大宇陀を訪ねて
奈良県宇陀市 大宇陀松山地区 平成22年10月23日(土)



今回も高速バスを利用して、奈良県宇陀市 大宇陀松山地区の古い町並みを訪ねました。最寄りの駅の「近鉄・榛原駅」の観光案内所でバス乗り場を確認。1時間に1.・2本しかありませんが、「これでも増えたんですよ」とのこと。大宇陀までは17分です。
飛鳥時代から「阿騎野」と呼ばれ、宮廷の狩場だった大宇陀に、戦国時代「宇陀三将」と称された秋山氏が城を築き、その麓に栄えた城下町が宇陀松山地区の始まりとされています。以後、宇陀松山藩や天領時代など歴史のうねりの中で変遷を繰り返し、それぞれの時代の影響を受けながら、今日のまちなみを形成してきました。
平成18年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。まずはバス停前の道の駅「宇陀路大宇陀」で資料を入手します。
バス停前の道の駅。





今回はこちら1本でと考えていたので、時間はたっぷりあるはず。観光イラストマップの@番から順番に見ていこうと思いました。最初は大願寺(仏足寺)です。大宇陀中学校脇の細い山道(参道)を上がって行くと、歴史を感じさせる石段の向こうにカエデが色ずく山門が見えてきました。


歴史を感じさせる石段

仏足石(上)と山門から見える見事なカエデ(下)
道の駅から国道より一本北の小さな橋を渡ると古い町並みが見えてくる

宇陀川の清らかな流れ

橋の向こうのレトロな建物(元町役場)も風情があります。

古い町屋を手を加えることなく利用したケーキ屋




千軒舎(まちづくりセンター)は、明治初期の住宅(旧内藤家)を改修したまちづくりの拠点施設です。エントランスホールには、この住宅に関する資料や歴史的町並みの保存と整備に関する展示があります。白壁が何ともきれいでした。じっくり見たいところですが、時間が気になりました。

 
エントランスホール(左)と高い屋根裏(右)
 
畳の間から見るソテツの庭(左)     土蔵の扉も見事です。(右)

葛と薬種で栄えた「かぎろい」のたつ町




「元祖吉野葛大葛屋」の看板を掲げた森野旧薬園「吉野葛本舗」は森野吉野葛本舗11代目藤助が幕府の命で各地から集めた薬草を裏山に植えたところ。今も園内には250種の薬草が植えられています。(文化財史跡)赤い暖簾のところが入口で300円を払い、順路に従って進みます。


最初は細い石段が続く山道ですが、だんだんと薬草が植えられた広い畑が現れてきます。名前や効能などが記された札も添えられています。普段よく目にする花も薬草なんですね。

  
                シュウメイギク                      サフラン
  
                   サラシナショウマ               リンドウ

薬園のある山の麓にある吉野葛のさらし工場です。今は巨大な水槽には何も入っていませんが、12月から3月に葛根が採掘され寒ざらしという製造方法で、雑菌が発生しにくい冬季に年間の生産を終えてしまうそうです。


森野旧薬園の中腹から見る大宇陀



 
葛の老舗・黒川本家(右)

宇陀松山は宇陀山地に位置し、古城山の西側と宇陀川の間に南北に細長く展開しています。城下町から商家町として発展した町並みには前川と呼ばれる水路が走り、せせらぎの音とともに独特な景観を作り出しています。地区内の伝統的景観を構成する要素として、町屋・洋館・社寺建築・土蔵・石碑・門・塀などがあり、これらが広範囲にわたって分布しています。(パンフより)


人通りの少ない町並み家の前には前川と呼ばれる水路が流れる。
格子・虫籠窓・うだつ、犬矢来を随所に見ることができます。
 
山辺家住宅は江戸中期の建物(右)


奈良漬の「いせ弥」と、大宇陀銘菓「きみごろも」の松月堂の看板はユニーク





江戸中期に建てられた旧細川家住宅。唐破風付きの「天寿丸」の看板が目を引く松山地区のシンボルで、現在「薬の館」として町が管理し公開しています。蔵には薬問屋だった頃のゆかりの品々が並んでいます。藤沢薬品の初代?社長のお母さんの実家だと聞きました。

 
意匠を凝らした薬の琺瑯看板がずらり。

 
台所もそのまま残されています。曲線を描いた黒光りのかまど

格子戸

薬の館前の町並み

 
橋のたもとに立つ松山西口席門。江戸初期に整備された松山城唯一の遺構で黒門と呼ばれています。(右)


道路脇で見た竹林と柿の木。なぜか美しいと思いました。

町並み散策を終えて、阿騎野人麻呂公園とかぎろひの丘万葉公園に向かいます。
時間も残り少なくなり、少々あせっています。


コスモスを見ると、なぜかほっとしますね。


ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかえりみすれば月かたぶきぬ
(柿本人麻呂)
毎年、旧暦の11月17日にこの大宇陀町では「かぎろひを観る会」が開催されています。というのは、有名な歌「ひがしの野に かぎろひの立つみえて かえりみすれば 月かたぶきぬ」という柿本人麻呂の歌が読まれた日なのです。この「かぎろひ」は色々な説があるようですが、厳冬のよく晴れた日の日の出1時間ほど前に見られる最初の陽光と考えられています。全国的にも知られていて遠くの方からバスでやってくる人もいるようです。この日は葛湯、芋汁がサービスされます。気象条件が整ってないと観れないので、実際この旧暦の11月17日にほとんど見えないそうです。このあと近くの温泉がこの日だけ朝6時営業で、しかもかぎろひを見に来た人は3割引きだそうです。冷え切った体で露天風呂に入るのは最高だそうです。

阿騎野人麻呂公園の柿本人麻呂像とかぎろひの丘万葉公園(右上)
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