」
 そう、この世界では、正義の味方・ウルトラマンの存在が認知されているのだ。なにせ、スカイハイヤーを操縦するオオヤマも、エイティと怪獣とのバトルには、まったく手出しをしないのだから。というか、シーンに一切出てこない…。
 そして暴走ナレーション。「変身するところを誰かに見られたら、地球を去らなければならないのだ」…なぜだ、なぜだ、なぜだ! お願い説明してっ。

 激闘の末、サクシウム光線で勝利を収め、飛び去るウルトラマンエイティでした。

 桜ヶ岡中学職員室。怪獣出現とともに、生徒を置き去りにして逃げ出した(ようにしか見えない)矢的に教頭センセイは不機嫌。京子センセイは、自分の誤解(?)を矢的に詫びる。よかった、よかった。
 校長室に呼ばれる矢的。そこでみたものは…オオヤマキャップ! 放課後と日曜日、矢的をUGMに借りる許可を校長から得たという。オイオイ。「ただし、他の先生や生徒には内緒だよ」という校長センセイにもオイオイ。桜ヶ岡中学は私立ではないはず(第2話)だが、UGMは副業に含まれないのか。
 「これからはUGMと学校の2ヶ所で一所懸命頼むよ」って、キャップもうまいね。って、うまいか?
 その場で「はいっ」と即答してしまう矢的にもオイオイ。

 「こうして、ウルトラマンエイティ=矢的猛の物語が始まった」

 ただの主人公登場編というには、詰め込みすぎかもしれない。しかし、第1話で、これだけのレールを敷いてしまえば、次回からは一話完結のドラマが繰り広げられる。私はこれを否定するものではない。ただ、この一話によって、旧来のファンのどのくらいかは去っていった、これも事実ではないか。(2000/10/22)
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