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まず、話の初めで、指輪の由来(第二期末のサウロンとの戦いの終盤)が、大規模な戦闘シーンを交えて(凄いスケール!)描かれ、よい。
見渡す限りのモルドールの荒野に、西方軍と冥王軍が入り乱れてのとてつもない規模の戦闘シーン、イシルデュアが冥王を倒し、指輪を切り取るところ、また、これは中盤(エルロンドの回想シーン)ですが、エルロンドがイシルデュアに、指輪を、オロドルインの滅びの亀裂に投げ込むよう要請する所、なども描かれていました。 |
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細かい場面描写が抜群である。以下、気付いた点を書く。
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最初の画面、ホビット庄のホビット達
魔法使いにしかめっつらをし、子供たちはガンダルフに花火をせがみ、花火を見て喜び、お父ちゃんも花火を見て喜んで、おかあちゃんにしかめっ面をされる。ガンダルフの訪問(ドアを杖で叩く)に、”親戚の訪問お断り!”とドアの中から叫ぶビルボ。ガンダルフだと気付いて、もてなしに走り回る(”チキンパイにベリーパイ、酒がいいですか、茶がいいですか?”)。ガンダルフは、小さな丘の下の家の間仕切りを腰をかがめてくぐり、シャンデリアに頭をぶつける。
ビルボとガンダルフが煙草をふかし、ビルボが吐き出した煙の輪っかに、ガンダルフが煙を吐き出して帆船の形にし、ビルボの輪っかに通したり。 |
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ビルボの誕生会でのガンダルフの花火も、特殊効果満点で見事でよい。 |
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ピピンのいたずら、おとぼけ、おっちょこちょいぶり、サムのちょっとぼけぶり。 |
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裂け谷で、ナルシル(砕けた剣)が映っていた。 |
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エルフ語が話されていた。
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アラゴルンとアルウェンが、実際エルフ語を話してました。その時には、英語の字幕がついたりします(この映画は字幕ス―パーですが)。
私はエルフ語について詳しくないので、それが、トールキンが創作した通りのエルフ語であるかどうかは判りませんでした。トールキン自身が聞いたら、どう思うかな。
でも、他の部分の出来からして、おそらくちゃんと話しているんではないかと思う。 |
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また、後述しますが、フロドを裂け谷までの最後の道中で迎えに行くのが、原作と違ってアルウェンなのですが、乗馬の名は一緒で、”急げ、アスファロス”という意味の、
”ノロ、リム、ノロ、リム、アスファロス”というセリフを言っていた(アスファロスは馬の名)。 |
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それと、一行がロリエンを去るシーンで、ガラドリエルが”ナマ(ア)リエ”(エルフ語でさよならの意)と言っていた。これも、特に英語の字幕は出ていなかった(日本語の字幕はあったけど)。 |
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話のポイントになる話がちゃんと入っていた。
具体的には、モリアの三叉路でガンダルフが進む方向を迷っている時、フロドと話したことだ。
フロドが指輪を持っていくことについて悩み、ゴラム(原作ではゴクリ)が自分たちについて来ているとガンダルフに告げられた時、”ビルボがあの折に、あの情けない奴を刺し殺してくれていたら良かったのに”と言い、ガンダルフが”ビルボはその”情け”で随分救われている。ゴラムも、まだ果たすべき役割があるのだ。命の生き死には、誰も定める権利を持たない”という、この話ではとても大事なことを言う。それがちゃんと入っていた。
(実はこの挿話は、原作では、ホビット庄のフロドの家で、ガンダルフがフロドの指輪を、冥王の指輪であることを確かめた時のことになっている。まあ、ゴラムが出てくるのがこの場面なので、しょうがないと思うが。) |
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敵方の描き方がよい。
黒の乗り手の瘴気漂うような様子、オーク、サルーマンがウルク・ハイを作り出す様子、ウルク・ハイの粘液にまみれたような、いかにも人造生命と言ったような様子。
そしてなにより、サウロン、”瞼なき目”。また、モリアのトロールやバルログ(牛を思わせる角を持った、炎の中の、姿があいまいな恐ろしい巨人、という感じで描かれ、ちゃんと炎の鞭でガンダルフを捕らえていた)もよい。 |
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建物、文字等の描写が、原作に基づいて良く描けている。
ビルボの執筆中の旅行記、モリアの入り口の図、裂け谷、ロスロリエン(これら2つは、ちょっと典型的な妖精物語の影響があったようで、私のイメージとは少し違ったが(特にロリエン)。)、イセンガルド(アイゼンガルド)。ガンダルフが調べていた、指輪に関する書物(指輪に書かれた火文字が書かれている)。指輪の上の火文字。
そして、圧巻(でもないかもだけど)は、カザド=デュムの大広間。天井が見えないほど高い広間に、どちらかというとシンプルな柱が、闇の中にはるかに消えるほど見渡す限り並んでいる。凄かった。
また、アルゴナスの門(大河アンデュインの両岸にそそり立つ、古代の王の石像。ゴンドールの国境を示す。)も、よかった。 |
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指輪に関する描写が良い。
指輪を嵌めた時の幽冥の淵をさまよう描写、”瞼なき目(炎に囲まれた虹彩の周りに、やがて巨大な目が見える)”の迫力、指輪に誘惑された登場人物達(ビルボ、ボロミア、ガラドリエル)の豹変や葛藤の様子、などが迫力をもって描かれている。 |
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ガラドリエルとガンダルフの秘められた力の描写が良くされていた。
ビルボが指輪を手放すシーンで、指輪の魔力の為、最後の最後で手放せなくなっているビルボに、ガンダルフが真の姿を垣間見せるシーンがある。灰色の巨大な影を背負い、畏怖すべき存在と言う感じ(一瞬)。よかった。
ガラドリエルに関しても、フロドに指輪を貰って欲しいと言われ、誘惑と戦うシーンで、彼女の力と恐ろしさが示されていた。ただ、これも後でも書くが、どうも”不死の化け物”じみて描かれた面が強い気がして、そこんとこはちょっといただけない。 |
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セリフが(日本語に訳されていないところも)細部までかなりきっちりしていた。
たとえば、字幕では表示されなかったが、ギムリが紹介される時、”グローインの息子”と紹介されていた。また、バルログに対してのガンダルフの言葉、”わしは聖なる炎、アノールの炎の使い手じゃ”という言葉(これは字幕に表れていた)の他に、”暗き火、ウデュンの炎は貴様の助けにならぬ”というセリフも言っていたように思う(”ウデュン”のセリフを聞いた。字幕には出ていなかったけど)。
また、ガンダルフが深淵に落ちる寸前、原作では”急げ、馬鹿者共”というが、字幕には”急げ”のみ。でも、”馬鹿者共”(foolなんとか)は言っていた。
また、フロドに指輪を差し出され、試練に通った際、”わらわは試練に通りましたね。わらわは小さくなることにしましょう。西へ去って、ガラドリエルのままでいましょう。”のセリフが(ほとんどこのまま)使われていた。
(ただし、上に書いたのは原作のセリフで、字幕とはちょっと違う。(字幕のは憶えてない。)) |
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ボロミアとピピン達の仲良いところが描かれていた。
原作ではなかったかもしれないが、ボロミアの豪放磊落で優しい人柄を示していていいな、と思った。 |
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内容がかなり原作に忠実である(細部など。但し、(3)に書くもの以外)。
例えば(というか、それが一番気に入ったのだが)、ボロミアがピピン達を助けようとして討ち死にするシーンで、助けを呼ぶためにちゃんと角笛を吹き、また、殺される時、原作の通り、角笛が縦に真っ二つに割れていた。 |