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男はつらいよ 寅次郎真実一路(34)

渥美清主演 大原麗子共演 山田洋次監督作品。
日本にエリマキトカゲのような巨大怪獣が現れ、総理と官房長官は、総理の顔馴染であり、30年以上前からこの事を予期していた車寅次郎博士の元、筑波山麓へ。
総理は頭を下げるが、車博士は気が狂ったと大学を追放された事を恨み節、しかし怪獣が筑波へ迫り、やむなく車博士はお守りから光線を出し、怪獣を鎮めるのであった。
そんな夢を昼寝で見ていた寅は、ゴジラのマスクを被った少年に起こされ、食堂の外を通りかかる仲間の車に乗せてもらった。その時、寅が忘れたお守りを、食堂のおかみが持って来てくれた。
柴又の江戸川堤防でバイクに煽られた寅は仕返しにヘルメットにイガグリをポイ。実家の団子屋とらやでは結婚して出て行った印刷工場の社長の娘あけみが、ロールキャベツにつまようじ代わりにマッチ棒を刺して夫にキレられケンカし戻ってきており、みんなでなだめていると寅が帰って来てあけみの味方をし出したので、振り出しに戻ったと社長は怒り、表でケンカ。すると帝釈天の住職御前様に見つかり、関係者全員説教を食らうはめに。
気まずい寅は居酒屋で飲んでいると、飲み代が足りなくなり、さくらに電話。だが手を払いのけられ、無銭飲食留置所行きの覚悟を笑顔で決めると、居合わせた会社員・富永健吉に勘定を持ってもらう。
翌日、さくらの家に泊った寅は、貰った名刺を頼りに、勤め先の日本橋のスタンダード證券へ。忙しい富永に礼のバナナを渡し、今晩の酒肴に誘うが、忙しい富永に応接室に押し込められる。
寅の差し入れバナナに手を伸ばしながら会議は9時に終わり、2人で居酒屋へ。酔っぱらった富永は自分は鹿児島県枕崎の近く出身だと何度も話し、自宅のある茨城県牛久沼へと電車で連れていく。
翌日、早朝から富永は出社し、寅は家事をする富永の妻ふじ子の美しさに見惚れる。だが、人妻である事を知り、家には自分と二人だと知るや、寅は慌てて、朝食も戴かず出て行く。するとふじ子がお守りを届けに追いかけて来てくれた。
寅はその晩家族にふじ子の美しさや富永の通勤苦労を聞かせ、社長にふじ子に惚れている事をからかわれまたケンカ。
そしてある日、富永はいつものように出勤中、目の前がぼんやりとし、会社の近くで踵を返し、タクシーに飛び乗り、身を任せてしまうのだった。
とらやにふじ子から夫の安否を尋ねる電話が鳴り、寅は大急ぎでふじ子の元へ。富永は金曜日に家を出たきり、行方知れずとなっていた。

結末 ネタバレ注意

とらやに飛び戻った寅。さくらは急いで裏の工場で働く夫の博を呼びに。というのも、寅が宛てもなく富永を捜す旅に出ようと、おいちゃんの有り金を全部出せと迫り、おいちゃんは激怒し、おばちゃんは泣き、それを止めるためだった。占いで北海道に行こうとする寅を、博は宥め、落ち着かせる。
寅はふじ子とその息子たかしを見守る事にし、文化の日にはとらやに招待して、楽しい時を過ごしてもらう。
そして、富永の目撃談が。実家である鹿児島県枕崎近辺で見かけたという情報が入り、ふじ子はたかしを母に預け、連絡を受けた寅は社長から5万円を借り、飛び出して行った。
富永の実家に入るのに気後れする寅を部長と偽り、だが富永は顔を出しておらず、寅は呆けた富永の父親に薙刀を振り回され、逃げる。そしてその晩、寅は気に入られ、父は薩摩節を唄うが、刀を取り出し、寅はまた逃げる。
釣りをしていたという情報を頼りに、東京出身のタクシー運転手に水辺中心に捜索。すると安宿で寅の名前で宿泊していたと突き止める。
その夜、安宿に泊まる事になり、寅はふじ子を励まし、運転手の家へと泊まりに行き、ふじ子は遠慮深い寅をつまらながる。
結局富永とは会えず、東京に戻った寅は寝込む。ふじ子に恋をしてしまった寅は、心のどこかで、富永が戻らなければいいと思う自分に浸食され、苦しみ、旅立つ事を決意。万が一の事があれば、ふじ子達の世話をするようにとさくらに頼み、外に出ると、富永と遭遇。電話がつながらず、牛久沼へと富永を連れていく。富永を家に入れた寅は、泣いて富永に抱きつく母子を見て黄昏るのだった。
その夜、寅は土浦からとらやに電話をし、そのまま旅に出ると伝えた。
正月が来て、とらやにはふじ子から年賀状が。富永は会社のはからいで首を免れ、土浦営業所に転属。たかしと釣りをして、家族の時間を持てる余裕が出来た。
一方その頃寅は、駅舎のベンチで寝ころび、列車を待つが一向に来ない。いぶかしんだ仲間が外に出ると、廃線になり、線路が無かった。仕方なく寅は仲間と二人、線路跡を歩いた。
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管理人の批評

1984年、日本の作品です。
この映画で最初に飛び込んでくるのが「松竹90周年」の文字。ゴジラは「東宝」であり、特撮といえば「東映」、松竹の特撮への参加がよもやこのような形になるとは。思えば「大日本人」も配給は松竹。不思議な因縁を感じます。
この作品が私にとって最初の「寅さん」です。というのも、これはBSプレミアムの「追悼 大原麗子さん」で拝見しました。大原麗子さんの活躍も知らず、ただ「男はつらいよ」という作品を知りたかっただけの私。まさかこれがシリーズにおいてはイレギュラーの作品だったとは…。
大原さんも夫役の米倉斉加年さんも「男はつらいよ」シリーズへの出演は初めてではありません。米倉さんは過去に大学教授、警察官役で出演なさっていますが、それをまったく感じさせません。見事な俳優です。
シリーズを通して言えるのは、寅さんとマドンナ役の女優さんの掛け算を楽しむ、という事ですね。やはり大原麗子さんは個性が強いので、そこが楽しめる。そして渥美さんではなく、あくまで「寅さん」という事。これが大事。
この作品で描かれているのが、郊外からの通勤、過労から来る精神的ストレスです。この時代ではそういうものはおそらく、証券マンなどの特殊で、過酷な仕事に就いている人たち特有の現象、発症だと思われますが、まさか現代では24時間営業、人手不足、コストカットでより多くの労働者が抱える事になるとは、当時思いもよらなかった事でしょう。
調査によると、2014年の新入社員はほどほどに仕事をしたい「草食系」が多く、出世も主任や班長程度、社長になりたいのは1割強だそうです。かくいう私もそうですが…。
この作品で富永とふじ子の再会で、一人息子が割とはっきりと喋るのですが、多少違和感を感じつつも、グッと来てしまいました。おそらく一人息子は彼なりに家を守らなければと責任感が芽生え…。山田監督の演出は素晴らしいと感じました。