飯を食ひ
愚かなる「釣バカ日誌」を見に行けりボトルのお茶と煎餅を
持ちて
白髪で眼鏡の男だんだんにわれに似てくる話となりぬ
鎌切はまともな顔をしているが木の葉のやうにときどき揺れる
汚れたる男に似たる自転車は家の玄関で眠ること多し
飯を食ひ寝てまた起きて飯を食ひいつものやうに十月が来る
短歌結社「白夜」主宰
日本歌人クラブ甲信越幹事代表
化石館
雪が降るやうに小雨が降るやうに歌を作りて姿勢を正す
コンビニの弁当を買ひてお茶を買ひ風に吹かれてこれにて終わり
言葉尻とられて帰る帰り道石の階段数へていたり
化石館どいつもこいつも欠けている化石並びて昼下がりなり
ブコフスキーの「老人日記」を語りつつゴクゴクと飲む水の
うまさよ
著書「雲と迷宮」不識書院
(表紙帯封より)
ナンセンスポエムの王者の風格を具えた歌びと、それが著者疋田さんである。さばさばとした切れ口のいい詠み口調の中から、瞬時的に漂いだす醒めた上質の諧謔。これは短詩型の世界で、まさしく作者独自のものである。
以下の短歌は「白夜」同人(強引に同人にして頂いた経緯を持つ)伊藤鉄郎が疋田師の承諾を得て、信州潮音「白夜」月刊集より任意且つにアトランダムに選択したものである。