白い悪魔の恐怖
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■怪獣批評 〜バンダイ「ウルトラ怪獣シリーズ」にみる「80」怪獣の魅力〜

ルトラ玩具といえば怪獣ソフビ。しかし、「ウルトラマン80」放送当時、玩具メーカー「ポピー」が発売した「80」怪獣は、番組初期の8体に終わった。

怪獣に造詣の深い小林晋一郎氏が自著の中で語っている。「(「80」放送)開始1ヵ月の怪獣群はすべて黒系統の単色・二脚・悪党ヅラで、没個性が著しかった。物語全体の設定が、怪獣の設定にカセをはめたとは思えないが、スタートダッシュをかけるべき時期の怪獣不在は、『80』の船出に暗雲をもたらした」…

■1983年、「ポピー」と合併した「バンダイ」が「ウルトラ怪獣シリーズ」を発売した。現在に至るまでに「80」怪獣でラインナップされたのは「ギコギラー」、そして「サラマンドラ」「ギマイラ」。また、番外で「バルタン星人5代目」が2004年に発売されている。ストーリー的にも、造形的にも、「サラマンドラ」「ギマイラ」は「80」怪獣の代表格。これら80年代に復活した“正統派”は、商品化されて然るべき怪獣ではある。

しかしそれでも、成田亨デザインの「バルタン星人」「レッドキング」「ゴモラ」といった国民的人気怪獣に太刀打ち出来るはずもなく、1996年、16年ぶりのテレビシリーズ「ウルトラマンティガ」丸山浩デザイン怪獣の鮮烈なデビューによって、「80」怪獣復活(ソフビ化)の機会はほぼ失われてしまったといっても過言ではないだろう。

「ティガ」の奇跡により息を吹き返したウルトラシリーズ。ウルトラ怪獣はいまも増え続けている。そして2005年、「ウルトラ怪獣シリーズ」ラインナップから「80」怪獣は、消えた。

■「サラマンドラ」「ギマイラ」はしかし、ストイック過ぎた。だったら、悪党ヅラの最右翼「ホー」、80年代のメカゴジラ「メカギラス」、モチーフ不明の個性派「アブドラールス」、燃える闘犬「ゴラ」、美しき死神「デビロン」、孤高の快獣「ジヒビキラン」「イダテンラン」、憎き悪人「ガルタン大王」、最強最後の怪獣「マーゴドン」がいるじゃないか…。ああ、マイノリティーの遠吠え。逆にいえば、その不遇さがまた名獣たちの魅力なのだが。

2005年末に発売された検証本『君はウルトラマン80を愛しているか』に掲載された、「80」怪獣デザイナー山口修氏のインタビューが追い討ちをかける。「80」怪獣デザインに対して「あまりいい印象がない」そうだ。親に愛されない子供、とは…

■いまはただ、幸薄き「80」怪獣たちに鎮魂歌を。(2006/1/29)

跡の「再生」は突然に…。ウルトラマン誕生40周年記念作品『ウルトラマンメビウス』第13話に、再生怪獣サラマンドラが出現した! 玩具情報誌「ハイパーホビー」の誌上限定で「サラマンドラ2006」が販売された!! 劇中の新サラマンドラは丸みを持った造形で、初代のシャープさが欠けていたのは残念だったものの、それでも「80」怪獣がバンダイ「ウルトラ怪獣シリーズ2006」に番外でもラインナップされたことを、とにかく喜ぼうではないか。
(2007/2/3)

■サラマンドラの再生能力には舌を巻くしかない。『ウルトラマン80』が30周年を迎えた2010年1月、ウルトラ怪獣シリーズEX「再生怪獣サラマンドラ」が発売された。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』の公開に合わせ、「サラマンドラ2006」がリペイントされてまさかの一般発売。 『大怪獣バトル〜』劇中イメージに近い重厚なカラーリングが実に素晴らしい。この勢いで『ウルトラマンメビウス』でリメークされた「硫酸怪獣ホー」もソフビにしちゃえば!!
(2010/5/9)

■「ウルトラソフビ超図鑑」(2010年、ワールドフォトプレス刊)に山口修氏のインタビューが掲載されている。こちらでは、「恐竜型を中心に、(中略)シンプルで大らかな怪獣に戻したかった」「後半のややコミカルな怪獣も楽しんでデザインしていました」と思い入れたっぷりに当時を振り返っている。「君はウルトラマン80を愛しているか」のインタビューと読み比べると、その豹変振りが、とっても素敵だ。
(2012/2/18)

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