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男はつらいよ 寅次郎子守唄(14)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
子宝に恵まれぬ貧しい夫婦のお百度参りに、幸福を授ける産土の神、寅次郎。
だが煙たくて目を覚まし、寅次郎は、焼き上がった鰯をかじった。
寅次郎が川に落とした帽子をかかしに載せて乾かしている頃、柴又では博が工場の機械に巻き込まれ、右手をケガする。心配したさくらは自転車を飛ばして病院へ。無事に済み、元気な姿の博にほっとする。
同じくほっとしたたこ社長は反省し、とらやに鮨を振る舞い、その日の仕事を打ち切ってうなだれる。
不自由に食事を摂る博の元へ、御前様が見舞いに現れ、話は跡取りの寅次郎の事に。すると寅次郎が帰宅。思い切って将来の事をぶつけてみると、寅次郎はちゃんと考えているという。
寅次郎は貯金し、その金で自分が死んだら葬式をあげ、江戸川に船を浮かべて華やかに、盛大にやってほしいとのたまい、皆は呆れ、説教する。
機嫌が悪くなった寅次郎は、止めるさくらにさくら名義で作った通帳を見舞い代と称して渡し、出て行った。
呼子港を彷徨っている寅次郎の前に、踊り子の妻に逃げられ、赤子を抱えた佐藤という男が小舟に乗るのを踊り子リーダー格の姐さんと見送り、昼のアンパンを分け合う。
その夜、宿で隣同士になった寅次郎と佐藤は共に呑み、翌朝、寅次郎は佐藤の置手紙を見つけ、赤子を預けられてしまった。

結末 ネタバレ注意

博は通院しなくて良くなったが、罹った病院の美人看護師の話を叔父としていると、寅次郎が赤子を背負って帰宅。皆は寅次郎の子かと案じるが、違うと聞いて一安心。だが赤子に熱があるとなり、病院に行こうとし、御前様が寅次郎に行かせようとするのを、さくら夫婦が丁重に断った。
叔母に赤子の世話を任せて、近所をぶらつく寅次郎だったが、夜勤明けの美人看護師・木谷京子がとらやに赤子を気にかけて訪れ、寅次郎は一目惚れし、赤子を可愛がり出す。
寅次郎はさくらに同意を求めては、赤子のちょっとした異変で病院へと一直線。
だが肝心の赤子を忘れ、遠巻きに京子を眺めては、帰る。
するととらやに佐藤と踊り子の姐さんが来訪。さくら達は赤子を心配して、佐藤を説教するが、姐さんが赤子を抱えて涙し、さくらは赤子を2人に返し、見送った。
昔、姐さんは自分の子供を赤子の時に亡くし、自分がこの子を育てると覚悟を伝え、それを聞いた寅次郎は全てを承知したが、叔母は消沈していた。
コーラスサークルの帰りに、京子は土手にいたさくら達を見つけ、一緒にとらやへ。
赤子がいなくなり、寅次郎も消沈しているのを見て、京子は心配するが、工員達に笑われ、寅次郎は水をぶっかける。
団欒し、京子は30歳、寅次郎は40歳で独身だという話になり、その後、京子はさくらと寅次郎を土曜のコーラスサークルに誘う。
木曜、納期が迫り、一週間が早いと嘆く社長に、遅いと嘆く寅次郎が現れ、ケンカ。
土曜、少し遅れて到着し、指揮でリーダーの大川弥太郎を紹介され、まずは見学するが、寅次郎は連れてきた源とふざけだし、皆が爆笑し、お開きに。
さくらに叱られた寅次郎は大川の家へ詫びに向かう。京子は兄のいるさくらを羨んだ。
寅次郎は酒を持参して大川と酌み交わすと、大川の京子への恋心を知り、勇気を出して告白しろと応援する。
寅次郎と大川はすっかり仲良くなってとらやへ。すると京子がいて、寅次郎が大声で唄い、大川は告白し、逃げ出す。京子も飛び出した。
京子は昼休みに大川を訪ね、返事をする。二日酔いの寅次郎の元に大川が現れ、笑顔で礼を述べ、帰って行った。
さくらが2階に上がると、寅次郎は既に旅支度を整え、出立。別れのあいさつをし、さくらは通帳を返した。
正月、さくらは合唱団の集いで大川の家へ。大川は改まって京子との結婚を報告するが、みんな既に知っていた。
寅次郎は手紙で京子を案じ、渡し船で姐さんと赤子と再会。佐藤となんとか暮らしていると知った。
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管理人の批評

1974年、日本松竹の作品です。
共演:十朱幸代 上条恒彦 月亭八方 下條正巳
今回のお相手は看護師さん(当時は看護婦)ですが、こういう恋の仕方は珍しく、大概は入院した時に世話をしてくれた看護師さんに惚れるものですが、寅さんは美人というだけで惚れている。
ですが、思い入れが無いだけに、他に彼女を好きな男がいると、すっぱりと諦められるのかもしれません。
なんと今作には佐藤役に月亭八方師匠を起用。今日でも息子の八光さんとともに関西で大活躍の八方師匠ですが、決まった落語よりもべしゃりが立つという事で、世に出てきました。それを山田監督がよく見つけたなという、山田監督の目ざとさ、そして後に新喜劇座長の小籔さんを発掘するあたり、関西への造詣の深さにも恐れ入ります。
さて、オープニングで寅さんが産土の神として登場しますが、東京のお隣千葉県には子宝に恵まれるパワースポットが多く点在しているということです。大木の真ん中に自然にできた穴をくぐったり、お茶碗を借りて水を飲むなどのスポットがあるそうなので、興味のある方は是非お探し下さい。
そして今作からおいちゃん役に下條正巳さんが登場。以来最終作までおいちゃんを勤めあげます。その一本目をご堪能ください。
楽しみにしていたにもかかわらず、源を連れて行ってぶち壊し、更に自分の恋のライバルを焚きつけて、進展させてしまう寅さんを、道化と笑いながら、そのキューピット役はまさに、柴又の妖精と言ってもおかしくない。自分の幸せよりも相手の幸せを考える。その裏にあるフーテンが性に合うという、自分では幸せにできないという自信のなさ。芸人の不幸自慢とさも似たりで、自分の方が低いからとライバルを勇気づけるその姿。下町の妖精の活躍を、まだまだ見たくなる一本です。