----- こんな本に出会いました -----

<書名など>
 「がん治療の常識・非常識」患者にとっての最良の選択とは? 
   田中秀一著,講談社ブルーバックス
     2008年4月 1刷発行,220ページ,860円+税   

         本との出会いを記しただけ。感想文になっていない読書メモ


 立花隆が講演でこの本の話をしたので買った。 
 彼の本を読んだことはないし,講演を聴くのも初めてであったが,自身が,がん患者でありながら「データを見れば,がん患者は,最後にはがんで死んでいる」と正直に言ったので,買う気になった。
 
 
 著者は読売新聞医療情報部長。
 書き出しが「第1章 がんは本当に治るようになったのか?」である。
 どうも,本当にという言い方をされると「本当ってどういう状態を言うの」と聞きたくなる。
 それはとにかく,データを見れば,40年前に治らなかったがんは現在でも治っていない。現在治せるがんは40年前でも治っていた。

 5年生存率は別にして,もっと長い期間で見た場合,がんは治っていない。
 結局「もう治療法はありません」と言われたがん患者はどうすればいいのだ。
 いずれは緩和ケアが必要になる。現在でも,その面倒は見てもらえそうにない。

 各種治療に関して,その概要とどういう場合に有効かを記述している。
 どれも,ぱっとしない。
 要は,残りの命は半年と言われて,いろいろな治療をして3年生きたとしても,延びた2年半は苦しい闘病生活ということらしい。

 免疫療法と代替療法はほとんど効果がない。
 でも,自分の経験では,治療法が見つからない時に親切なのは,医師より代替療法信者だ。

 サプリメントは効かないと医師が言ってもそんなことは気にしない。
 「現代の最先端の医療を受けてがんは治りましたか。治らないのは最先端の医療でも駄目だということです。
 そうです,効き目がないのは現代の医療も同様なのです。
 そして,サプリメントの効いた例を挙げてくる。本当かウソかは関係ない。
 それに,こういう時は医師より,信者のほうがずっと親切。

 正直に,もう治療法がないと正直に言うのと,にせもので希望を持たせようとするのとどちらが親切なんだろうか。
 私は,代替療法の蔓延は,医師のもしくは病院の患者に対する対応の悪さにあると感じている。

 それはともかく,がんの治療は進んでいるが,当面,画期的な治療や画期的な新薬は期待できないことが分かる。
 がんを20%減らす運動も,治療効果をあげることは入っていない。
 効果があるのは喫煙をやめることくらい。それ以外の原因に頭を悩ませるのはほとんど意味がないという。

 治らない,治療法がないときにいったいどのような対処法があるのだろうか。
 最後は緩和ケアの話になっている。
 これが安心できる状態なら,がん患者としては,がんをおそれることはあまりないように感じる。
 でも,いささか心配。

 「がんとの戦いに勝利できないとしても,人生までが敗北になるわけではない」という言葉は,重いのであるが,何とも頼りない気がした。
   
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