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男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(13)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
嫁を連れ帰った寅次郎。だが叔父夫婦は死んでおり、寅次郎は墓前で泣き崩れる。
そんな夢から覚めた電車の中の寅次郎は、柴又を乗り過ごしてしまった。
一方とらやでは昼寝をしていた叔父が、寅次郎が嫁を連れて帰ってくる夢を見たと言い、さくらと寅次郎の父が死の間際に夢枕に立った事から信憑性は高いと喋っていると、寅次郎が帰宅。
寅次郎は島根で、絹代という女性との出逢いを、干物と一緒に土産話として語り、夜に重大発表をすると告げ、皆は寅次郎が結婚宣言すると想像する。
その晩、絹代との話を皆が聞き出そうとすると、寅次郎は曖昧に答えてばかり。突き詰めるとただの岡惚れである事がわかった。皆呆れ、男達はケンカになった。
結局、さくらと大阪に用のあったたこ社長を連れ、絹代に会いに。
すると仕事場から出てきた絹代は寅次郎に駆け寄り、蒸発していた夫が帰ってきた事を告げた。
その夜、寅次郎は社長とやけ酒。そして置手紙を残し、旅立った。
さくら達も駅のホームで吹奏楽を背に帰った。

結末 ネタバレ注意

旅先の食堂で寅次郎は偶然、芸術家と結婚したはずの歌子と再会する。
聞けば、歌子の夫は昨秋病気で亡くなったという。夫が入院を嫌がったため、夫の兄に来てもらい、故郷のこの町へ連れ帰り、最期を過ごしたのだが、歌子自身は東京へ帰りづらくなっていた。
旅を続けるよう勧められた寅次郎は、とらやを訪ねるよう言ってバスへ。
10日後、寅次郎はとらやへ帰宅。歌子を残し別れた事を後悔していた。
その夜、皆で寅次郎の恋やつれを心配していると、怒った寅次郎は出て行こうとする。
すると、歌子から電話が入り、柴又に着いたという知らせに、歓迎に慌てる。
ほっとして眠くなった寅次郎の横で、歌子は図書館を辞め、東京に仕事を見つけに、向こうの家とケンカ別れしてやって来た事を告げるが、歌子の笑顔に安心する寅次郎。歌子の父は夫の葬式を仕事を理由に欠席。以来、会わずにいるという。
翌日、寅次郎は歌子と川へ。さくらは歌子の父を訪ね、彼女の近況を報告。
歌子は職探しや、旧友と再会する時間を得る。
帰宅した寅次郎は、夕飯がハンバーグと聞いてケチをつける。だが歌子が作ったものと知って上機嫌。
夕食でケーキを囲みながら、2人の旧友はナイトクラブで働いたり、重役の妻になったりと話し、愛や幸せについて考える。
寅次郎に絹代から手紙が来て、寅次郎は返事を歌子に書いてもらう。
歌子はさくらの家で、生活のための就職や結婚より、社会貢献のための介護福祉の仕事に就く事を考え、迷っていた。
一方、寅次郎は歌子の父を訪ね、謝罪を要求した。
帰宅した寅次郎は皆に無礼と思いやりの無さを責められていると、歌子の父が来訪。帰宅した歌子に小遣いと着替えを渡し、歌子は無沙汰を詫びる。歌子の父も無礼を詫び、その場にいる皆が泣き、叔父は宴の準備を始めた。
寅次郎は元気が無い。歌子が実家へ戻ったからだ。寅次郎が歌子を花火の日に訪ねると、歌子は大島の施設に行く決意をしたと告げる。
夜、おじ達が手持ち花火で団欒の中、寅次郎が旅立とうとするのをさくらが見つけ、寅次郎がいないときの寂しさを告げる。そして寅次郎は旅だった。
一ヵ月後、とらやは歌子の父や歌子の事を話し、歌子は施設で一生懸命働き、寅次郎の来訪を待ちのぞみ、寅次郎は旅先の海岸で、水遊びする絹代達を見つけ、駆け寄った。 DVD通販 DVD/CDレンタル

管理人の批評

1974年、日本松竹の作品です。
共演:吉永小百合 宮口精二
第9作『男はつらいよ 柴又慕情』のマドンナ・歌子がカムバックしてきました。前作では解決できなかった父子関係を今作にて描き尽くしています。
想像するに、早大出の吉永さんに家庭に収まる姿というのは内外ともに望ましくなかったのかもしれません。
そして今作でおいちゃん役の松村達雄さんが卒業です。思えば松村さんは器用すぎるのかもしれません。その為か米倉斉加年さんのように今作以降、様々な役で登場されます。
当時を生きていないので、細かな事はわかりかねますが、決して女性の社会進出が楽な時代ではなかったというのは定かであり、歌子が社会福祉関係の仕事をやりたいと思うのは、やはり社会に貢献していきたいという女性の意識の高さが伺える一本です。
そして「男はつらいよ」を見ているとついつい忘れがちなのですが、コーヒーやハンバーグなど、洋風文化は日本社会に根付いていた事は間違いないでしょう。
だからこそ逆に、日本文化にこだわったからこそ、「男はつらいよ」は日本人の心に強く響くのかもしれません。
ですが今作の本題は父子関係です。特に父と娘となると、同じ道、経験を歩むことが少ないだけに、気持ちを伝えようと思うと、愛情表現は限られてくるかもしれません。
ましてや父は小説家。変わり者を描くために孤独な小説家という職業を選んだのでしょうが、変わり者は世の中に大勢いますから、変わり者になりたいけれども、そうはいかずに社会生活を送っている人もいるでしょうし、映画監督というのも、ほとんどの人にはあまり理解されない職業だと思います。
ですから画的に理解されないとわかるくらいですから、相当理解されないと考えた上で、本作を見ていただきたい。そしてだからこそ、思いやり、愛情表現の大切さを感じ取って頂きたい。
今回、寅さんは二つの恋愛をします。が、二つとも過去を引きずった女性への片思いです。そういった苦労をしている女性への優しさこそ、寅さん、そして本作の魅力であると感じました作品です。