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男はつらいよ 葛飾立志篇(16)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
アメリカ西部のサロンで唄う娘。彼女は兄で賞金首・タイガーキッドを案じていた。
なんとそのサロンにはタイガーに罪を着せた真犯人が。
タイガーキッドは颯爽と現れ、悪人達を撃ち殺し、妹に「兄はとうに死んだ」と告げ去って行った。
そんな夢を見ていた寅次郎は荷馬車に揺られて旅をしていた。
とらやに山形から修学旅行中の女学生・最上順子(桜田淳子)がやってくる。彼女の母・雪が年始に寅次郎から500円を貰った縁で訪ねたという。
そこに帰って来た寅次郎は順子の母を思い出すが、順子は寅次郎を父と呼び、寅次郎は雪との出会いは順子が産まれてからだと誤解を解く。
だが、雪は昨年に亡くなり、寅次郎は順子を呼び止め、土産などの世話を焼く。
その夜、寅次郎は雪に世話になった時の話を皆に聞かせるが、たこ社長に笑い話にされ、悪口を言って大ゲンカ。寅次郎はさくらに金を渡されて、出ていった。
寅次郎が山形を旅する頃、とらやには御前様の紹介で筧礼子が下宿する事に。
寅次郎は雪の墓参りをし、案内してくれた住職から、雪は男に騙され、常々「学問があれば」と口にしていたと聞き、反省すると、学を修めよと説かれる。
寅次郎はとらやに柴又の喫茶店から電話。隣に座っていた礼子の読書が学問と知り感心し、コーヒーを奢り、一緒に店を出て話しながら同じとらやに帰宅し、一目惚れ。その夜の団欒で寅次郎は学を修める事について話すが、いつしか笑い話になってしまった。

結末 ネタバレ注意

礼子が出勤し、ずっと寝ていた寅次郎は、住民調査に訪れた巡査が礼子について訊ねるのに聞き耳を立てたり、眼鏡を買ってきて掛けたりして、家族を代表して博に説教され、眼鏡を外し、とどのつまり、礼子に個人教授を受けたいと明かし、帰宅した礼子も同意し、水曜夜7時30分からと決める。
巡査や御前様や町の者から寅次郎の就学祝いが届き、寅次郎はうんざり。授業を受けても退屈で飽きた寅次郎は、商売口上を逆に披露する。その階下で、皆は学問に憧れた時を思い出した。とてもではないが、皆大学に入れる余裕など無かった。
礼子は考古学研究員として発掘調査に出かけ、順子から手紙が届き、寅次郎は家族写真を撮って送る。
ある日、とらやに現れた風采の野暮な中年男を、寅次郎はかわいそうな人と勘違い。だが礼子が戻り、考古学教授の田所と紹介され、誤解が解ける。
寅次郎は田所の博学ぶりに感心するが、男やもめだという田所に恋の手ほどきを指南。田所は寅次郎を師と仰ぐ。
日曜、田所考古学チームと朝日印刷チームとで草野球。それを見ながら寅次郎は、年末年始をとらやで過ごそうかと、さくらに漏らし、さくらも強く勧める。
朝日印刷チームが勝利し、両チームはとらやで宴会。お開きになり、礼子は田所を家まで送り届け、田所から手紙を渡されるが、外で開くとそれは恋文であった。
礼子は寅次郎への個人授業をキャンセルし、寅次郎は学生服に身を包んで商売。
寅次郎が土産を持って礼子を訪ねると、礼子は求婚されている事を打ち明け、寅次郎は礼子を元気付け、居室に戻り旅支度を始めた。
だが、田所からの電話に出た礼子はプロポーズを断る。そして出て行ってしまう寅次郎に驚き、さくらに訳を訪ねると、さくらがそれとなく理由を伝え、礼子は断った事を告げ、さくらは追いかけるが、既に巡査の見送りで寅次郎の列車は出てしまった。
正月を迎え、とらやでは礼子を交えて卓を囲み、一方、寅次郎は同じく傷心の田所と出くわして二人旅。寅次郎は恋の相手を訊ねるが、田所は煙に巻き、追いかけっこしながら富士五湖の渡し船へと飛び乗って行った。
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管理人の批評

1975年、日本松竹の作品です。
共演:樫山文枝 桜田淳子 小林桂樹 米倉斉加年
桜田淳子さんと言えば私のような知らない世代でも、テレビを見ていれば今でも名前だけは聞く存在です。アイドルがこういう形で出演するというのは、テレビやアイドルの地位、知名度が無視できない物になって来たからでしょう。スポット出演というおいしい役どころです。
作中、寅さんが「年末年始はとらやにいる」というニュアンスの言葉を呟きますが、今までの作品を見ている方ならばお気付きでしょうが、これはフーテンで露天商を営むような人にとってはかなり重大な事です。初詣という事で日本各地はどこもかしこも神社仏閣に人がごった返し、儲けもさることながら、やる方も人手が足りないくらいです。(もちろん、寅さんならば近郊で商売する事も考えられますが)それが家にいるというのはある意味、足を洗うような、卒業宣言みたいな事なのです。だからさくらも強く勧めるのです(結局叶いませんが)。
このくだりはその後も何度か出てきます。やり取りとしてはかなり秀逸ですから。
最近は大学全入時代と言いますが(と言ってもそれも不況でかなわなくなりましたが)、おそらくこの頃には大学への進学率も増加傾向にあり、後に満男も大学に通っています。子供をどうしても大学に入れたいという親がいるのは、こういった憧れがあるからなんでしょうか。確かに、好きでもない制服を着ずに受けたい授業だけを受けて、余った時間を自由に過ごせるというのは魅力的です。ただ最近では高校までに選択学習というものも増えましたし、制服のデザインもかなりハイセンスになってきています。多少の満足は高校までに得られるのではないでしょうか?そして何より、厳しく教育を受け、親元を離され就職し、厳しい仕事をさせられてきたからこそ、ゆとり教育というものを一度は願ったのではないでしょうか?
そして何より初任給が違います。大卒と高卒とでは平均して2万〜4万の収入の差がある事も大きな理由でしょう。
今回、終盤での寅さんの叩き売りはかなりコント寄りになっているので、わかりやすく面白いと思います。
そして寅さんの今回の失恋パターンはかなり珍しいです。山田監督がよく見つけて来たなと思いました。