魚菜王国いわて

人口問題

普通、環境問題といえば人口問題が最初にくることはない。
しかし、多すぎる人口というのは、環境に大きな負荷をかけ、取り返しのつかないことになる。
そして、もう解決しようがないのが人口問題である。
人口問題を無理に解決しようとすれば、ほかの環境問題を悪化させることも予想される。

恐らくここを読めば私を冷たい人だと思うだろう。
しかし、これが現実である。
世界の人権主義者は、偽善者か、あるいはワールドウォッチ研究所の人々のような方々である。



世界の人口問題
二年前、すでに世界人口は、60億人を突破している。
今、最も危惧されている国はインドであり、インドは、2050年予測で15億人となり、中国と並ぶという。
この国では、子供の約53パーセントが栄養不足と体重不足の状態にあるのに、政府は、財源の驚くべき割合を核大国になるための費用を注ぎ込んでいる。
人口増加が激しいのは、やはり第三世界が多く、エチオピア、パキスタン、ナイジェリアなども深刻だ。
中国、アメリカも増加するのは確実である。
アメリカなどは、自国だけに有利に経済を展開するから、人口問題などという認識はない。

中国では少子化政策で人口増加率は減少し、表面上、問題にはしていないが、確実に食糧輸入国になる(もうなっている?)。
これが新たな環境問題の火種となる。
今、中国は世界中の投資家の魅力ある市場となっている。
日本の二十分の一の人件費で、急成長している。
これによって、地方の若者は、やはり農業を捨て、より高収益でハイテク化された産業を選び始めた。
さらに、単位土地あたり、そして単位水あたりの生産性は、よりハイテクな産業に比べると、農業は比較にならないほど悪い。
したがって、農地は工業用地、農業用水は工業用水へと変わっていく。
結果として、農作物は不足することになる。
世界最高の人口を抱える中国が食糧輸入国になるということは、世界的に見れば、さらに食糧不足になるということだ。
中国で起こっている、同じような産業の転換が、途上国で次から次へと進めば、状況はひどいものになるであろう。

1998年の穀物消費量は、世界一人当たり319キロである。
インド人のそれは、平均で200キロだそうで、これは生存ぎりぎりの消費量だという。
一般に発展途上国を中心に栄養摂取量は低く、世界で毎日19,000人の子供が、栄養不良とそれに伴う病気で死んでいる。
他方、先進国は過食で太り過ぎの人口が増え、それに伴う言わば”贅沢病”が増え、新たな健康保険の負担が増えている。
アメリカでは、9,700万人の成人が太り過ぎで、これは成人人口の55%にあたる。
ロシアは57%、イギリスが51%で、これがワースト3。
アメリカの1998年の穀物消費量は、一人当たり900キロでインドの4.5倍であった。

今世紀にはこのままいけば、人口100億人に達するという。
100億人がアメリカ人と同じ量の穀物を食べるとしたら、今の生産量で地球が4つ以上必要である。
これは極端な例えだが、現在の穀物消費量と人口の掛け算から出された全穀物消費量は、319×60億で1,914億キロで、将来人口の100億でこれを割れば、一人平均の穀物消費量は191キロとなる。
均等に食べ物を世界中で分け合っても、生存分すら足りなくなる。

食糧生産を増やせば問題ないのだが、もう今までのようには生産量は伸びないと言われる。
バイオテクノロジーがいくら進んでも、植物の成長は、すでに生理学的限界に達しているようだ。
つまり、養分の効率的利用の限界点に達している。
さらに土地利用も飼料作物への転換もあり、純粋に人間の食べるだけの穀物に対する土地利用は減っている。
また先ほどあげた中国の産業転換の例でもわかるとおり、換金経済の弊害が世界中で出るものと予想される。

食糧不足がもっとも深刻になる条件がある。
それは水が絶対的に足りないという悲惨な事実だ。

人口急増地帯インドでは、主要穀倉地帯で地下水が毎年0.5〜0.7m低下している。
現在世界最大の穀物生産国の中国も、40%を生産する華北で一年に1〜1.5mずつ地下水位が低下している。
主要穀物輸出国アメリカでも、世界最大の地下水系で、毎年膨大な水量が減少し続けている。

今でさえこの状況なのに、どうやって穀物生産量を増やせというのだろうか?
私は、もう第三世界の人口問題は解決できないと思う。
人権を前面に出し、世界中に干渉するアメリカが、世界の富を独占しようとしている現実を目の当たりにして、「世界の飢餓を救え!」などと私には言うことはできない。
「日本はアメリカの属国である(副島隆彦)」。
あなたならどうしますか?
世界中の人がすべて、問題解決のためにあらゆる手段を尽くして、初めて解決するかもしれないものなのに、あなたの娯楽費をすべて、第三世界の食糧のために寄付できますか?


