間接アプローチと直接アプローチ "direct approach"

WFの良いところは、原型を製作した人と直に話せることだ。この日、何人かの原型師と話をする機会を得た。

海洋堂の谷明氏。とても人の良さそうな、「工作好きのお兄さん」という印象を受けた。

バサロキック氏。何度かメールをやりとりしたことがあったので、おおよその人柄について知っていたつもりだが、その予想通り、とても気さくな方。造形や仕事に対するこだわり、スタンスに関する話がとても興味深い。

Works札幌の前田智樹氏。実はまだ、前田氏が原型を製作したフィギュアを作ったことはなく、しかし評判は聞いていたので、近いうちに何か作ってみたいと思っていた。WFで「惣流・アスカ・ラングレー」のワンピース・バージョンを販売されることを知り、購入。自分のブースに戻り、しげしげとキットを眺めていると、気になるところがあったんですね。

「欧米人の血が入っているアスカちゃんなら、もっと鎖骨が平行のほうがらしいし、スリップドレスが似合うハズ」

と。断っておくが、元のキットが悪いというわけではない。非常に出来が良い。それだけに些事にこだわってしまいたくなるのだ。こだわってしまうから、つい言葉になって口を突いてしまう。近くに原型師がいるから、直接話しに行ってしまう……。

モノを創っている者は、受け手の反応をすごく気にするものだ。以前、広告業界で仕事をしていた時はそうだった。自分が手がけた広告で商品や店の売上げが伸びれば、自分が評価されたような気がした。それ以上に嬉しかったのは、クライアントや消費者が具体的な評価を下してくれた時だ。自分の作品を吟味してくれていなければ「ココがこんなふうに良い」「ココはこれだからダメだ」などとはいってくれない。自分がそうだったから、モノを創っている人に対しては、できるだけ意見を述べるようにしている。(といっても、客観的に分析した上で批評を行う、などという高尚なことができる筈もなく、主観的かつフェティッシュに、背中や鎖骨、膝の裏がどーしたとか。)

消費者の義務、とまではいわない。だが、権利である。気に入らない商品を買わない権利があるのと同様、気に入って購入した(できれば完成させた)商品に対して意見を述べる権利もある筈なのだ。

あえて敵主力との戦いを避けて脆弱な地点を攻撃することを「間接アプローチ」というそうだが、WFという戦場では、敵(!)主力に直接ぶつかる直接アプローチという作戦が有効ではないかと感じた。

その、直接アプローチによる戦果を確認できたのが、三十郎工房、藤三十郎さんの手になる「ジョン・シルバー」であった。以前、ホームページに掲載されている写真を見て「ぜひ胸毛を」とリクエストしたところ、WFで展示されていたシルバーには、胸毛はおろか手の甲、指にも体毛が!

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