----- こんな本に出会いました ----- 本との出会いを記しただけ。感想文になっていない読書メモ <書名など> 「天地明察」 冲方丁著 角川書店 2009.1 初版発行 475ページ 1800円+税 |
新聞の書評を見て気になっていた。 それに、2010年本屋大賞受賞とある。 作者の名前を「うぶかた とう」と読むことは知らなかった。 「冲」という文字は初めて見たような気がする。「丁」を「とう」と読むことも知らない。 でも、パソコンの辞書にはあった。 知らないことだらけ、というのも楽しい。ただし、関心が持てれば。 |
江戸時代に、日本国産の暦を作った渋川春海(碁打ちとしては安井算哲)にまつわる小説。主人公は碁打ちであり、数学者。 ぴったりあった答えは「明察」と言われる。完全な正解は「天地明察」というわけだ。 当時、すでに誤差が大きくなっていた中国産の宣命暦を正しい暦に替える過程が書かれている。 それ以前に、北極星の位置を測定して日本各地の緯度を求めるというグループに参加している。これは計算、高精度測定といったことに加えて、仕事を進める上での幕府とに折衝などの実務を学ぶ上でも効果があったらしい。 観測結果は 35度8分45秒というように、秒の単位まで求められているのが当然とはいえ、すごいと思う。 和算の天才関孝和とのからみも面白いが、孝和とはこういう人物であったのかどうかはともかく、ほとんどの問題に対して、いきなり答えが浮かぶというから、天才とはこういう人を言うのであろう。 当時の暦の精度を確認するものとして、月食を予想することであったというもの当然とはいえ面白い。春海の予想は精度が高かったのに、予想が1回はずれ、一気に信頼を失う。その誤りの原因を突き止める過程に、関孝和が一役買う。 こういうことは地球が丸いと考えないと精度は上がらないわけで、少なくとも17世紀の日本では地球は丸いことが分かっていたらしい。 というより、日本にしても中国にしても、地球は平面だと考えていた時期があったのだろうか。 碁、数学、天文学とあわただしく経過する22年の様子はなかなかおもしろかった。 春海と妻「えん」は同じ日に亡くなったという結末に、碁も数学も暦も吹き飛んでちょっと涙が出た。 私が涙もろいのか、そういう話だったのか。たぶん両方だろう。 |