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男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(21)

渥美清主演 木の実ナナ 武田鉄矢共演 山田洋次監督作品。
柴又にUFOが襲来。皆が大騒ぎの中、2階から降りてきた寅次郎は銀色のスーツに身を包み、「自分は旅先で亡くなった寅次郎を憐れみ、第三惑星の女王が遣わした宇宙人」と名乗り、とらやの皆に礼と別れを告げ、乗って行ってしまった。
駅のホームでうたた寝していた寅次郎は、不良学生が持ったラジカセから流れてくるピンク・レディーのUFOで飛び起き、その反動で不良の座っていたベンチがひっくり返った。
河原で写真撮影を頼まれた寅次郎は、シャッターの押し方が分からず戸惑い、転んで、若者達のケンカを引き起こしてしまい、立ち去る。
帝釈天では松竹歌劇団SKDが東京踊り公演の願掛けが行われ、帰ってきた寅次郎はとらやの前でケンカを始め、おいちゃんの体調不良を悪化させる。
夕食時、寅次郎は反省し、見舞を包み、感動に包まれる。調子に乗った寅次郎はとらやの将来の展望を語りだし、途方も無い事を言い始めて、皆は呆れかえり、寅次郎は社長とケンカを始めかけ、おいちゃんはまた体調が悪くなる。決まりが悪くなり、寅次郎は出て行こうとするが、さくらが止めず、苦し紛れの出立となる。
博の勤める朝日印刷の慰安旅行は、日帰りでのSKD浅草レビューを観る事に決定。
一方、寅は田の原温泉太朗館に滞在。散歩をしていた寅次郎は失恋し、無様で惨めになっていく青年・留吉を慰め、男の道を説くと、師事されてしまう。
さくらは学生時代の同級生で、スターになった紅奈々子の楽屋を訪ねてから、観劇。
帰りにはとらやに寄り、速達が寅次郎から届き、絶縁がしたためられていたが、宿賃の援助を頼まれ、向かう。
さくらは駅で留吉に迎えられ、旅館へ行き、連れ帰る事にする。そして留吉の母から、留吉の改善を感謝され、村の者たちへのサインを頼まれる始末。
留吉に見送られ、柴又に戻った寅は反省し、真面目に店を手伝う。するとその姿が評判となり、社長が縁談を持ってくる。そこに、出演前の奈々子が現れ、さくらや寅次郎との再会を喜ぶも、すぐに劇場へ。すると寅も付いていってしまうのだった。

結末 ネタバレ注意

レビューを見て帰ってきた寅次郎は、元のフーテンに戻ってしまう。
農村シンポジウムのため、留吉が上京。レビューを観たいと言い出し、寅次郎はそれを口実にレビューへ。社長は縁談を断られ、大弱りしていた。
レビューに感動した寅次郎と留吉は客席でしばし呆然とした後、楽屋口で出待ち。奈々子と後輩のひとみと4人で食事へ。寅次郎は勘定を留吉に押し付ける。
留吉に帰郷後も頑張れと励まし、明日から休みだという奈々子と別れる寅次郎。だが留吉は帰郷せず、2週間毎日レビューの虜に。留吉の母からの心配の手紙に、読んださくらも心配する。
一方、寅次郎は奈々子から来訪を電話で告げられ大慌て。留吉は近所の食堂のバイトに入り、出前持ちとして楽屋に出入りするようになった。
とらやに遊びに来た奈々子はサイン責めに遭いつつ、寄る年波に進退の悩みを口にし、みんなから夢を叶えた事を羨まれ励まされる。奈々子はレッスンがあると帰るが、結婚に悩んでいた。
商売に励む寅次郎は、ひとみに付きまとう留吉を見かける。
奈々子は、仕事を採る事に決め、照明係のたかしに断りを入れる。そして実家に足を運び、日常を感じる。
寅次郎は売り上げを借りた宿賃の返済に充て、それでも一部なので社長にバカにされ、出て行こうとすると奈々子が来訪。奈々子は10年交際してきた彼との別れを涙ながらに告げ、寅次郎は雨の中、奈々子の部屋へと送る。
部屋で飲み明かす事にするが、奈々子は土砂降りの中、傘も差さずに佇むたかしを見つけ、飛び出す。そして「好き」と抱き合い、キスをした。
寅次郎が帰宅し、さくらは奈々子からの電話で結婚と兄の失恋を知る。そして寅次郎は、詫びに来た社長に構わず、旅に出る。
50周年の「夏のおどり」を最後に引退する事を師匠に報告。
留吉は仕事を頑張りたいひとみに結局振られてしまう。
最後の舞台で、奈々子は舞台袖で引退を後悔し泣くが、励まされ、自分の為に作られたソロ曲「道」を唄い上げる。それを遠くから少し見た寅次郎は途中で外へ。
SKDは北海道公演へと旅立ち、地元に戻った留吉はまた女に振られ、惨めに振る舞っていると、それを観て呆れた寅次郎を追いかけた。
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管理人の批評

