英語表現I。この科目については、新カリで導入される前に教科書の見本を見た時以来、ほとんど魅力を感じない科目だったのですが(実際、英語表現をやめようという提案までしたくらいで)、今年度、同僚が思い切って新しいプランを提案してくれたおかげで、ついに教科書を捨ててしまいました。

大雑把な授業の流れは以下の通り。

  1. あるトピックについて教員が英文を読み上げる
  2. 教員が自分のことについて語る体裁になっていますが、この科目は5人で担当しており試験の時に教科担任による差異がでないように、統一した素材を使っています。

  3. 生徒は話を聞きながらメモを取り、メモを見ながらペアで内容を伝えあう。
  4. 教員が読み上げるのは2回。ペア・ワークは1分間の制限時間を設け、相手を替えながら3回行っています。生徒は聞き取れない部分もあるのですが、ペア・ワークで相手の話を聞くことで、聞き取れなかった情報を補充したり訂正したりしているようです。

    その際、聞いている生徒は相手の発話数をカウントしています。当然、繰り返す毎に発話数が増えていくので、話している生徒にとっては励みになり、聞いている方も発話数のカウントをしなければならないため聞き流すことはできず真剣に聞いているようです。

    ペア・ワークで一方が話し終わるたびに、どう言えば良かったのか、どうしたらもっと良くなるのかという話し合いをさせています。話す活動でのフィードバックはずっと課題だったのですが、とりあえずフィードバックの機会を設けてみたというところです。英語の苦手な生徒が多いので、どれだけ機能するか心配だったのですが、思ったより活発に意見交換ができているようです(内容はともかく)。

    さらに、ALTや僕自身もペア・ワークに加わり、フィードバックをする機会を増やしています。

  5. 話した内容を書く
  6. 話した内容=教員が読み上げた内容を、できるだけ正確な英語で書きます。もちろん、読み上げられた英文を覚えていることはできないので、自分で英文を組み立てていかなければなりません。

    ここまでで前半終了なのですが、文字情報による入力がないまま個人で出力が求められるので、1年生にとってはハードルの高い活動だと思われます。個人的には、この部分をdictoglossにして、モデルの英文をしっかりと取り込む方向に持って行ってもいいかと考えています(実際、やってることはdictoglossと共通する部分が多いですし)。

  7. 自分のことについて話す
  8. ここから後半。同じトピックについて、生徒が自分のこと(トピックによっては自分の考え)について話します。マッピングをさせ、リハーサルの時間をとってから、ペアで相手に自分のことを話します。2と同様に、相手を替えながら3回。発話数のカウントも、ピア・フィードバックも同様です。

  9. 自分のことについて書く
  10. ペアワークで話した内容を80語程度で書きます。ちょっとしたエッセイ・ライティングです。段落のまとまりとつながりを意識させています。

    生徒の書いたものは回収して、ルーブリックに基いて評価します。ルーブリックについては、これからさらに洗練させていかなければならないところです。

    時間に余裕がある時には、4人のグループで作文をローテーションしながら、それぞれのラウンド毎に観点を決めて、ピア・フィードバックをすることもあります。で、自分の書いたものが手元に戻ってきたら、第二稿を書くといった流れ。

  11. サンプルの誤りを直す
  12. 生徒の書いたものをちょっと改変したものを配布し、グループで誤りを修正します。「この文章をさらに良くするためにみんなで添削しよう」という言い方をしています。

    文法的な誤りはもちろん、つながりとまとまりに関する指摘も少なからずあります。これは理由として適切ではないとか、話が逸れてるとか、そんな指摘も容赦なく出てきます。自分が書くときにも意識してくれるといいのですが。

    ひとつのグループに修正した英文を板書してもらって、全体鑑賞しています。拾いきれなかった誤りを指摘したり、他の直し方を提示したり。

    これまで、こういう活動はあまりやったことがなかったのですが、実際にやってみるとかなり効果的なのではないかと思うようになりました。

  13. トピックについて会話する
  14. 自分の書いた内容をベースにペアで会話をします。

    それに先立って、そのトピックについて会話する時に想定される質問を考える時間をとっています。想定問答の質問を部分を空欄にしたプリントを使い、他に使えそうな質問をグループで共有したりしています。

    会話は4人のグループで行い、主に質問する人、主に答える人、ふたりの発話数をカウントする人、ルーブリックに基いて評価する人と分担し、1分毎にローテーションする形。

    この活動は生徒間で相互評価をする形になりますが、一定程度の割合で評価に組み込んでいます。

以上が大雑把な授業の流れです。定期考査も授業での活動に基いて、質問を書く、誤りを修正する、80語程度のまとまった英文を書くなどが出題されます。

基本的な授業の流れについては、提案してくれた同僚が作ってくれたものです。感謝。教科書を使うよりもずっと生徒の伸びが期待できるんじゃないかと思います(この活動と単純に結びつける実証的なデータはないのですが、外部の試験でも例年よりは高い結果がでています)。

冒頭の、教員が読み上げる英文については、その同僚がALTに手伝ってもらいながら自作しているものを使っています。これがなかなかの手間だろうと思います。僕としては、この活動を次年度以降の1年生でも続けてほしいと密かに思っているわけですが、素材が自作となれば次年度以降に引き継がれないのではないかという危惧を持っています。だから、この活動に使えそうな教材がないかと探しているところです。

生徒が話したり書いたりする際のモデルになるものなので、それなりのクオリティの英文でなければなりません。100語から200語程度の文章で、生徒がリアクションしやすいトピックであること、自分で読み上げること好まない教員もいるだろうから音声CDがついていることが望ましいですね。

そんな基準でいろいろと探してみましたが、今のところ適切なものが見つかっていません。難し過ぎたり、高校生には不適切だったり(場面設定と内容の両面で)。次年度以降の1年生でもこの活動を続けていくというコンセンサスが得られるのなら、英文を書き下ろしてALTに録音してもらうという手も考えられるのですが……。

(2017/02/12)