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ヤイユーカラパーク VOL51 2005.10.30
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麻生太郎 総務大臣/小泉純一郎 総理大臣への抗議・質問状


2005年10月15日、麻生総務大臣が九州国立博物館(福岡県太宰府市)の開館記念式典の祝辞で「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。ほかの国を探してもない……」との発言をしたと報道されました。2001年、平沼赳夫経済産業大臣(当時)と鈴木宗男衆議院議員が同様の発言をして以来の、閣僚による問題発言です。

ポスト小泉の声も聞かれるほど、いまや権力の中枢に身を置く麻生氏の発言は、アイヌ民族のみならず在日の外国人、すべてのマイノリティをも圧殺・抹消しようという明確な意思を感じさせます。

そこで麻生大臣と小泉総理に以下の「抗議・質問状」を送り、そのことを公開しました。


総務大臣 麻生 太郎 様

私たちは、あなたが2005年10月15日福岡県太宰府市であった九州国立博物館・開館記念式典の来賓祝辞で、『(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。ほかの国を探してもない』と発言されたことを報道で知りました。


1986年、当時の中曽根康弘総理大臣が日本国を「単一民族国家」とした発言に対して、国内外から大きな抗議と批判が集まったこと。1991年、渡辺美智雄副総理兼外務大臣(当時)が、1993年には三塚博自民党政調会長(当時)が、同様の「単一民族発言」を続け、その都度世論の批判を受けてきたことは、あなたもご存知のことと思います。

さらに2001年には、平沼赳夫経済産業大臣(当時)と鈴木宗男衆議院議員が同様に「単一民族」発言を行ない、多くの団体や個人から抗議と批判を受けました。

また、1986年に外務省国連局人権難民課が国連に対して行った報告、「本条(B規約27条)との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等の権利を保障された国民としての上記権利の享有を否定されない」を、(社)北海道ウタリ協会などの働きかけによって1991年、「本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していること等から本条にいう少数民族であるとして差し支えない」と報告し直していること。

さらに、1995年3月に設置された五十嵐広三内閣官房長官(当時)の諮問機関「ウタリ対策の在り方に関する有識者懇談会」による答申が1996年4月に出され、それに基づいて1997年4月、『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(いわゆる『アイヌ文化法』)が制定され、同時に『北海道旧土人保護法』が廃止されたこと。

以上についても、1997年当時の閣僚であり現在も閣僚であるあなたは十分認識しているはずと私たちは考えます。


したがって10月15日になされたあなたの同様の発言を、私たちは放置も許容もできません。あなたの発言は、アイヌや在日諸民族の基本的人権を無視し、抹消・圧殺する意図を明らかにしたものであると判断され、指弾されても当然であります。

上記外務省国連局人権難民課報告も『アイヌ文化法』も、その内容において不十分なものであると私たちは考えていますが、そこに書かれている最低限のこと――「民族としてのアイヌの存在」さえ切り捨てたあなたの発言を、私たちは許すことはできません。


私たちはあなたに、次の点について回答することを求めます。

1、 あなたが日本国は一文明、一言語、一文化、一民族と断言した根拠を示すこと。

2、 1997年に制定・施行された『アイヌ文化法』について、あなたはどう考えているか。

3、 現在も継承されているアイヌ語、アイヌ文化について、あなたはどう考えているか。

4、 現在日本国内に存在する多様な文化について、あなたはどう認識しているか?


以上についての回答を、文書で、早急に、下記事務局宛にお送りください。尚、この質問状は公開されていますので、あなたの回答もまた公開される(無回答の場合はそのことを)ことを申し添えておきます。

    2005年10月23日

       『アイヌの女の会』代表  島崎 直美

       『ヤイユーカラの森』代表  計良 智子

         事務局  札幌市南区常盤4条2丁目19−32 (事務局長:計良光範)


内閣総理大臣 小泉 純一郎 様

私たちは、現内閣の閣僚である麻生太郎氏の発言について、内閣の統括者であり彼の任命者であるあなたに、強く抗議をし、質問をいたします。

私たちは、麻生太郎総務大臣が10月15日福岡県太宰府市であった九州国立博物館・開館記念式典の来賓祝辞で、『(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。ほかの国を探してもない』などと発言したことを報道で知りました。

1986年、当時の中曽根康弘総理大臣が日本国を「単一民族国家」とした発言に対して、国内外から大きな抗議と批判が集まったこと。1991年、渡辺美智雄副総理兼外務大臣が、1993年には三塚博自民党政調会長が、同様の「単一民族発言」を続け、その都度世論の批判を受けてきたことは、あなたもご存知のことと思います。

さらに2001年には、平沼赳夫経済産業大臣と鈴木宗男衆議院議員が同様に「単一民族」発言を行ない、多くの団体や個人から抗議と批判を受けました。

また、1986年に外務省国連局人権難民課が国連に対して行った報告、「本条(B規約27条)との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等の権利を保障された国民としての上記権利の享有を否定されない」を、(社)北海道ウタリ協会などの働きかけによって1991年、「本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、これらの人々は、独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していること等から本条にいう少数民族であるとして差し支えない」と報告し直していること。

1995年3月に設置された五十嵐広三内閣官房長官(当時)の諮問機関「ウタリ対策の在り方に関する有識者懇談会」による答申が1996年4月に出され、それに基づいて1997年4月、『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(いわゆる『アイヌ文化法』)が制定され、同時に『北海道旧土人保護法』が廃止されたこと。

以上についても、過去に閣僚を経験され現在は内閣総理大臣の職にあるあなたは、十分認識しているはずと私たちは考えます。

以上を踏まえたうえで、私たちは2001年7月に当時閣僚であった平沼赳夫氏の発言について、あなたの責任を糾すとともに幾つかの質問をいたしました。しかしそれに対してあなたからは何の回答もなく、その結果が今回の麻生発言に至ったと考えざるを得ません。

私たちは、10月15日の講演における麻生太郎氏の発言を放置・許容することはできません。彼の発言は、アイヌや在日諸民族の基本的人権を無視し、抹消、圧殺する意図を明らかにしたものであると判断され、指弾されても当然であります。

上記外務省国連局人権難民課報告も『アイヌ文化法』も、その内容において不十分なものであると私たちは考えていますが、そこに書かれている最低限のこと――「民族としてのアイヌの存在」さえ切り捨てた彼の発言を、私たちは許すことはできませんし、彼を閣僚に任命したあなたの責任を追及しなければなりません。


私たちはあなたに、次の点について求めます。

1.日本国における「民族」「文化」についての、あなたの見解を明らかにすること。

2.上記麻生発言に対する、あなたの見解を明らかにすること。2.上記平沼発言に対する、あなたの見解。

3.麻生太郎総務大臣の解任。


以上についての回答を、文書で、早急に、下記事務局宛にお送りください。尚、この質問状は公開されていますので、あなたの回答もまた公開される(無回答の場合はそのことを)ことを申し添えておきます。

    2005年10月23日   <署名は麻生宛と同じ>