私は以前、ごくわずかな金をユニセフに寄付したことがある。
突然ダイレクトメールが届いて。
「募金10万円で浅井戸用手押しポンプ一式を6セット贈ることができます」とか書いてあるもの。
「地下水位が低下しているのに、こんなものでいいのだろうか?」
「これよりも重要なもっとすべきことがあるはずだ。」
「その場しのぎは無駄だ。」
心の中はこんなつぶやきでいっぱいである。
学生時代、友人のY君が「世界に人口問題を解決するのは何よりも先にコンドームを無料配布することだ」と言った。
15年も前の話だが、実に的を得ている。
そして教育である。
その前に教育内容を頭に入れるため、食糧という名のエネルギーが必要であった。
しかし、そのエネルギー源を減少させ飢餓の原因を作ったのも、実は、天下のアメリカ合衆国である。



世界の飢餓はアグリビジネスの誕生に由来する(引用 天笠啓祐著「遺伝子組み換え食品」
本格的なアグリビジネスは、19世紀末、アメリカ資本が中南米で巨大な農園を経営して始まった。
このときは砂糖やバナナが主役であったが、穀物を支配し始めたのは20世紀に入ってからである。
アメリカ国内の余剰穀物は、初めは政府主導で海外へのはけ口を求めて援助されていた。
1954年、PL480号農業貿易促進援助法が成立し、この後は海外援助の主役は、政府から穀物メジャーへと移った。
援助される側からしてみれば、低利で、長期返済、しかも現地通貨での支払いができたので、アメリカの農産物を買うことができた。
しかし、これが災い。
援助された国の食生活は変化してしまい、アメリカへの食糧依存という体質を生み出してしまった。

日本での学校給食は、なぜパンなのか?
それはPL480号の成立した同じ年に学校給食法が成立し、コッペパンと脱脂粉乳を加えた給食が全国に広がった。
この1954年、55年の2年間で援助は終わるのだが、パン食は定着してしまい、アメリカの安い小麦を買うシステムがこのとき作られた。
その影響で日本農業の一つの柱であった裏作が崩壊してしまった。

第二次大戦中にロックフェラー財団が「緑の革命」なるものを始めた。
高収量品種の開発である。
現在の農家が、ただの作物を作るロボットと化した原因がここにある。
彼らはこの種子を支配した。
そして高収量品種であるがゆえ、食糧生産の方法も大規模灌漑へと変えてしまった。
大型機械や大量の化学肥料や農薬が必要になり、小規模ほど没落していくという金がかかる農業へと変質、大地主に有利となる。
この大規模化に伴う危険農薬の大量散布で、環境ホルモンという新たな環境問題も作ってしまうことになる。

この「緑の革命」で開発された高収量品種が第三世界に入ると、その地域の旧来からの作物は駆逐され、多種類のものを少しずつ作る伝統的農業は崩壊する。
そして、単一種のものを多量に作る大規模化農業だけが生き残った。
どこの政府も同じようなもので、政府は財力のあるものと組む。
決して弱者とは組まず、弱者は利用されるだけである。

第三世界の政府は、大地主や先進国のアグリビジネスと組んで、今度は換金できる作物つまり輸出用作物を作り始めたのだ。
換金作物をその地域の人が買えるわけがない。
また輸出した換金作物でドルを稼ぎ、そのドルで小麦などの穀物をアメリカから買うというパターンになってしまった。
そんなことをしていれば当然債務は累積し、もう穀物を輸入することも困難になる。
その地域の旧来からの農業はすでに崩壊しているから、食べ物がない。
第三世界の飢餓はこうやって発生したのだ。

一度飢餓が始まれば、教育もクソもない。
子供を作るなといっても性欲はあるだろうし、性教育する環境すら作れない。
次から次へと子供は生まれ、死んでいく。
「ここが変だよ、日本人」とかいう番組でテリー伊藤が言っていた。
「子供が死んでいくから、また子供を作るんだよ」と。
それはウソだ。
死んでいく子供を見て、また子供を作る親がどこにいる?
性欲が子供を作るのだ!

