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ヤイユーカラパーク VOL37 2001.08.30
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おもな内容

公開 抗議・質問状


7月2日、北海道選出の衆議院議員鈴木宗男が東京で、平沼赳夫経済産業大臣が札幌で、それぞれが差別発言をおこないました。「またか!」という中身ではありますが、折からの"小泉フィーバー"のなかで進行する右傾化・大政翼賛化傾向と軌を一にする言動を放置するわけにはいかないと考えました。しかも鈴木は「アイヌの同化は完了した」と放言しているのです。私たち(『ヤイユーカラ・アイヌ民族学会』『アイヌの女の会』『ヤイユーカラの森』)は連名の抗議・質問状を送ると同時に、これを公開しました。

以下の3通が、その内容です。


鈴木 宗男 様

私たちは、2001年7月3日付北海道新聞で、あなたが7月2日東京都内で行った講演において『私は(日本は)一国家一言語一民族といっていいと思う。北海道にはアイヌ民族というのがおりまして、嫌がる人もおりますけれど、今はまったく同化されている』(北海道新聞)と発言されたことを知りました。

1986年11月、当時の中曽根康弘総理大臣が日本国を「単一民族国家」とした発言に対して、国内外から大きな抗議と批判が集まったこと。同年12月に外務省国連局人権難民課が国連に対して行った報告「本条(B規約27条)との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等の権利を保障された国民としての上記権利の享有を否定されない」を、(社)北海道ウタリ協会などの働きかけによって1991年12月、「本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していること等から本条にいう少数民族であるとして差し支えない」と報告し直していること。

さらに、1984年5月に(社)北海道ウタリ協会総会において『アイヌ民族に関する法律案』が採択され、同協会の要請を受けた北海道知事の諮問機関「ウタリ問題懇話会」における検討と答申を経て推進された「アイヌ新法」(仮称)制定運動に対して、政府は10省庁からなる「アイヌ新法問題検討委員会」での検討をすすめたこと。1995年3月に設置された五十嵐広三内閣官房長官(当時)の諮問機関「ウタリ対策の在り方に関する有識者懇談会」による答申が1996年4月に出され、それに基づいて1997年4月、『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(いわゆる『アイヌ文化法』)が制定され、同時に『北海道旧土人保護法』が廃止されたこと。

以上については、その推移と事実関係について、北海道選出の国会議員であり閣僚経験者でもあるあなたは、十分に認識しているはずと私たちは考えます。

にもかかわらず行なった7月2日の講演におけるあなたの発言内容は、動機や意図がどのようなものであったにしろ、私たちはそれを放置も許容もできません。

あなたはその後、「一般論として言ったのであり、差別的意図はなかった」という趣旨の釈明をしていると報道は伝えていますが、意図の有無にかかわらず他者の存在を傷つけ、切り捨てる言動は、明らかに差別行為です。しかもアイヌに関わる歴史的事実と現状を十分認識しているはずのあなたの発言は、アイヌの基本的人権を無視し、圧殺する"意図"を明らかにしたものであると判断され、指弾されても当然でありましょう。

上記外務省国連局人権難民課報告も『アイヌ文化法』も、その内容において不十分なものであると私たちは考えていますが、そこに書かれている最低限のこと――「民族としてのアイヌの存在」さえ切り捨てたあなたの発言を、私たちは許すことはできません。


私たちはあなたに、次の点について回答することを求めます。

1.「民族」についての、あなたの認識。

2.「同化」についての、あなたの見解。

3.「アイヌの復権活動」についての、あなたの見解。


以上についての回答を、文書で、早急に、下記事務局宛にお送りください。

    2001年7月12日

       『ヤイユーカラ・アイヌ民族学会』会長  秋辺 得平

       『アイヌの女の会』代表  島崎 直美

       『ヤイユーカラの森』代表  計良 智子

         事務局  札幌市南区常盤4条2丁目19−32 (事務局長:計良光範)


経済産業大臣 平沼 赳夫 様

私たちは、2001年7月3日付北海道新聞で、あなたが7月2日札幌市内で行った講演において『(日本は)小さな国土にレベルの高い単一民族でぴちっと詰まっている。この人的資源があったからこそ、あの大東亜戦争に負けて原爆まで落とされて、いまだに世界第二位の経済大国の座を守っている』(北海道新聞)などと発言されたことを知りました。

