9月13日 ダーウィン 晴れ
オプショナル・ツアー「アボリジニの学校訪問」。
バスで着いた「ナンガリーニヤ・カレッジ」は、キリスト教会が主な運営をおこなっている成人学校だった。全寮制で、ノーザン・テリトリー(オーストラリア北部域)各地から集まって、職業訓練や英語教育、そして伝統技術の習得とあわせてキリスト教教育も受けているらしい。ここに入学すると、その期間は地元に残った家族も含めて生活を保障されるというシステムらしい。子どもと一緒に寮生活をしているらしい女性の姿が多かった。「キリスト教と伝統宗教との関係は?」という質問に、「創世記(聖書)と自分たちの神話には共通性があるので、抵抗はない」という答えが、身につまされるだけに辛いものがあった。
昼食後、"文化交流"がおこなわれた。昨日カカドゥ国立公園で見、指にトゲを刺したガマに似た葉を使って何か作っている。「?」……長い葉を指で裂き、その中心に並んでいるトゲを外した部分を使うのだ。細長い葉の柔らかい両端部分を、さらに爪先を使って表と裏に剥ぎ分け、細長く丸まったその葉で、バスケットを編むのである。「やってみよう!」……しかし、一枚の葉を表裏に剥ぎ分けるのは、とても難しい。釧路の友人、チーやんに似た痩せた女性がにこにこしながら見せてくれる手順通りにやってみるのだが、「剥げない!」。ついにギブアップ……。
デジリドゥーの吹き方を教わり、顔にペインティングを施され、唄を歌い……16:00には船に戻り、17:00出港。チモールから一緒だった越田君とも、ここでお別れだった。
夜は、ダーウィンから乗船したアボリジニの水案、ジョーン・ウィンフィールドとミック・マーティンとの顔合せ。私の水パ(水先案内人パートナー=アシスタント)とも、初めて顔をを合わせた。4人の若い女性たちであった。
9月14日 晴れ
午前中に講座。「アイヌ入門 T/旧土人保護法の百年」……アイヌ史の概略。
午後、南十字星大学・アボリジニ学科の教師ミックの講座「白人による暗黒の歴史」。ミックの友人でピースボート・スタッフのポールが"白人によるオーストラリアの歴史"を自分の体験を交えて話し、ミックが"アボリジニにとっての歴史"を話す。"自由と希望の国―オーストラリア"の歴史と現実に初めて触れた人びとには、かなりの衝撃があったようだ。
"アイヌ入門"を聞いていたミックが「いかった、いかった!」と寄ってきて、夕食前にバーでビールのおごり合い。これ以後、顔を合わせるとビール、が始まることになった。「解ったのか?」「とても良く解った!」……事前学習に苦労している同時通訳メンバーに感謝である。
24:00、時差発生。時計を30分進める。
9月15日 晴れ
午前の講座「アイヌ入門 U/アイヌの世界観」……信仰と精神世界。
午後、反核運動とくに南オーストラリアで反核の活動をおこなっているジョーンの講座「核大陸オーストラリア」。原発も核爆弾も持たないオーストラリアが、燃料ウランの最大輸出国となり、核実験による汚染地域が広がってきた経緯。そこで被曝し続けるアボリジニ……。
9月16日 晴れ
午前の講座、「アイヌ入門 V/アイヌ ネノ アン アイヌ」……現代のアイヌ。
午後の講座、ジョーンとミックによる「奪われた世代」……オーストラリア政府が1916年から行なったアボリジニ児童の強制隔離・白人化政策によってアイデンティティを喪失していった人びと――ストールン・ゼネレーション。自身がその一人であったジョーンが、その苦しみと痛みを語った。そして、今も続く"白豪主義"……。
夜、「太平洋入門 U/国を追われた人々」……ブリスベン(19日)から乗船してくるメンバーと、オークランド(26日)入港までの間に開催される「ミニ NFIP」へ向けて、太平洋の島々・国々についての入門講座。1回目の昨日はP・BスタッフのNさんが、2〜3回目は、私が。この日は、"楽園"と呼ばれる南太平洋で国を追われてきたバナバ島の人びとの歴史と現状を。
9月17日 晴れ
午前の講座、「アイヌ入門 W/樺太アイヌの歴史」……大国の利害で国を追われてきた樺太アイヌの歴史は、バナバの人びとの歴史と重なる。「アイヌ入門」前期は、一応ここまで。
デッキランチに続いて"ビール祭り"は、ビール1本1US$(半額)。夜は"カラオケ大会"。
20日、ブリスベンでのサッカー「日本VSブラジル」戦(オリンピック)観戦へ向けて、船内サッカーファンは盛んにヒートアップ。ビールとともに終日賑やかなオリビア号だった。