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「便培養からYersinia enterocoliticaが検出された12症例の検討」

小野 靖彦:おの小児科医院
大西 真 :国立感染症研究所細菌第1部

第26回日本外来小児科学会年次集会(平成28年8月27日高松)で発表した内容

はじめに


便培養からYersinia enterocolitica(以下Y.ent.と略す)が検出された症例の臨床像と血清型を報告する。

対象と方法


血便症例、発熱と腹痛のある下痢症例、腹部エコー所見(結腸壁の粘膜肥厚)から細菌性腸炎を疑った症例に便培養を行った。

便培養はBMLに依頼した。

結果


2014年5月から2016年4月までの2年間に、便培養で12例からY.ent.が検出された。

1例はCampyobacter jejuniが同時に検出。
1例はロタウイルス抗原陽性。


性別:男児6例、女児6例
年齢:2歳~9歳(平均5歳)


※姉妹例が1組2例、いとこ例が1組2例

来院時の症状


38℃以上の発熱9例(75%)、腹痛8例(67%)
下痢7例(58%)、軟便2例(17%)、嘔吐1例



  • 発熱は38.5℃以上が8例/9例
  • 腹痛は3歳以上の9例中8例
  • 下痢・軟便(-)の3例
    発熱・腹痛2例、発熱1例
    第1~2病日に来院
  • 嘔吐の症例
    ロタウイルス抗原(+)

  • 来院病日
    第1病日3例、第2病日8例、第4病日1例
  • 発症月
    4月2例、5月1例、7月4例、8月2例、11月2例、12月1例
    夏期に多い傾向があった。


発熱がみられた9例のWBCとCRP

WBC 8,200~21,700/μl (平均15,900/μl)
CRP 0.8~11.1mg/dl  (平均3.7mg/dl)


WBC 15,000/μl以上は6例
CRP 3mg/dl以上は5例

  1. 全例に抗生物質を使用
    6例にCTRXの点滴静注

  2. 薬剤感受性
    全例が第3世代セフェムとLVFXに感受性
    FOMは感受性3例、耐性9例




まとめ

  1. 血清型はO:3が9例,O:5,O:8,O:9 が各1例であった。
    ヒト患者由来株は、血清型O:3、O:5、O:8、O:9、O:12が多く、わが国ではO:3が最も多いといわれている。

  2. 発症は7月が最も多く、夏期に多い傾向がみられた。

  3. 臨床症状は、発熱、下痢・軟便、腹痛で、腹痛は3歳以上の症例でみられた。
    嘔吐はロタウイルスも検出された1例のみであった。

  4. Y.ent.は自然治癒する症例が多いといわれているが、今回の12例は、11例が第2病日までに発熱(9例)と腹痛(8例)のために受診し、 発熱した9例中8例でWBCとCRPの上昇がみられ、全例に抗生物質を使用していた。

長崎県小児科医会  小野 靖彦  



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