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男はつらいよ 寅次郎紙風船(28)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
料理番組にニュース速報で飛び込んできたのは、車寅次郎博士のノーベル医学賞が授賞決定されたという事。執刀手術を終えた博士は取り巻きに囲まれるものの、高校時代にお金の事で別れる事になった恋人と再会し、息子の命を救ってくれとすがられ、その息子の手術に取り組むが、お腹から出てきたのは大きなトンカツ…
定食屋の店員に起こされた寅次郎は、残りのトンカツが載っていた皿を下げてもらい、隣のパチンコ屋・ノーベルの看板持ちの肩を抱いた。
柴又に帰って来た寅次郎は、河原で転び、原因のゴミを投げると、カップルに当たり、サッカーボールが男の頭を直撃。寅次郎はボールを蹴り返すが川に落とし、その拍子にカップルに倒れ込んだ。
自転車でとらやにやって来たさくらは、満男がたこ社長の知り合いで、倒産したおもちゃ工場のコンピュータゲームを遊ぶのを見つける。
するとそこに寅次郎がチリ紙交換の車に隠れて帰宅。満男に紙風船をプレゼントするが、気に入ってもらえず出て行こうとすると、小学校の同窓会が今日行われると知る。
同窓会の会場には、柳(前田武彦)や大工の棟梁(犬塚弘)、クリーニング屋の安夫(東八郎)らが集まるが、寅次郎が現れると皆しかめっ面。寅次郎は我が物顔で棟梁に自分の分の会費を払わせる。
残業を終えた博がとらやに寄ると、同窓会はとっくに終わったはずなのに帰って来ない寅次郎を皆心配。すると安夫に連れられて寅次郎が帰宅。寅次郎は悪酔いし、さくらがたしなめるのも効かず、安夫の商売を小馬鹿にし、安夫は反抗。寅次郎は悪態をついて寝た。
翌日、寅次郎は足早に出立し、大分にてコンピュータゲームを売り、夜、宿「夜明」で若い娘(岸本加世子)との相部屋を頼まれる。
招き入れると、気の強い娘で、寅次郎に興味を持ち、話をすると笑い転げ、困り果てた寅次郎は帳場に逃げ込んだ。
翌日、寅次郎はその若い娘に付きまとわれる。彼女は母に男が出来て、ショックで家出し、漁師をしている腹違いの兄がいるという。
仕方なく寅次郎は、彼女に商売のサクラをさせる。
昼食時、斜向かいでたこ焼き屋をしていた女性に声を掛けられ、かつての仕事仲間、カラスの常三郎の妻で光枝(音無美紀子)と自己紹介され、常三郎が病気で臥せっていると知る。
退院して家で寝ている常三郎(小沢昭一)を見舞った寅次郎は、「自分が死んだら、光枝の夫になってくれ」と頼まれ、仕方なく了承する。
そして帰り際、光枝から常三郎が余命一カ月と知らされた。

結末 ネタバレ注意

落ち込む寅次郎だったが、若い娘・愛子の明るさで気を取り直し、未成年ながらいける口の愛子と酒を呑んだ。
翌朝、愛子は置手紙で置いてかれた事を知り、寝巻のまま外へ飛び出して叫んだ。
釣りから帰って来た博と満男は、真人間となって畏まる寅次郎の姿に驚く。あれから常三郎は亡くなり、事情を知って皆頷いた。
するとそこに愛子が現れ、泣きながら、大阪でバイトした事や、旅の苦労を話し、夜鳴きソバを奢って迎え入れる。
愛子が住むようになり、母親に連絡を入れるが、母親は他人事。だが代わりにえらい剣幕で兄の健吉(地井武男)がとらやに現れ、愛子とケンカ。頬を張られた愛子は兄がいない寂しさを吐き出し、健吉が愛子を連れて帰った事を、博は健吉が持ってきたマグロの刺身に舌を打ちながら聞いた。土産はマグロ一匹で、近所にお裾分けされた。
寅次郎に、東京に戻って来た光枝から葉書が届き、従業員をしているという宿を訪ねる。形見の財布を貰い、帰って来た寅次郎は、光枝と所帯を持ちたいと家族に切り出した。
御前様に待つべき時期を相談するが、御前様は妻は一生喪に付すべしという考えで、寅次郎は帰る。
寅次郎は服を借りて、就職試験を受けに行く。
ある日、光枝がとらやを訪れ、落ち着かず座りもしない寅次郎。光枝は身の上話をし、光枝は両親も知らず、親戚の間を回され、不良になり、自力で更生した。そして寅次郎の事を褒めるが、光枝は香具師稼業との結婚は考えていなかった。
見送りで、光枝から、常三郎が寅次郎の女房になれと言っていたという話が出て、寅次郎は適当に返事したと答え、光枝の苛立つような雰囲気に、帰宅後、すぐに旅立つ準備をし、さくらは引き留めるが、就職試験の返事が届き、結果は不採用。寅次郎は笑って旅だった。
正月、光枝はとらやに届いた寅次郎からの年賀状を見つめ、とらやの手伝いをする。
一方、寅次郎は、焼津で兄の船出を見送った愛子に声を掛け、共に船を見送った。
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管理人の批評

1981年、日本松竹の作品です。
共演:音無美紀子 岸本加世子 小沢昭一 犬塚弘 前田武彦 東八郎 地井武男
今回の共演者の中で、前田武彦さんと犬塚弘さんは以前にも出演経験がありますが、初登場の東八郎さんは、東MAXこと東貴博さんのお父さんですが、東貴博さんの師匠の萩本欽一さんの師匠に当たるのが、東八郎さんであり、その東八郎さんの浅草での師匠に当たるのが渥美清さんなので、同級生という設定は、いささか難しくも感じますが、実はかなりレベルの高いやり取りでもあります。
同窓会というと、学生時代の恋人に再会、焼けぼっくいに火が点く、不倫の温床などのイメージがありますが、男にとってはなかなか難しい会合なのです。どんなに地位が変わろうと、逆転しようと、その時の力関係を引きずっていたり、逆に地位があるからこそ会で堂々と振る舞えたり、その点において、寅さんはそうするよりなかったのではないでしょうか?家族に知られた以上、出席しない訳にもいかず…。もしかしたら小学校のあの時に戻れると思って、出席したのかもしれません。
今回の設定はいささか女性蔑視的で、もしかしたら人気が少ないかもしれません。ですがあの戦後から昭和の時代は、間違いなく男が強かった時代なのです。
クライマックスに、光枝と寅さんが常三郎の言葉を巡っての軽いやり取りがありますが、光枝の本当の感情が見えない。ですがその本当はどうなのか分からず、観客に想像させるという所が、日本映画らしさだと思います。
男の傲慢のような強さが見える作品ではありますが、その後ろにある女の強さを見せてくれるのが、この作品の高評価な部分だと思います。