1978年、日本の作品です。
「男はつらいよ」シリーズはファンの方も多いので、ミニ情報は他のサイトを見た方がより感銘を受けるので、そちらの方はナシにして、感想を中心に書きたいと思います。
この映画を見て思うのは、恋愛作法を知らない男の惨めさ、女性の芸能活動への関わり方、そして恋愛は傍にいなければいけない、という事です。
留吉というキャラクターを通して、描かれるこの作品。一貫して変わらず、女をものにできないと知って惨めな振る舞いに及ぶ留吉。この寅さんとの対比は、ある種、俗世間にいる男の叫びの表現であり、アンチ寅さんをも抱え込む菩薩のような包容力の現れであり、シリーズ随一の可哀想な扱われ方をする寅さんへの哀しみの軽減になっている気がします。
なぜこの作品を取り上げたかというと、現代のアイドルブームに通じるところがあると感じたからです。
年齢による身体機能の衰えを考えたり、自分が主役級で歌い踊れる事に喜んだり、後輩はそんな自分の姿に憧れ努力したり、集団でその美貌を活かして集客したり、 女性芸能人が感じる事の全てをつぎ込んだかのようなこの作品に、山田洋次監督の視点に感銘を受け、今と変わらない芸能界とそれを取り巻く客層にややがっかりしました。リメイクが容易だなと感じる事に嬉しくもあり、悲しくもある。
「好きならなんでこんなに苦しめるの」というセリフが、女性芸能人の苦しみを物語っているような気がしてなりません。
付け加えて、恋愛は傍にいなければいけない、というのは、恋のお相手が裏方さんという事ですね。何度も会いに来るファンではなく、共に仕事をする仲間。女性というのは社会性が男性より低い(男性には社会しかないので)ですが、さすがに仕事中は仕事モードに切り替えているのか、ファンの愛情表現は心にまで響かず、自分の為にしてくれる仕事に愛を感じるのかもしれません。
もしかしたら女性は、好かれるのは良くても、好かれすぎるのはあまりお気に召さないのかもしれません。
武田鉄矢さんという方は本当に大スターですね。別の作品で書くかもしれませんが、「金八先生」「織部金次郎」「刑事物語」「幸せの黄色いハンカチ」、歌は「贈る言葉」「母に捧げるバラード」。王道スターではないにもかかわらず、ここまでの大活躍を見せる武田さんは、ある意味、現在の芸能界のマルチタレントの活動の基礎となっていると言っても過言ではないかもしれません。
ただ、ご本人もおっしゃっているのですが、プライベートでのファン対応はかなり冷たいそうです。写真やサイン、握手などをお願いしても拒否されるそうなので、特に金八先生ファンはがっかりされるそうですが、本人は創作活動への集中や、幼少期からスターになるまで世間からどういう風に扱われてきたかという事情を鑑みれば、わからなくもないかと。
それにしても、倍賞さんが松竹歌劇団出身だったとは知りませんでした。