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ヤイユーカラパーク VOL50 2005.06.20
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海外先住民情報

石油開発とサハリン先住民〜2

前号に記した「国際協力銀行(JBIC)」の第5回「環境関連フォーラム」が3月11日、札幌でひらかれた。事前に「油流出関連に絞った議論」という案内だったので、あまり内容に期待は出来ないと思いつつも参加。まったく予想通りの展開だった。

第6回は3月25日に東京で「油流出関連/生物関連等」をテーマに、第7回は4月22日に札幌で同テーマで開催。短期間に連続してひらかれるフォーラムから、JBICが"融資決定"を急いでいる印象を受ける。案の定(と言っていいだろう)4月27日の道新には、『国際協力銀行・サハリン2に40億ドル融資/サハリン州知事「内諾受けた」』という記事が、翌28日にはあわてた(オフレコがリークされた故か他の理由によるのかは判らないが)JBICの申し入れによるのだろう、『州知事の「国際協力銀融資」発言・開発意欲アピール/日本側、「勇み足」と困惑』の記事が掲載された。「融資は(漁業者らの)理解を得るのが前提で、現段階で融資を決断できるはずがない」(広報室)とあったが、実際には州知事に対して「(融資は)方針としては決まっているんですが……」くらいの発言はあったのだろう、「現在アリバイ工作中なので、今しばらくは正式発表は待って欲しい……」と。

4月22日のフォーラム(札幌)で質問した。「JBICの説明ややっていることは(私には)サハリンエナジー(SEIC)の代弁にしか聞こえず、JBICとしては"はじめに融資ありき"という大前提で臨んでいるように思われる。1月から4月に至る間にも、現地では先住民による抗議行動が継続しているという報道がされているが、配布資料中の<社会的影響>に関する部分には何の記載もされていない。JBICの考えている環境配慮基準の内容がよく判らないが、国境を越えた人権への配慮は、国としても企業としても不可欠だと考える。先住・少数民族のみならず、現地に生活している人間への配慮がなされることが融資のための条件だと考えるが……?」。JBICの回答は、「このフォーラムの目的は"国境を越えて影響を及ぼす問題"について論議することであり、先住民族の問題を云々する場ではない。だから我国が直接影響を受ける問題――油流出や漁業被害、稀少動物への対応――については論議を重ねていくが、先住民族についてフォーラムでは取り上げない。JBICとしてはそれらのことについても配慮しているので、意見はお寄せ願いたい」というもので、補足として「現 在来日中のサハリン州知事にも、(開発にあたっては)社会・環境問題への配慮をお願いすると伝えている」という趣旨の発言があった。………その結果が、前記州知事の"勇み足"発言なのだから、JBICとSEIC、サハリン州の話し合い内容については、推して知るべしである。

第8回(5/12・東京)と第9回(5/13・札幌)は、SEICからプロジェクト担当取締役デビッド・グリア氏を迎えて行なわれた。

3時間中2時間がグリア氏によるプレゼンテーションに費やされ、フォーラムというよりはスライド入りプレゼンテーションに終始した。前日東京での模様を聞いていたので、流されずポイントだけは質そうとメモの準備もしていたのだが、質問の冒頭、道内の環境保護団体を名乗る人物が、"先住民の権利を守れ"云々を脈絡もなしに延々20分ほども吹きまくり、すっかり嫌気がさしてしまった。フォーラムや集会に多いのだが、何を質し、何を明らかにしたいのかが分からぬままに、意見を吐き出して満足するという人がいる。結局言いっ放しで終わり、時間がなくなるのだ。本人は「やった!」と満足しているのだろうが、迷惑この上ない。

案の定今回も、「通訳しきれない」(同時通訳だった)という理由で、グリア氏がどうでもいいようなことをコメントして終わってしまった。「クソッ!」

グリア氏は「先住民族とは、概ね良好な関係にある。先住民族にも幾つもの団体があり統一されたものではなく、その中の12の団体とSEIC、州政府は会合を重ね、覚書を交わしている」と言った。まさにそのことが問題で、どんな"開発行為"でも、それを行なう側は現地や関係者の分断工作から仕事を始め、開発を進めてきているのだ。現に北海道の新聞でも報道されている先住・少数民族の「プロジェクトが先住民族の土地・伝統に与える影響への、専門家による調査要求」をめぐる抗議運動の継続に対して、SEICの対応や現状、今後の方針を質したかったのだが、叶わなかった。ったく!!

SEICでは今後、影響の考えられる道内各地の漁港・漁民・漁協への説明会を開いていくようだが、ひと通りそれが終わった段階で、融資の決定が発表されるのだろう。そうなる前に、サハリンから先住民を招いて、北海道と東京で現地報告やアピール集会をもちたいと考えつつも、準備作業に時間が作れず、資金の見通しを立てることも困難で、胸を痛めているこの頃である。

グリア氏の言に相違して、先住民を含む現地住民の反対・抗議運動の現状が、5月15日付北海道新聞に大きく掲載されている(ユジノサハリンスク支局・矢崎弘之記者)。

□ これまでの「環境関連フォーラム」の議事録を「国際協力銀行(JBIC)」のHPで読むことができます。http://www.jbic.go.jp/japanese/environ/sahalin/index.php  また、「先住民族の10年News」でも、関連情報を読むことができます。