沖 縄
沖縄(しま)敗れ終の住処を追われ来て海に死すべし兵隊蟹は
その海が青さ増すほど流血がありて遥かな摩文仁海岸
ひとしきり鳴かぬか敗戦記念日の沖縄に舞う無数のホタル
さとうきび焚けば銃声のごと撥ねて地底に眠る魂呼び起す
人の血に生(あ)れしデイゴの花の赤胸に挿しゆく故郷オキナワ
旧盆に還る御霊か油蝉ひと声残し空に消えゆく
戦いの傷癒す間を待たずして熱波を被る月は錆色
色を愛で薮の蛍が乱舞するかつて戦場と化した沖縄
熱風にガジュマロの老木さらされて梢は青き空につき立つ
落葉はサンゴの海に飲み込まれ母生れし地よ琉球国は
平成15年度 第24回「全日本短歌大会」文部科学大臣奨励賞
平成16年度 第25回「全日本短歌大会」日本歌人クラブ賞
著書:エッセイ集「一等賞の旗」里文出版
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第25回「全日本短歌大会」日本歌人クラブ賞入賞作品
踏むほどに重たき麻痺の足擦れて絹引くごとく浜の砂鳴く
天国に通じるという蜘蛛の糸。そして素早くのぼる足欲し