魚菜王国いわて

HACCP

水産物の取り扱いにおいて、HACCP(ハサップ、ハシップ)という横文字が頻繁に使われるようになりました。
HACCPとは食品衛生管理システムです。
このシステムは、元々、米国で宇宙食の安全性を確保するために開発されました。
HACCP以前は、出来上がった製品の一部を検査することにより、その安全性を調べていましたが、HACCPは、原材料から加工・包装・出荷・消費に至るまでのすべての段階で、衛生管理する方式です。
魚市場に水揚げする段階までの衛生管理が、HACCPにおける漁業者の責任と言えます。

今のところ、このHACCP基準を満たすことは強制ではありませんが、地方ごとの漁協、市場、あるいは魚種ごとにHACCPを導入しています。
ちなみに、今、私が獲っているイサダは、HACCP基準を満たしていません(満たせっていうほうが無理です)。
地方によっては、地域HACCPと称して実践しているところがあります。
代表的なものが、北海道の標津町のもので、標津町地域HACCPで紹介してあります。

まあ、そんなに厳格に衛生管理されているわけではありませんよ。
とにかく魚の鮮度を最優先にし、衛生管理については、はっきり言えば、必要最小限のことはしっかり守りましょう、ということです。
衛生管理を厳格にするとなると、そりゃあキリがありませんから。
ちなみに、標津町の地域HACCPは、平成11年からとなっていますが、定置網漁船の船倉の水温管理なんかは、宮古魚市場管内の定置網漁船のほうが取り組みが早く、そんなハイカラな名前は誰も言わなかったし、HACCPという言葉を知らなかっただけだと思います。
こちらとしては、鮮度維持というごく普通の要求に答えて取り組んだものなのです。
標津漁協のHACCPって何だ?って、「水産新聞」のその記事を読んだら「な〜んだ、そんなこと、こっちではずっと前からやっているよ」って思ったことを記憶しています。

もちろん、今現在、宮古魚市場もHACCP方式の衛生管理魚市場ですし、県内各魚市場もそうだと思います。
床に直接魚を置いてはダメ、タバコもダメ、市場の入り口には殺菌水の入った靴洗い用の小さいプールを設けるとか、いろいろな規則があります。
HACCPという横文字にすると、ホント大げさに聞こえますが、最低限の鮮度維持、衛生管理のルールなんです。
こんなもの、本当は常識の範囲内なんですけど。

で、今後はこれらをさらに極めようという取り組みが出てくるかもしれません。
特に衛生管理の方で。
陸上では鳥インフルエンザなどで、いろいろ騒ぎが大きくなっていますが、微生物や細菌までも管理しようとするとなると、漁業では、はっきりいって無理です。
もともと人間の体には微生物がたくさん付いているでしょうし、魚だって鮭などは魚の表面にはたくさんの虫だって付いてます。
また、干物を見てください。
魚の干物って美味しいですよね。
あれ、衛生管理基準を厳しくすれば、全部食べることはできません。
新巻鮭なんてもうダメでしょう。
あれ?そうなると干し昆布とか、海苔とかも?
宮古湾の養殖のカキについても、生食用に滅菌処理したのものは美味しくないですし、滅菌処理しない加工用を生で食べたほうがずっとうまい、ってことも以前書きました(「韓国産混入の宮城産カキ」参照)。
衛生管理の基準を、ただ厳しくすればいい、というものではありません。

赤ん坊は、その辺に手をついては、口に手を持っていきますし、また、いろいろなものを口にして、舐めたりします。
あれって、雑菌に対する抵抗力をつける役割もあるんだそうです。
そんな理解のない母親はいませんよね(たぶん)。
もともと人間には、細菌類に対する抵抗とか免疫とかを備える能力があるんでしょうから、それを利用しない手はない。
個人差も確かにあるでしょうが、あまりのきれい好きもどうかと思います。
そんなわけで、魚の衛生管理には限界があり、それを過ぎると、まずいものばかり食う破目になるかもしれない、ということです。
もちろん、鮮度維持を怠るということは論外ですが。

週刊水産新聞に、少しおもしろいコラム「ちょっと待った」があったので紹介します。
題名は「HACCP仕掛け人は?」です。

世の中おかしくなってきた。BSEにサーズ、そして鳥インフルエンザ・・・。次はなんだべか。
われわれ水産食品を製造する加工業者は、消費者が求める安全・安心を満たすために殺菌装置を入れたり、従業員に衛生教育をしたり・・・と、HACCPとはいかないまでも金を掛けて対策を打っている。
HACCPが出始めのころは、米国のナサの宇宙食の衛生管理基準だということで、何で一般の食品にまでそんな基準を導入しなければならないのか、と疑問に思ったものだ。それと、人間をバイ菌に対して弱くするものだと怒りも感じた。
ゼネコンがこぞってHACCPに参入したのは、公共事業の減少を見越したためと言われたが、ゼネコン対策で誰かがHACCPを仕掛けたのかと勘ぐったりもした。
いずれにしても、おかしなウイルスなどが出てきて食品は受難の時代を迎えた。コストが掛かる衛生対策に国は有効な補助金を一層手厚くしてほしい。(道内の加工業者)
(2004年3月15日付「水産新聞」3面)

ここにもゼネコンの思惑があるのですか。
初めて聞きましたよ。
まあ、何にしても、陸上から海中まで汚染されてきて、その上、人間が弱くなってきた、ということなのでしょう。
このHACCPを詳しく知りたい方は、http://homepage3.nifty.com/takakis2/haccp.htmを訪問してみてください。
これは、たまご博物館というサイトにあり、衛生管理のことがいろいろと載っています。

海の中にウイルスが蔓延しないことを祈ります。
(2004年3月19日)



たまに更新するつぶやき-漁業

トップへ