魚菜王国いわて

カゴ漁業の網目規制について

先日、ちょっとカゴ漁業のことで、少し仲間内で話をしまして、県下全般では、小さいタコの放流を義務付けるのは難しい、ということがあるようです。
小さいタコしか入らない時期があるから、1kg以下のタコすら放流したくない、との意見が県南の方では出され、わが宮古は1kg以下は放流、県北ではご存知のように2kg以下は放流となっています。
県南の漁業者への不満は、まあ、ここでは置いておきます。
仲間内での話で、なかなか実務的な提言があったことを、ここに紹介しておきたいと思います。
ケガニとタコの資源管理」でも少し触れていますが、目合の規制、すなわち、カゴに被せてある網の目合を大きくして、小さい漁獲物を獲らないようにしよう、という規制のことです。
しかし、ただ闇雲に目合の大きさを決めては、どうも欲タカリの漁業者を説得するには困難を極めます。
そこで岩手県水産技術センターを利用します。
タコに限って言えば、まず1kgのタコ、2kgのタコ、3kgのタコを用意します。
それらのタコがどれぐらいの目合いのカゴから抜け出すことができるのかをそれぞれテストしてもらうのです。
水槽の中でカゴの中に対象のタコを入れておき、餌をカゴの外に置きます。
腹が減れば、出てきて食べようとすると思うのですが。
タコの入ったカゴを海中に置いておいても、テストできると思います。
実際の漁では、カゴの中に餌がなくなると、タコはカゴの外へ出ようとします。
長期間カゴを放置しておいて、しばらくぶりにカゴを揚げに行ったりすると、まずタコはほとんど逃げてしまっています。
腹が減ったら、タコも必死なんです(笑)。
この実験のデータから、目的の大きさ以下のタコを資源管理できる網の目合が確定できます。

しかし、一度にカゴを買い換えろというのも、絶対に無理な話です。
これに関しては、なかなか名案が思い浮かびません。
カゴにかぶせてある網の目合が大きくなればなるほど、タコ以外の漁獲物に関しても、ものすごい効果があがります。
毛がにはそのまま放流すれば沈んでいきますから、漁業者のモラルだけで資源管理できます(しなかった人もいて、そんな人は禁制の毛がに闇売りをしていました。今はいないと思いますが)。
ところが、放流しても、膨れて浮いてしまって、そのまま死んでしまう魚種もあります。
ドンコやタラ類、スイなどなど。
「新規購入からは目合規制を守る」といってもなかなか難しいでしょう。
「漁協を完全に通して買う」ということになると、手数料をたくさん取られそうな感じもして、私は好きじゃないですね。
しかし、今のところ、漁協を通さないとカゴの販売を認めない、としたほうが最も良い方法のように思われます。
個人売買では、このような規制はできないような気がします。
それほど「自分だけ」という欲タカリがたくさんいますから。

10月18日付「水産新聞」よりますと、タコの供給がかなり逼迫しているようです。
北海道で最も多い宗谷管内でのタコの水揚高が昨年の半分近くで、8月現在で北海道全体でも昨年の78%。
輸入では、昨年まで圧倒的な量を誇ったモロッコで、資源減少による不漁、それによる長期休漁措置などの取り組みから、輸入量は8月現在で昨年実績の19%。
今や札幌市場では、昨年比で、2割から5割高となっているようです。
年末から来年度末までは高値で推移するんじゃないでしょうか。
というのも、そのモロッコでの順調な漁が始まりそうにないらしく、始まったとしても、今年じゅうの日本への搬入は難しいとのこと。
ということは、平年並みの水揚でも水揚はかなりアップすることになります。
この儲け分で、カゴ網の目合規制を自ら進んで漁業者が実行できるようになれば良いのですが。
特に、県南の方のカゴ漁業者には、せめて1kg以下のタコ放流に賛成してもらいたいものです。
アフリカのモロッコでも、休漁措置を取る時代ですから、経済先進国の日本なら、なおさら資源管理には敏感になるべきです。
資源管理も立派な経済活動です。

水産技術センターの方、ここを見てるかなあ?
見てないだろうなあ?
メールでもしようかなあ(笑)。
(2004年10月20日)



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