----- こんな本に出会いました -----
         本との出会いを記しただけ。感想文になっていない読書メモ

 <書名など>
 「劒岳」(点の記)
      新田次郎著
      文春文庫,2006.1 第1刷発行
      686円+税
 



 先に上映された映画は見逃した。それで、本書をKS さんにお借りした。
 一緒に、「もうひとつの劒岳 点の記」(山と渓谷社編、2009年1月初版発行、2000円+税)もお借りした。
 映画は、特撮もCGも使わない完全な実写で作ったと案内に書いてあった。
 
 剣岳に測量用の三角点を設置するための物語である。物語の当時、明治39年は剣岳は未登の山であった。今では登山者が押し寄せているが、いまだにたやすく登れる山ではない。

 準備に始まり、各地に三角点を設置していく過程は、メンバーの役割が表に出て組織の様子がよく分かる。
 山を案内する宇治長次郎と主人公、柴崎芳太郎とのからみが淡々とそして重厚に語られている。
 当時、日本にできたばかりの山岳会と、どちらが先に剣岳へ登るかの争いもからんで、当時の登山事情がうかがえる。

 柴崎をリーダーとする測量隊が剣岳に登ると、そこで奈良時代のものと思われる錫杖と剣の穂が発見され初登頂ではなかったことが分かる。それまで、立山は信仰のやまで多くの人が登り、剣岳は登ってはならない山とされてきたが、先人はいた。
 その情報に、測量隊本部(陸軍)は大いにとまどうのであるが、初登頂だけにこだわればそうであろう。

 本書は、剣岳に登った登らないという話で終わらせず、測量隊としての成果を丁寧に書いている。最初に書かれたのは昭和52年ということであるが、内容はなお新鮮である。

 「もうひとつの剣岳」によれば、優秀な案内人の宇治長次郎が実際に剣岳に登ったかどうかについて、その証拠は何も残っていない、ということがに紹介されていて興味深い。

戻る