Sound Horizon

100619

【CD】『イドへ至る森へ至るイド』

今日から始まる「生誕祭」という名の、実質は『イドへ至る森へ至るイド』ライブ。SHはライブで作品の感想が変わることが多いので、その前に最初の感想を書いておくです。

あ、これは「感想」であって「考察」ではないのですよ。
サンホラの考察って「曲のストーリーや繋がりを考える」みたいなのがメインだと思うんだけど、Revoさん自身が「好きに考えてくれて構わないし、あえてあいまいに作ってる」って言ってることもあり……私としては考察より感想が書きたいな、と。曲の解釈ではなく、曲を聴いて“私が何を思ったか”、ってことが書きたいのです。

『Roman』と『イド』

そう。んで『イド』の感想に至る前に『Roman』の話をしなくちゃ。
『Roman』すごい好きだし、最初に行ったストーリーコンサートだからめっちゃ思い入れもあるのだけど、やっぱ自分の感想としては「対比構造が偏ってる」なーと思ったのね。

アナタを産んだのが…誰であれ…
本質は変わらない…何一つ…
アナタが望まれて産まれて来たこと…
それさえ忘れなければ…
(11文字の伝言)

うん、確かにそうなんだけど、真実は「そうじゃない」よね。
それは光の方面の見方であって――物事の本質には二面性が必ずあるとするならば――闇の方面からの見方もある。

つまり、望まれずに産まれてくる子がいる、ということ。
あるいは、望まれずに産まれることすらできない子がいる、ということ。

これは別に私が欝テイストが好きというわけではなく、単純に「でもそういうことってあるよね?」という話です。うん。すばらしいことと同時に、残酷なことが起こるのがこの世の常ってものなのです。

そういう意味では、『Roman』は光の方向に「対比構造が偏って」いる作品だと思う。
でもまあ、のちのち隠しトラックの「yaneuraroman」とかタワレコ特典(だったよね?)の「Another Roman」を聞いて、あ、ちゃんとRevoさんはわかってやってるのかも、と思い直しました。
たぶん、今はまだその時じゃないんだと。生(せい)の本質の「光の部分」は描いた。でも「闇の部分」を描くのは、まだ先の話なんだと。それができる、という確信が持てた時、きっと、このしんどい作業を……彼はやってくれるだろうと、待っておりました。

その時は案外早かった! まあつまり『イド』がそうなんだろうな、と私は思ってる。『イド』は『Roman』のコインの裏側、その影、ダークサイド。
まあ、メルヘンさんもイヴェールと同じように人形好きみたいだし(笑 いいかんじで対になってんじゃん! と、まあそれはともかくとしてね。

闇の中の子どもたち

『イド』の登場人物、特に子どもたちは、まあなんというか悲惨だよ。井戸に投げ落とされたメル、籠の中の鳥のエリザーベト(他の登場人物も色々いるけど、ちょっとセリフがよく聞こえないので……) 。
どの子どもたちも、何も悪いことなどしていないのに、なぜこんな目にあうのか?

すべての人を巻き込む疫病、ペスト(黒死病)に至っては、善良な人であろうが悪人だろうが、子どもだろうが大人だろうか、全く関係などありゃしない。

ペストってのはね……もうほんと悲惨なんですよ。致死率は50%以上、肺ペスト(肺にペスト菌が感染した場合)の場合は致死率ほぼ100%! このペストの大流行で中世ヨーロッパの人口のなんと3/1が減ったらしい。またこの症状がむごいものでね。
しかもペストっていまだに撲滅されてないんだよね。この現代でさえ、感染したら死亡率10%。まあ抗生物質があればなんとかなることも多いですが。

まさに掘っても掘ってもきりが無い、多層菓子の出来上がり!
……どうしてこうなった? なぜこんなことになるのか?

そこで出てくるのが心理学用語としての「イド(id)」。 私もあんま良くしらないけど、単純に言えば「欲望」ってことなんかしら。
人間の、ペスト菌の、あらゆる「生命」の攻撃性、性衝動。

その闇の部分を凝集してみせたのが、『イド』という作品なのかなって思うです。
ああ、もちろん「イド(id)」は悪いことばっかじゃないのよ。欲望や衝動があるから、私たちはイキイキと生きることができるわけなんだし。

さ、とはいえ『イド』は“プロローグマキシ”。7thアルバムに続くマキシシングル! この続きをどうもって行くのか……いやもうほんと、どきどきするね。

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以上、昨日の書き溜め分でした。
よし、髪も乾いた。では、生誕祭の一日目、行ってきます!