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男はつらいよ 私の寅さん(12)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
飢えに苦しむ柴又村で、金持ちにいびられるさくらを助けに来たのは、兄であり、国賊とされる寅。寅は金持ちを始末し、喜ぶ村人達を決起させた。
そんな夢から目覚めた寅次郎は、乗船している船が出発しそうになり慌てて降りるが、靴を間違えた。
寅次郎が柴又へ向かう頃、さくらがデパートで大量の買い物をして帰ってくる。それは叔父夫婦とさくら一家とで旅行へ行くためだった。
だが、叔父が帝釈天で引いたおみくじは凶。心配の種である寅次郎の処遇を巡って、たこ社長とケンカをしていると、寅次郎が帰宅。さくら達は旅行に出てしまうのを隠そうとするが、御前様が旅行の御守りを渡しに来て切り出され、寅次郎は、旅行が飛行機で九州に3泊4日の日程と知り、ショックを受ける。
厄介者扱いされて怒る寅次郎だったが、さくらから孝行と諭され、引き下がる。
翌朝、寅次郎の朝食の用意をして、さくら達は九州へ。寅次郎を気にしながら、猿山を見物。その夜、宿から寅次郎へ電話。酔っぱらっていた寅次郎は、電話にほっとする。
翌日、寅次郎はさくら達からの電話を待つが、九州からの電話は長距離料金で2800円と高く、遅い電話に怒りをぶつけ、代わった叔父と口論。
そして叔父に「出てけ」と言われ、いつものように出て行こうとするが、さくらもいない事を忘れており、自室へと戻る。
4日目、寅次郎は源公、たこ社長と迎え仕度を整えるものの、いざ帰ってくると照れくさくなってしまった。みんなの温かい笑顔に寅次郎は改心した。

結末 ネタバレ注意

さくらが満男と土手を歩いていると、土手に寝ていた男が起き上がり、2人を追いかける。
とらやに逃げ込み、追ってきた男を寅次郎が捕まえると、男は自分を「でべそ」と名乗り、寅次郎の同級生だった柳文彦だと判明した。
2人は呑み、文彦は医者の父が慈善的過ぎて潰れ、自分はテレビの脚本家をしていると説明し、呑み直そうと今は妹の家である実家へ。
恩師の話をしていて寅次郎はうっかり、妹さんの描きかけの絵を汚してしまい、なんとか消そうとしているところを妹さんに見つかり、謝るものの、怒りの収まらない妹りつ子と寅次郎はケンカし、帰る。
不機嫌が収まらない寅次郎は、食事も摂らずに寝てしまうのだった。
翌日、寅次郎はりつ子がやってくると聞き、腹を立てる。だが会うなり、りつ子は素直に自分の非を謝り、寅次郎は快く迎え入れる。
りつ子もまた、さくらのように兄の事を心配していた。
ある日、とらやに一条という男がりつ子の知り合いだと待ち合わせに現れ、そこにりつ子がやって来て、画商と紹介される。
帰ってきた寅次郎はショックで旅仕度を整える。だが見送りして戻ったりつ子から一条の悪口を聞き、機嫌を良くした。
りつ子と芸術論を交わした寅次郎は、絵を見てもらいにさくらと満男とりつ子の家へ。楽しい時間を過ごす。
りつ子は師である画伯を訪ね、芸術一本で身を立てることの難しさを痛感した。
文彦から、りつ子が体調を崩したと聞き、寅次郎は見舞いへ。するとりつ子は思いを寄せていた三田が金持ちと結婚してしまい失恋したと打ち明け、とらやへ戻った寅次郎は帰るなり寝込み、博は恋の病と判じた。
今度はりつ子が見舞いに訪れ、りつ子は寅次郎の自分への恋心に気付いてしまう。
寅次郎は自分を慰めに来た文彦を追い返し、りつ子を訪ねるが、りつ子は友達でいたいと告げた。
帰ってきた寅次郎を心配し、おじ達はさくらを呼ぶ。そして旅に出る寅次郎は、りつ子の世話をたまに見て欲しいと頼んで、出て行った。
正月を迎え、正装の源公は満男にお年玉を。りつ子は、スペインからとらやへ手紙を送っていた。
その頃、寅次郎は虎の絵を売っていたが、側には、りつ子が描いてくれた寅次郎の肖像画が飾られていた。
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管理人の批評

1973(昭和48)年、日本松竹の作品です。
共演:岸惠子 前田武彦 津川雅彦
長距離電話と聞いてピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。昔は距離に応じて電話料金が従量課金されるというシステムでした。それがいつの間にか一律になり、安くなり、技術の進歩とは凄まじいものです。
マドンナの兄役を演じた前田武彦氏と言えば、「巨泉・前武ゲバゲバ90分」などでお馴染みの人気司会者ですが元々はテレビの放送作家です。ただ放送作家と言ってしまうと、ピンとこない方が多くなり、説明する余計なセリフが増えてしまうので、ここでは脚本家にしたのでしょう。
ちなみに放送作家とは、テレビバラエティーなどの台本書きですが、番組造りにおいて、アイデアを出したり、知恵を出したりと、プロデューサーたちの良き片腕であると言えます。
特に、テレビ草創期は大橋巨泉、永六輔、青島幸男など今でも名前を聞くような人たちが放送作家として誕生した黄金期です。その中の1人が前田武彦氏であり、前田武彦氏の万能さに脱帽してしまいます。
驚くべきはあの津川雅彦氏がほんの1シーンのみの出演という事です。津川氏と言えばかなり人気の高い俳優ではあります。貴重であり、あまりにもったいないような気もしますが、素人考えでは、あの芝居は男はつらいよには合わないかもしれません。
今回はなんと幼なじみの妹にして芸術家。芸術を愛する人との恋愛は、フーテンには近くて遠いものだったのかもしれません。