本との出会いを記した,感想文になっていない読書ノート。
----- こんな本に出会いました -----

書名など
池波正太郎:真田太平記(1)〜(12),新潮文庫,第1巻は2004.1,(46刷)660円,第12巻は2006.4, (36刷)740円  

史実と虚構が入り交じった娯楽
 今年の夏は連日の猛暑。必然的に昼寝でごろごろする日が多かった。
 畳に寝そべって,軽い(内容も,目方も)本を読む時間は,まさに至福。

 前に一度読んだが,ごろ寝するついでに1巻を読み出したらやめられなくなり,結局,全部読んだ。昼寝の時間がいかに長かったかが分かろうというものだ。

 物語の時代は,長野県人には県歌「信濃の国」でおなじみの,仁科五郎盛信の高遠城が,織田信長の長男,信忠に敗れるところから始まり,上田の城主真田信之が松代へ移される頃までである。
 真田家は関ヶ原の合戦で,昌幸は豊臣方に,信之は徳川方についた。どっちが勝っても生き延びられるようにという,小賢しい城主と良く言われる。本書では,それこそ,豊臣家と徳川家との歴史的な流れの結果であり,お家安泰のためではない,という立場で書かれている。信州人としては,納得いく話である。

 とは言っても,以後,徳川幕府からは策略家・謀反の恐れありと見なされ,ことある毎に,様々な出費を要求された。本書の時代は,昌幸,信之,それに幸村と名君,名将揃いで,上田を攻めた徳川の軍を2回も破っている。
 それ以後,松代藩に名君と呼ばれる藩主はいなかったらしい。ひたすら,お家安泰を図った家臣団によって江戸300年を生き延びた。取りつぶしも,領地替えもなく,江戸時代が終わってみれば,北信濃では最も石高の高い藩になって残っていた。
 北信濃では,武田信玄より上杉謙信の方がずっと人気がある。私は,子供の頃には,謙信=善,信玄=悪と刷り込まれていたように思う。武田信玄と組んだ真田家であるが,徳川の軍を破ったり,はては,講談真田十勇士などで,例外的に人気がある。

 それにしても,丹念に史実を追いながら,上田,甲賀,伊賀の忍びを織り込んだ話は,ただただ楽しかった。女性がこういう話を喜ぶかどうか知らない。

 池波正太郎の話は,鬼平犯科帳にしろ剣客商売にしろ,男が他愛もなく引き込まれる娯楽である。
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