4、潮位

海面の高さは、主に月と太陽の引力によって、普通1日に2回の干満を繰り返す。台風などで異常に潮位が高くなればそれは高潮だが、それら以外の潮位の変化はあるだろうか。

海水の熱膨張による変化

海水温は、水の比熱が大きいために気温の変化より約1ヶ月遅れて変化し、大島付近の表面海水温は9月中旬に25℃程度、2月中旬に15℃程度となる(下図)。 

 
波浮の月別水温
東京都島しょ農林水産総合センター大島事業所、2000年4月から2011年3月まで11年間の観測データを使用


これに伴う海水の熱膨張のため験潮所のある岡田港の潮位を見ると、2月より9月の平均潮位が17cmほど高い(下図)。またこれは、この頃が台風シーズンであることもあり高潮の危険が増すことにも関係している。
 さらに、地球温暖化による海面上昇が懸念されているが、海面上昇の原因として海水の熱膨張が最も大きく影響する、とされている。詳しくは、気象庁HP海面水位の変動要因をご覧下さい。
 
 岡田験潮所の月別平均潮位
2008年から2012年までの5年間の平均


コリオリの力と海流


    海原遠く廻り来て 轟き寄する黒潮の
                       (大島高校校歌より)

大島に黒潮の本流が轟き寄せるほど近づくことは実はほとんど無いけれど、黒潮は幅100q、厚さ1000m、表面の流速は速いところで4ノットを越える地球上最大の水の流れである。4ノットは2m/sだから競泳の世界記録保持者でも泳ぎ切ることは難しい。
 このような地球規模の流れでは、水は高い方から低い方へ流れる、という常識は通用しない。北半球では、海流は海面の高い方を右に見て等高線(海面の高さの等しいところを結んだ線)に平行に流れる。
 少し考えにくいかもしれないが、高低差があるから流れが発生するのではなく、流れがあるとその結果として右側の海面の方が左側より高くなる、ともいえる。実際、黒潮は赤道北側の熱帯域で吹く北東貿易風によって吹き流されて発生し、北太平洋を右回りに回転する壮大な渦の一部なわけで、水位の差があるために流れが発生しているわけではない。
 このような流れになるのは、地球が自転しているために流れに対して右向きにはたらく力(コリオリの力)と、圧力差による力が釣り合っているためで、このような流れを地衡流という。

 
2009年8月27日 2009年10月20日
東京都島しょ農林水産総合センター 海の天気図 

八丈島の潮位に注目してみよう。
 伊豆諸島付近を流れる黒潮は、紀伊半島沖から伊豆諸島の間で蛇行することが多く、八丈島の南を通過したり、北を通過したりする。黒潮の右側(南側)の方が左側(北側)より水位が高いのだから、八丈島では、黒潮が島の北側を通るか南側を通るかで潮位が変化することになる。一例を示すと、2009年8月27日には黒潮は八丈島の南を流れていたが、2ヶ月後の10月20日には島に北側に流路を変えていた(上図)。
 その時の八丈島の天文潮からの偏差は、−60cmと+25cm、その差は85cmもあって、これは日々の潮の干満に匹敵する(下図)。大島や本州沿岸では通常このように大きく潮位が変化することはないが、まれに黒潮の分流が相模湾に流入すると異常潮位(高潮)や急潮を発生させて話題になることもある。

天文潮位より
60cmあまり低い
   天文潮位より
25cmほど高い
 海上保安庁八丈島験潮所(神湊)の潮位偏差    海上保安庁HPより

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