渥美清主演 マドンナ:新珠三千代 香山美子 悠木千帆共演 森ア東監督作品。
信州で風邪を引き倒れるも、宿で結婚式に出くわしてしまい、部屋替えで休めない寅次郎。
とらやの店前から電話して、帰宅した寅次郎は、忙しい店を手伝ってくれと引きとめられ、見合いの席が用意されていると知り、あれこれと条件を口にして、皆を困らせる。
だが当日、ガチガチに緊張して相手を待つ寅次郎。しかし現れたのは仙台で顔見知りになった駒子だった。
確か駒子には夫がいたと思い尋ねると、駒子は男に逃げられたのだと愚痴を聞かされる内、妊娠していると知り、飛び出して駒子の夫を連れて来て、とらやで仲直りさせ、大宴会を開き、ハイヤーで送り出すと、全ての支払いをとらやに回し、叔父たちは怒り、ケンカに。寅次郎は負けて、地に伏しつつ、自分の幸せを願ってくれる叔父たちの気持ちを受け取った。
そして翌朝、寅次郎はさくらと博に良縁に恵まれなかった事を慰められつつ見送られて、旅に出た。
1ヵ月後、叔父夫婦は旅行へと出発。湯の山温泉に着いた2人は、宿泊先のもみじ荘へ。部屋に挨拶に来た女将・お志津が美人で、未亡人と知り、仲居に尋ねると、なんと「居付いて番頭になってしまった」男がいるという。
部屋のこたつが調子悪く、修理を頼むと、例の番頭が現れ、修理を始めるが、その男は寅次郎だった。
寅次郎は細腕で切り盛りするお志津の為だと人助けを強調するが、実際は腹を下してしまい世話になり、宿賃が払えなくなってそのまま下働き、という経緯で、宴会では得意の芝居口上を披露するも、登場するヒロインの名前をお志津と呼んでしまうと、もっぱらの評判だった。
東京に帰る叔父夫婦のバスを送り出した寅次郎は、危うくバイクに轢かれそうになり、昼食に寄ったラーメン屋でそのライダーと出くわし、その男が女を引きとめようとするのを割って入り、近くの川の橋の上でケンカに。そこにお志津が止めに現れ、寅次郎は橋から落ちて、川に飛び込んだ。
もみじ荘の部屋の布団の中で目覚めた寅次郎は、お志津に、隣にいるライダーの男は弟の信夫であると紹介され、幼なじみで芸妓になった染奴に惚れる信夫に恋の手ほどきとして、こたつの中で手を握るようアドバイスし、お志津と染を連れて卓を囲むが、信夫が寅次郎の手を握ってしまい失敗。
行き先も告げずに出ていこうとする信夫に付いていく寅次郎は、染奴の家に着き、お染が貧乏で、父を助けるために妾になろうとしている事、そして本当は信夫と結婚したいと知り、寅次郎は2人を駆け落ちさせるのだった。
信夫の報告を受けたお志津は、旅館を売ろうと決心し、兼ねてから付き合っている吉井と結婚する旨を従業員達に報告。だが志津の娘のミチコと遊んでいて風邪を引いた寅次郎には、気の毒さから報告できずにいて、代わりに従業員のおすみがそれとなく伝えた。
それを察し、ショックを受ける寅次郎は、置手紙を残し、中にいるのが従業員たちとも知らずに、部屋の外から志津と思って別れの挨拶をした。
歩き出した寅次郎と車ですれ違ったお志津は、気付いたが、声を掛けられなかった。
大晦日、とらやでは年越しそばをすすっていると、TV中継で鹿児島の出店が映り、仕事をしていた寅次郎はインタビューを受け、お志津へとメッセージを送り、夫と娘と3人で過ごすお志津の元へ、それは届いた。
そして寅次郎は、種子島へ向かう船で、同乗客に口調を披露して盛り上げた。
1970年、日本の作品です。
数少ない「非・山田洋次」作品でありますが、当時はそういう事もあったと。
基本的に監督の違いにより生まれるものは「作風・画面の使い方・演出」でありますが、観たところ、やはり山田洋次作品とは違う印象をやや受けます。ですが、そういった事もあるからこそ、寅さんは守りつつ、破りつつ、変化しつつ、愛されたのだと感じます。
今回はようやく、寅さんが旅先で、知り合い以外を恋慕するというパターンの始まりであり、人気作品の続け方を示した事だろうと思います。
それにしても女性はなぜ、交際相手がいるという事を示してくれないのでしょう?まあ、改めて言う事でもないですが、今回は人気商売、客商売である事、そして気の毒で言えないなどと理由を付けていますが、やはり女性は男性の気持ちというものを察しているのでしょう。まあ、今回の寅さんの場合はあまりにもわかりやすいですが(笑)。
非・山田作品でありながら、この作品が、これからの「男はつらいよ」の基本フォーマットになった事は明白であり、車寅次郎が一人の陽気なフーテンから、全ての男達の代弁者へとなり変わった記念碑的作品であります。
そんなある意味では「男はつらいよ」の始まり的作品であるこちらを、ぜひ一度ご覧下さいませ。