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お墓がない!

岩下志麻 主演 原隆仁 監督作品。
映画界の大女優・桜咲節子。役作りのため訪れた病院で受診を勧められ、医師から結果を伝えられる際、妙に勘繰った節子は、自分が余命半年だと思い込む。
撮影がお盆休みでお休みとなった事で、節子は身寄りのない自分が入る墓を用意していない事に思い至り困惑。変装して墓を探す事にする。
しかし、墓守がいないのではとお寺に断られてしまい、その翌日、節子は仕事をドタキャン、無断欠勤し、聖香メモリアルの主催する霊園分譲説明ツアーに参加した。

結末 ネタバレ注意

ツアーのガイドである聖香メモリアルの課長は節子の連発する墓への疑問が他の客達にも困惑を与え、妨害となる事にイライラ。だがその下に付く若手社員の川島は、節子の意見にもっともだと胸打たれ、一人協力する。
節子と川島は日本各地を回る事にして、節子は撮影をまたサボる。そしてスターのお墓、前方後円墳まで参考にした。
夜、節子はマネージャーと川田に捕まり、自分がガンであること、そして孤児院出身で身寄りがない事を打ち明ける。そして節子は川島に、専用の携帯電話を渡した。
節子は川島家に招待され、川島の家族にもてなしを受け、川島に葬儀の事も頼む。
川島は葬儀の勉強をする内、実際の現場を見るべきだと、節子と病院へ行き、その実、病院側の営利主義に抵抗してしまい、煙たがられる。
撮影の方に戻り、これが最後という節子の熱意に感化された共演者の一風も本腰を入れる。
墓地巡りの旅の途中、貧血で倒れてしまった節子。そこで変装用のかつらが外れてしまい、川島に正体がバレてしまう。
変装をやめて探し直し、課長も手の平を返して尽力。だが節子はお寺の尊大な態度に反発し、帰る。
しかし、トンネルで節子は閉所恐怖症を告白。川島はお墓も狭いと告げた。
独特のしきたりなど身に染みた節子はお墓探しを諦める。
だが撮影現場で葬儀のシーンのリアリティの無さに、脚本の書き直しを要求。さすがに監督に怒られる。節子は一風と会話し、反省。だが倒れ、病院に運ばれる。
映画は中止になりかかるが、節子は目覚め、続行を希望。監督は節子に新しい台本を求め、節子はマネージャーと台本を書き、ベッドに倒れた。
遺体はカークーラーで冷やされ、大工の作った棺に納められた、という展開で撮影され、節子は元気になっていた。
ラストシーンを取り終え、拍手を浴びる節子。見学に来ていた川島と目を合わせると、川島は去っていった。
マネージャーは医者から節子の勘違いを知り、奇跡的に治った事にするが、節子は自力で治したと考えていた。
そして、お墓見学ツアーをしていた川島の元に節子が現れ、節子は礼を述べた。
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管理人の批評

1998年、日本の作品です。
共演:高橋ひとみ 袴田吉彦 安達祐実 石橋蓮司 橋爪功 村野武範 柴田理恵 高松英郎 金田明夫 秋野太作
想像や理想と現実・実態の差異を描くコメディータッチのドラマです。医師の診断を勘違いするというのはすっかりベタなパターンの一つとなってしまいました。
映画界の大スター、銀幕スターというのは、昔の日本では映画館が娯楽の王様だったため、その映画館に客を集められるスターの事を銀幕スターとしてもてはやしました。
当時の映画館は消防法などの規制も無く、立ち見やドアを開けての観覧もあり、入れ替えも無かったため、人が溢れました。その様子を見て、人気のバロメーターとして測ったり、嫌になって抜け出したスターが撮影所に戻るということもありました。
大スターは取り巻きが多いというイメージがありますが、それは撮影所の中だけで、みなさん仕事として、メイクや衣装や打ち合わせなどでくっついているのです。仕事が終われば一人で自家用車に乗って帰るのが当たり前。ですから一人で行動するのはなにもおかしくない普通の事なのです。
孤児院出身というのも、物語の中ではベタな設定ですね。「古畑任三郎vsSMAP」のSMAPもそうですが、現実にはそういう方はあまりいらっしゃいません。おそらく江戸時代の見世物小屋などに端を発しているのでしょう。江戸時代は火事や飢饉で、親を亡くしたり、親に売られたりといったことがあったので、この設定を思いつく方がいたのでしょう。
現在はというと、法律の方も厳しいですから、身元引受人のこともありますし、未成年でそういう方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか?やはり両親を失っても、祖父母がいたり親戚がいたり、早々血縁が途切れることはない、平和な時代なのではないでしょうか?
墓、葬儀、宗教をめぐる問題は、この映画公開からかなり経った今も我々を悩ませています。
そもそもほとんどのお墓は宗教法人というお寺の管轄なので、お寺のいう事を聞かねばならないのが実態です。故に関する費用や、葬儀代金など、高額に感じる請求が突きつけられますが、我々はうなずくしかありません。
経験不足もありますが、喪主は配偶者や継子が行う場合がほとんどですので、多くても3〜5回といったところで、自信は持てそうにありません。
ですがその一方で、我々も毎年葬儀を行う訳ではないし、お寺にとっても数少ない収入源である事を忘れてはなりません。霊園を持てない僧侶は、安売りをして、権力のある僧侶から叱責を受ける事もありますから。
現実問題、撮影にリアルさを持ち込む必要は、よっぽどの要求がなければありません。教則ビデオを作っているわけではないんです。作品が訴える大切なメッセージはそこではないので、メッセージに不要な部分はカットされるのが当たり前です。
この作品を見て一番面白く思える層は、家族に終活を始めようとされる方がいるご家庭の方でしょうね。