魚菜王国いわて

大中まき網漁業

ハイテク機器を用いて魚群を発見し、根こそぎ獲ってしまうという点でいえば、もっとも効率のよい(水産庁いわく)漁業がまき網漁業である。
八戸は、まき網漁業の基地であり、そこに行けば、彼らをみることができる。
休みの日の夜に八戸の館鼻漁港に行くと、省エネどころか、ガンガン電気を灯している。
あれが、水産庁のいう効率的な産業なのだ。
彼らは、サバやイワシを取り過ぎ、資源をひどく減少させた。
それゆえ、倒産した漁業会社も少なくない。
もはや他の魚種を獲らないと、彼らは事業を継続できなくなってしまった。
その矛先がスルメイカに向けられ、八戸地区で金をばらまくという手法で、スルメイカの漁獲実績を作ったのだ。

八戸沖合いはサバの好漁場であり、かつ、スルメイカの好漁場である。
その年によって三陸沿岸一帯がすべて好漁場となることもあるが、平均すれば八戸沖合いがもっとも良い漁場だ。
そして、基地が八戸であるから、彼らは水揚げの何割かを八戸地元の漁民にばらまいた。
それもイカ釣り漁業だけじゃなく、ただ船をつないでいるだけの偽漁師にも。
岩手から廃船になってもおかしくない船を持っていき、それでイカの補償金をまき網漁業からもらっている。

関係ない漁業者にまで金をばらまくことによって、その行為は市民権を得、八戸では普通のことになってしまった。

もし、イカ釣り漁業者だけに金をばらまこうとしても、恐らくは拒否されたであろう。

全国の小型イカ釣り漁業者はこのことを怒り、今でも、八戸のイカ釣り漁業者は、その金を甘んじて受け取った、ということで悪者にされている。
なぜなら、スルメイカは全国を回遊するからであり、八戸沖合いにずっといるわけではない。

彼らが1日にスルメイカを漁獲する量は、1,000トンを超える日はザラである。
1,000トンという数字は、八戸の小型イカ釣船が盛漁期に獲る量の1週間から10日分にあたる。
回遊資源量が減ってきたときに、1,000トン漁獲されると、釣り漁業は商売ならない。
その上、沖合い底曳き網も、何百トンも漁獲するから、釣り漁業へのしわ寄せは相当のものとなる。

ここにおもしろい資料がある。
大中まき網漁業がスルメイカを混獲と称して獲っていたのはかなり以前からだが、スルメイカのTAC導入の直前、平成8年は41,536トンの漁獲である。
しかしそれ以前、かなり獲っていたにもかかわらず、平成6年、7年ともたったの2トン、それ以前はすべて0トンである。
TAC以前は、公にはスルメイカは獲ってはいなかったのだ。
それがTACという制度の登場に合わせ、その権益確保のため、平成8年にデータとして水揚げを残した。
それ以前の水揚げは伏せていた、ということは、ズバリ密漁である。
これは、水産庁ぐるみの行為である、としても差し支えないだろう。

乱獲による資源の減少を反省せずに、別の魚種、漁業に圧力を加えているまき網漁業を、なぜ、水産庁は、存続させるのであろう。
すでに魚類加工品は海外からたくさん輸入されている時代に、まき網漁業が日本の食糧を賄っているとはいい難い。
乱獲まき網漁業は、なくてもよい漁業なのだ。



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