魚菜王国いわて

漁業会社は魚類資源の敵

私たちのような零細な漁業者は、船主自らが体を動かして仕事をし、天候が悪ければ、海水をかぶりながらの操業をします。
常に現場でいろいろなことを考え、乗組員への気配りから魚類資源への気配りまでしなければなりません。
字のごとく、肌でいろいろなことを感じとります。
一方、漁業を会社組織でやるとなると、当然、社長その他の役員が存在しているわけです。
彼らは、船に乗って沖に行くわけではありません。
ましてや、汗をかくことも、塩水を触ることもないでしょう。
海水をかぶるなんてことは、1%もない。

会社で漁業をやっている例として、遠洋マグロ漁業、大型サンマ漁業、大中まき網漁業、沖合底曳網漁業など。
これらの経営者の行動を見ていると、とにかく金さえ入ってきて、会社が安泰であればいいだけであって、海のことなどほとんど考えていないように私は見受けます。
身近な例として、沖合底曳網(トロール)漁業を挙げますが、あの乗組員の中には、嫌な気持ちで小さい魚をしかたなく獲っている人がいます。
社長、船頭などのトップが「獲れ」と言えば、獲らなければならず、それに反すれば、当然にクビとなります。
トロール船の船頭も、デッキに降りてきて仕事をすることなんて、まずありませんから、恐らく自前のゴム手袋すら船に積んでいないのではないか、とさえ私は思っています。
漁業会社の社長も船頭も、自分の手を汚さず、ただただ何も考えず魚を獲って金額さえ揚げていけばいいと考えていますから、魚を獲りすぎても、魚体が小さくとも、平気なのではないでしょうか。
経営のためには、海の資源などどうでもいいのです。

ここでちょっと写真で例示します(←リンク切れ)。
写真に写っているのは、トロール船が獲った毛がにです。
タバコの置き方が悪かったのですが、タバコの箱は、長いほうが約8.5cm、短いほうが約5.5cm。
甲羅の縦長は、タバコの箱で比較すると、箱の短い辺と同じくらいです。
つまり、5.5cm。
小型船のカゴ漁業では、甲長7cm未満の毛がにを獲ってはならず、放流が強制されています。

タコに関しても、小型船では資源のことを考え、1kg以下のタコ(マダコと除く)を自主放流していますが、トロール船は“関係ない”ようで、平気で水揚げをしています。
私は、トロール船に乗っていた人から、網に入ってきてもタコも生きている、ということを聞いて知っています。
毛がにでもタコでも、小さいと思ったら放流すればいいのに。
生きているんですから。

今漁期のトロール船は、史上空前の好景気にも関わらず、こんなありさまです。
欲に限りがないというか、海に全く配慮しないというか、私たちのように、資源管理していこう、という気持ちはまったくありません。
ちなみに、この毛がにを水揚した船は、岩手県漁連金沢勘兵衛会長が船主です。
こんなものなんですね。

これは、漁師として黙認できるものではありません。
漁業会社の役員や船頭というのは、すでに漁師ではなく、ただのカネの亡者です。
大中まき網漁業、沖合底曳網漁業は、どちらも大臣許可です。
TAC報告の不透明性」で見るとおり、資源管理すべき制度も全く信用できません。
魚類資源の管理を真剣に考えるのならば、このような漁業会社に、大陸棚を操業海域として与えるのは、もうやめたほうがいい。
そうでなかったら、漁業会社を解体し、まき網漁業、底曳網漁業は、すべて小型船にすべきです。
まき網漁業の小型船は八戸にありますし、底曳網漁業の小型船も各所にあります。

国には資源管理などできません。
(2005年2月13日)



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