声の主演 野々村真 石田ゆり子 高畑勲監督作品。
人間達に里が開発され、多摩丘陵のタヌキ達は縄張り争いの末、戦争に発展。激しい衝突に調子っぱずれの唄を太鼓を叩きながら乱入した火の玉おろくの仲裁で、山が無くなり、戦争をしている場合ではないと気づき、タヌキ達は一致団結し、鶴亀和尚を筆頭に化け学復興と人間研究を基礎に、運動をスタート。テレビを拾ってきて設置し、変化の練習を始めた。
やがて人間にも化けられるようになり、街へ出て平和的に1000円を稼げるまでに。
ごん太は故郷の開発を危惧し、決起を呼び掛け、若手10名で工事を妨害。タヌキ達は勝利に浮かれる。だが開発が中止になることはなく、ごん太は踏まれ、全治1年のケガを負う。
タヌキ達は神仏に化け、祟りを装い人間を脅かし、だがごん太は生ぬるいやり方だと激怒。そして開発は進み、タヌキ達の変化は怪現象として全国的な話題になる。
じゃんけん大会を行い、四国の里へと化け学の先生を探す旅人を決め、出発を見送る。だが多摩丘陵のタヌキ達は、人間達を驚かすのが楽しくなってしまった。
悩む正吉は、おきよと「双子の星作戦」を決行。工夫達を脅かし、追い出すものの、次の工夫はまたすぐにやって来てしまうのだった。
そして人間達はタヌキやキツネの仕業を疑い始め、退治や駆除を考え始めた。
秋が来て、タヌキ達が冬支度を始めた頃、トラックの積み荷に紛れて一匹のタヌキが現れ、倒れていたのを正吉に保護される。そのタヌキは林と名乗り、神奈川から、開発残土の出所を突き止めるためトラックに乗り込んだという。正吉達は山を切り崩して、別の山を汚している人間のやることに驚いた。
冬が来て、タヌキ達は脅かしを休み、変化もせずにショベルカーを落とすところを見られるが、その人は信じてもらえず、騒ぎにはならなかった。
春が来て、正吉とおきよの間には4匹の子供が生まれた。一方、阿波へ辿り着いた玉三郎は、六代目金長に会うが、疲れて倒れ、金長の娘・小春に介抱され、子を儲けるほどの仲になった。一方、佐渡へ渡った文太は先生に会うことができずにいた。
タヌキ達は食糧を求め、街に降り、ゴミを漁ったり、人家に出没し、車との衝突や、罠に捕まり、死者が続出。正吉は対策を講じ、回復したごん太もクーデターを起こすが、地方の長老達を待つことに決める。
そして玉三郎が奇抜な出で立ちの3長老を連れ帰還。その夜、集会が開かれ、妖怪大作戦を発令し、特訓を行った結果、発動する。
人間達は楽しみ、だが驚き、そしてこれからというその時、犬神が力尽き亡くなってしまう。
翌日、タヌキ達は自分達の勝利を確信するが、多摩ワンダーランドの社長が手柄を横取り。タヌキ達は怒り狂う。その一方、社長はパレードの首謀者捜しを入ってきた竜太郎に任せる。
騒ぎが沈静化した頃、竜太郎は金長を招き、自分達キツネが滅び、人間社会で暮らしている事を伝え、ワンダーランドへの就職を提案する。だがそれは、変化できない並のタヌキ達を切り捨てねばならなかった。
金長は話を持ち帰り、正吉は第二次作戦決行を、ごん太は開戦を、鶴亀和尚は公表を提案し、まとまらず散会。
タヌキ達がバラバラになってしまい、金長は玉三郎とワンダーランドの社長に復讐し、逃走資金を強奪。
一方、ごん太達は森林開発業者を襲い、対峙する。機動隊の導入におろく達は諦める中、正吉達は向かい、ごん太の玉砕を見届けた。
一方、別の林で、鶴亀和尚はテレビの取材に応じ、おろくと山の存続を訴えた。
だがハゲダヌキは並のタヌキ達を連れ、玉袋の宝船で、死出の旅へ。ごん太達の霊も敗れ、やっと帰還した文太は佐渡の先生の死を伝えるが、さらに変わり果てた里に驚き、嘆く。見かねた正吉の提案で、気晴らしにと、昔の景色へと戻す。なつかしき光景が次々と蘇り、思わずぽん吉は飛び出すが、開発された里に戻ってしまった。