1986年11月、当時の中曽根康弘総理大臣が日本国を「単一民族国家」とした発言に対して、国内外から大きな抗議と批判が集まったこと。同年12月に外務省国連局人権難民課が国連に対して行った報告「本条(B規約27条)との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等の権利を保障された国民としての上記権利の享有を否定されない」を、(社)北海道ウタリ協会などの働きかけによって1991年12月、「本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していること等から本条にいう少数民族であるとして差し支えない」と報告し直していること。

さらに、1995年3月に設置された五十嵐広三内閣官房長官(当時)の諮問機関「ウタリ対策の在り方に関する有識者懇談会」による答申が1996年4月に出され、それに基づいて1997年4月、『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(いわゆる『アイヌ文化法』)が制定され、同時に『北海道旧土人保護法』が廃止されたこと。

以上について、現在閣僚であるあなたは十分認識しているはずと私たちは考えます。ですから7月2日の講演におけるあなたの発言を、私たちは放置も許容もできません。

あなたの発言は、アイヌや在日諸民族の基本的人権を無視し、圧殺する意図を明らかにしたものであると判断され、指弾されても当然であります。

上記外務省国連局人権難民課報告も『アイヌ文化法』も、その内容において不十分なものであると私たちは考えていますが、そこに書かれている最低限のこと――「民族としてのアイヌの存在」さえ切り捨てたあなたの発言を、私たちは許すことはできません。

国内外から批判が強い「大東亜戦争」云々についての指摘はとりあえず置くとして、私たちは斬り捨てられた当事者として、あなたを糾さねばなりません。


私たちはあなたに、次の点について回答することを求めます。

1.日本国における「民族」についての、あなたの見解。

2.「民族のレベル」についての、あなたの認識。


以上についての回答を、文書で、早急に、下記事務局宛にお送りください。

    2001年7月12日   <署名は鈴木宛と同じ>


内閣総理大臣 小泉 純一郎 様

私たちは、現内閣の閣僚である平沼赳夫氏の発言について、内閣の統括者であり彼の任命者であるあなたに、強く抗議をし、質問をいたします。

私たちは、平沼赳夫経済産業大臣が7月2日札幌市内で行った講演において『(日本は)小さな国土にレベルの高い単一民族でぴちっと詰まっている。この人的資源があったからこそ、あの大東亜戦争に負けて原爆まで落とされて、いまだに世界第二位の経済大国の座を守っている』(北海道新聞)などと発言したことを報道で知りました。

1986年、当時の中曽根康弘総理大臣が日本国を「単一民族国家」とした発言に対して、国内外から大きな抗議と批判が集まったこと。1991年、渡辺美智雄副総理兼外務大臣が、1993年には三塚博自民党政調会長が、同様の「単一民族発言」を続け、その都度世論の批判を受けてきたことは、あなたもご存知のことと思います。

また、1986年に外務省国連局人権難民課が国連に対して行った報告「本条(B規約27条)との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等の権利を保障された国民としての上記権利の享有を否定されない」を、(社)北海道ウタリ協会などの働きかけによって1991年、「本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していること等から本条にいう少数民族であるとして差し支えない」と報告し直していること。

さらに、1995年3月に設置された五十嵐広三内閣官房長官(当時)の諮問機関「ウタリ対策の在り方に関する有識者懇談会」による答申が1996年4月に出され、それに基づいて1997年4月、『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(いわゆる『アイヌ文化法』)が制定され、同時に『北海道旧土人保護法』が廃止されたこと。

以上についても、過去に閣僚を経験され現在は内閣総理大臣の職にあるあなたは、十分認識しているはずと私たちは考えます。

私たちは、7月2日の講演における平沼赳夫氏の発言を放置・許容することはできません。彼の発言は、アイヌや在日諸民族の基本的人権を無視し、圧殺する意図を明らかにしたものであると判断され、指弾されても当然であります。

上記外務省国連局人権難民課報告も『アイヌ文化法』も、その内容において不十分なものであると私たちは考えていますが、そこに書かれている最低限のこと――「民族としてのアイヌの存在」さえ切り捨てた彼の発言を、私たちは許すことはできませんし、彼を閣僚に任命したあなたの責任を追及しなければなりません。

国内外から批判が強い「大東亜戦争」云々についての指摘はとりあえず置くとして、私たちは斬り捨てられた当事者として、幾つかの問題点をあなたに糾さねばなりません。


私たちはあなたに、次の点について求めます。

1.日本国における「民族」についての、あなたの見解。

2.上記平沼発言に対する、あなたの見解。

3.平沼赳夫経済産業大臣の解任。


以上についての回答を、文書で、早急に、下記事務局宛にお送りください。

    2001年7月12日   <署名は鈴木宛と同じ>