「自殺種子」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
この種子は巧妙な遺伝子組み換え技術を用いて作られた。
種子を殺さず、種子が発芽する時点で自殺するように毒素を蓄積させるのだという。
これを世界最大の綿の種子企業デルタ&パインランド社(アメリカ)とアメリカ農務省と共同で「ワタ」で開発された。
これはターミネーター種子と呼ばれるが、この技術は現在、デルタ&パインランド社を買収したモンサント社(米)が所有している。
モンサント社は遺伝子組み換え作物を支配している4つの企業の一つで、この技術を利用して種子支配を完全なものにしようとしている。
当然、世界中から激しい非難を浴びている。

このように農業は企業に支配されている。
日本を見てもわかるだろう。
農家は農協に支配されている。
農協組織を維持するために農家は働いているのだ。
「農家のための農協」は、いつの間にか変質してしまった。

畜産農家ではあるが、一つ端的な例をあげる。
これは1998年に発行された「別冊宝島M 日本最後の不良債権」からの引用である。
農協のあり方を考えている岩手の弁護士千田實さんを、ジャーナリスト柳原滋雄さんが取材したものだが、この千田さんは、当時30もの訴訟を手がけていた。
畜産農家は、子牛や子豚を買って育てて、市場に出す。
その収益でご飯を食うわけだが、子牛や子豚は農協を通して仕入れ、餌も農協から買う。
そして、成牛、成豚も農協を通して売る。
すべての取引で、農協が価格を決めている。
これでは農家は単なる農協の作業員でしかない。
驚くことなかれ、なんとこれで生じた負債は農家がもつことになるというのだ。
平均で2億ぐらいだという。
それで千田さんは、農家の味方になって訴訟を助けている。
    
農業を単なるビジネスと捉えるならば、食糧不足という問題はもう解決しない。
世界の人口問題は、さっさとあきらめたほうが良い。

仮に何事も食糧分配がうまくいって飢餓がなくなったら、今度は先進国並の生活を第三世界は目指すだろう。
そこでどうやっても解決できないエネルギー問題、資源問題が出てくる。
発展していく中で先進国が歩んできた道を同じように第三世界が歩むなら、同じような環境問題が続出し、地球環境は今よりもっと悪くなるのは確実だ。



日本の人口問題
日本には人口問題がないと思われるかもしれないが、実はある。
指摘すれば、なるほどと思うだろう。
日本の人口問題は雇用問題である。
ここでは「成長の限界」を前提として述べる。
成長に限界がないというのなら、この話はナンセンスであるから。

さまざまな科学の発展で社会生活は大変便利になった。
戦後の進歩は目覚しいものがある。
しかし、今、便利さが職場から人間を必要としなくなった。
手作業に重きを置く産業の雇用は、それほど減ることはない。
むしろ雇用される側のほうが作業の楽な仕事を求めて高次産業へと移動し、漁業のようなKのたくさんつく産業は衰退していく。
その労働人口の移動した産業は、作業を機械化し、ここで雇用危機を迎えるはずなのだが、日本の場合、超高度成長期が重なった。
それゆえ、雇用危機は、表面上、現れなかったのである。
しかし、機械を扱えない者は失業するか、再びローテク産業へと戻ることとなる。
その後、どんどんロボットは優秀になり、あらゆる面において人間を上回るようになった。
さらに、情報化社会到来で、事務までほとんど機械がやるようになる。
今はどう見ても成長の限界点を過ぎており、この状況で雇用危機は深刻である。

効率的な大企業などは、不況を理由に、労働者の首を切りやすい。
リストラを断行し、グローバル市場で生き残りをかけるために。
すでに指摘したが、あまりに高騰した賃金のせいで、周辺諸国との賃金格差が生じ、産業空洞化を招いたことも雇用危機の原因となっている。
欧米からの価値観の移入がこれを招いたのだ。
すでに日本人の価値観は単一化されつつあり、社会の動きを見れば、常に合併、大規模化が普通となっている。
これは更なる効率化を目指すものであり、更なる失業率の悪化につながる。

本当に雇用を考えるなら、非効率な産業に政府は投資すべきなのだが、効率化することに予算を割こうとする。
政府は実に変な金の使い方をしているのである。
なぜ、雇用不足が深刻なのに少子化対策に金を使うのか?
職がないのに人口を増やしても、貧困を増やすだけだ。

人口の減少は、地球的視点では、最も好ましい現象だ。
「人口が減れば、国は衰退する」という人間は、「小さな政府」を知らないのだ。
こういう人に限って従来の利益誘導を肯定し、そのツケを後の世代に平気で残そうとする。
森内閣のIT化バカのおかげで通信産業の一人勝ち。
しかし、パソコン業界、半導体業界は不況である。
確かIT化が雇用創出になると言っていたが、数字は逆になってしまった。
通信産業といえど所詮手数料産業であり、いずれ、コンピューターが全部仕事をする時代が来るだろう。

仕事はなくなる。
人口が多すぎる。


日本の人口問題を雇用の観点から見ると、アメリカのグローバル資本がアグリビジネスで第三世界の飢餓を産んだ構造によく似ている。
グローバル経済は悲惨だ。



環境問題

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