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「Occult bacteremia(潜在性菌血症)の7例」

第17回日本小児科医会セミナー(平成18年6月10日)で発表したもの

要旨


最近2年間で肺炎球菌のOccult bacteremia(潜在性菌血症)を7例経験しました。
PSSP:5例、PISP:1例、PRSP:1例でした。
4例では血液培養と同時に上咽頭培養も行い、2例で肺炎球菌が検出されました。
上咽頭培養でPSSPが検出された症例では血液培養でもPSSPが検出され、上咽頭培養でPISPが検出された症例では血液培養でもPISPが検出されました。
上咽頭の肺炎球菌が血液に侵入した可能性が高いと思われました。
最近6ヵ月におの小児科で行った上咽頭培養で、
肺炎球菌はPSSP:28%、PISP:59%、PRSP:13%
インフルエンザ菌はBLNAS:31%、LBLNAR:25%、BLNAR:34%、BLPACR:9%と
耐性菌の割合が高く、今後、難治化すると思われます。
抗菌薬の適正使用に努め、肺炎球菌ワクチンとHibワクチンを定期接種にする必要があると考えられます。

目的


小児科開業医でも日常的にOccult bacteremiaに遭遇します。
Occult bacteremiaの症例と、上咽頭培養から検出された肺炎球菌とインフルエンザ菌について呈示します。

血液培養を行うようにした理由


高熱で白血球数が増加している症例に、外来で培養も行わず、抗菌薬を投与してよいか、迷うことがよくありました。
平成16年4月に日本小児科学会雑誌に掲載された「小児科外来におけるoccult bacteremiaの前方視的調査」を読んで、Occult bacteremiaを知りました。
また、エタノールで消毒してルート確保した所から血液培養を採取して良いことがわかり、外来で血液培養を行い、抗生物質のDIVを行うことにしました。

血液培養の対象と結果

平成16年5月から平成18年4月までの間、に3ヶ月から36ヶ月までの乳幼児で39℃以上の発熱があり、白血球数が15000μ/l以上であった49例に、56回血液培養を行いました。
7例の血液培養から肺炎球菌が検出されました。


症例:1
 1才 男児
 平成17年2月16日 午前3時38.5℃の発熱 午前6時39.8℃
 正午に来院(発熱後9時間)
 WBC 25200μ/l(好中球84%),CRP 1.7mg/dl
 CTRXをDIV
 16日夜に解熱
 17日朝 WBC 16100μ/l,CRP 10.3mg/dl
 血液培養でPSSP、上咽頭培養からもPSSPを検出

症例:2
 1才3ヵ月 女児
 平成17年2月18日 午後3時に39.5℃の発熱
 午後4時に来院(発熱後1時間)
 WBC 20200 μ/l(好中球81%),CRP 0.4mg/dl
 CTRXをDIV
 2月19日朝に解熱 WBC 17800μ/l, CRP 8.1mg/dl
 血液培養でPSSPを検出

症例:3
 2才 男児
 平成17年10月26日 午後10時39.4℃の発熱
 27日午前10時に来院(発熱後12時間)
 WBC 26000μ/l(好中球85%),CRP 5.4mg/dl
 CTRXをDIV
 27日夜に解熱
 28日朝 WBC26500μ/l, CRP 10.3mg/dl
 血液培養でPSSPを検出

症例:4
 1才3ヵ月 男児
 平成17年11月9日 午後2時39.6℃の発熱
 午後5時30分に来院(発熱後3時間半)
 WBC 33800μ/l(好中球80%),CRP 0.1mg/dl
 CTRXをDIV
 10日朝に解熱、WBC 39200μ/l,CRP 10.4mg/dl
 血液培養でPSSPを検出

症例:5
 1才3ヵ月 男児
 平成18年1月9日 午後6時頃38℃の発熱
 10日昼には39℃に上昇
 10日午後6時に来院(発熱後12時間)
 WBC 31000μ/l(好中球71%),CRP 7.6mg/dl
 CTRXをDIV
 10日夜に解熱
 11日WBC 20500μl,CRP 7.4mg/dl
 血液培養でPISPを検出、上咽頭培養もPISPを検出

症例:6
 2才1ヵ月 女児
 平成18年3月3日 午後4時39℃の発熱
 午後6時30分来院(発熱後2時間半)
 WBC 25300μ/l,CRP 0.5mg/dl
 CTRXをDIV
 3月4日朝に解熱
 WBC 19000μ/l,CRP 7.0mg/dl
 血液培養でPSSPを検出、上咽頭培養では検出されず

症例:7
 1才6ヵ月 男児
 平成18年3月30日 午後3時より39℃の発熱
 午後5時30分に来院(発熱後2時間半)
 WBC 33700μ/l(好中球77%),CRP 1.1mg/dl
 CTRXをDIV
 午後9時に解熱
 3月31日朝WBC 26100μ/l,CRP 6mg/dl
 血液培養でPRSPを検出、上咽頭培養では検出されず

症例のまとめ

  1. 発熱後1-3時間半で来院した5例のCRPはほとんど上昇していませんでした。
    発熱後9時間でも1.7mg/dlでした。

  2. 血液培養で検出されたのはPSSP5例,PISP1例、PRSP1例でした。
    血液培養を行った症例の約12%で肺炎球菌が検出されました。

  3. 血液培養と同時に上咽頭培養を採取した4例中、2例の上咽頭培養で肺炎球菌が検出されました。
    症例1では血液培養と上咽頭培養ともにPSSP、症例5では血液培養と上咽頭培養ともにPISPが検出されました。
    上咽頭の肺炎球菌が血液中に侵入した可能性があると思われました。

上咽頭培養で検出された肺炎球菌とインフルエンザ菌

おの小児科で、平成17年10月から平成18年4月までに、46例に50回の上咽頭培養を行いました。
(5ヵ月から4才3ヵ月、平均1才5ヵ月)


肺炎球菌は38例(83%)から検出され
PSSP:11例、PISP:22例(23回)、PRSP:5例で
約70%がペニシリン耐性肺炎球菌でした。
インフルエンザ菌は31例(67%)から検出され
BLNAS:9例(10回)、LBLNAR:8例、BLBAR:11例、BLPACR:3例で
約69%が耐性菌でした。

結語

Occult bacteremiaを初診時に診断することは困難です。
上咽頭培養では耐性菌が多数を占め、今後は耐性菌による重症感染症が増加すると思われます。
抗菌薬の適正使用に努める必要があると考えられます。
また、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチンを定期接種にする必要があると思われます。

長崎県小児科医会  小野 靖彦  



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