ニュータウンは寺へも迫り、タヌキとの共生を謳った森林公園は狭く、ある者は町田へと移り、人間として暮らし始め、ストレスを抱え、他のタヌキ達もそれなりに生きて、それなりに死に、サラリーマンとして生きる正吉はタヌキを見かけ、空き地で宴をするぽん吉達を見つけ、走って輪に加わった。
1994年、日本・スタジオジブリの作品です。
共演:泉谷しげる 三木のり平 林家こぶ平(現・正蔵) 神谷明 村田雄浩 古今亭志ん朝 福澤朗 阿川佐和子 桂文枝(五代)
キャッチコピー:「タヌキだって、がんばっているんだよ」
主題歌:「いつでもだれかが」
この作品は、スタジオジブリのもう一人の監督、高畑勲氏の作品です。巨匠・宮崎駿監督の陰に隠れてしまいがちですが、『ホーホケキョ となりの山田くん』などの名作の監督を務めています。
野々村真さんは、元・初代いいとも青年隊(フジテレビのお昼の超人気長寿バラエティー番組「笑っていいとも!」のアシスタント)出身で、TBS「世界ふしぎ発見!」のレギュラー回答者としておなじみです。彼の特筆すべき点は、華があり、愛されキャラだということに尽きます。一度、「世界ふしぎ発見!」のリニューアルに伴い、番組を降板することになったのですが、視聴者からのラブコールがプロデューサーに伝わり、復帰しました。元々、いいとも青年隊も、それまで野々村さんが所属していた劇男一世風靡のメンバー達が、先にオーディションで番組が求める人材とは真逆の出で立ちをことごとく次から次へと見せ、審査員がうんざりしたところに登場し、合格したという逸話を持つ人物です。
石田ゆり子さんは、40代を越えた今でも、独身ということを差し引いても劣らない美しさで、根強いファンからの支持を得ています。
泉谷しげるさんは、フォークシンガーで、いわゆるキレキャラとして人気ですが、素顔は優しく、礼儀正しい方で、気弱さや恥ずかしさを隠すために、あえてそういったキャラクターの仮面を被っていると明かしています。
林家こぶ平さんは、現在は祖父の名跡である正蔵を受け継ぎ、落語家として人情噺が好評を得るなどの一方、役者としても山田洋二監督の『東京家族』『家族はつらいよ』などに出演しています。こぶ平時代はテレビバラエティーでいじられキャラとして活躍し、落語に打ち込んでからはテレビ出演は少なくなりましたが、セレブリティの雰囲気を漂わせる、グルメの顔も持っています。
キツネの竜太郎役を演じた福澤朗氏は日本テレビ放送網(NTV)の名物アナウンサーであり、3代目ズームインキャスター、アナウンス部部長を務め、フリーに転身されました。バラエティーにも出演し、企画にも果敢に挑戦し、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(通称生ダラ)の企画で闘牛に挑戦し、牛の突進を受ける姿はお宝映像として今も度々放送されます。
この作品は、森林開発による自然破壊と、その被害を受ける動物達の事を描いたものですが、今(2018年現在)のテレビバラエティの世界にも見えてきます。次々と純正なお笑いバラエティが消えていく中で、リポーターや批評家、専業司会者やプロデューサーなど別のタレントとして生きていける芸人さんはそのままテレビにも残りますが、そういった事をやらない、できないとなった芸人さん達は徐々に姿を消し、最後の意地とばかりに最終回スペシャルを作っては、消えて行ってしまう。その見事な一致に涙しつつも、栄枯盛衰を見事に描いたこの作品に新たな感動を感じざるを得ません。
この作品は子供でも、大人になっても、また家族でもご覧になっていただきたい作品です。