魚菜王国いわて

タラソテラピー施設の課題

タラソテラピーの政策評価」と題した「つぶやき」を書いた後、取引先の社長さんから「なあど」のことを聞き、タラソテラピーの課題が思ってたとおりのところにある、と感じています。
ちなみに、この取引先の社長さんは、「シートピア なあど」(←リンク切れ)と「キャトル宮古」の出資者です(この方は宮古以外から来て、宮古で成功しました。年も取り、恩返しのつもりで、いろいろと宮古のために尽くしてみたい、という心境のようです。私も見習いたいものです)。
また、「百聞は一見にしかず」で、実際に利用してみると、建設以前に指摘した問題も、実は残っていました。

最初に1つ目の問題点で、「タラソテラピーの政策評価」で書いた健康保険への貢献度について、現行の運営では過大な期待である、ということを指摘しておきます。
まず、施設の大きさの問題から、現状のままの利用状況では、市の医療費負担5%減すら無理です。
単純に宮古市の人口を6万人として、その5%は3,000人ですから、今まで医療の世話になっていた3,000人が“まったく”医療の世話にならなかった場合に、初めて5%削減されるわけです。
ところが、先ほどの社長さんの話だと、正月明けでだいたい月会員が600人で、その利用状況から考えれば、せいぜい月会員で1,000人程度が利用限度、だと言うんです。
これは、5%削減の単純な条件を先ほど3,000人という数字を出しましたが、それらの人々が全く病気にならない仮定をする以前の問題です(しかも健常者も利用しているでしょうから)。
1,000人でいっぱい、だというのに、どうやって3,000人の月会員に満足なサービスができるのかどうか?
それなら、もっと大きな施設を!と思うでしょうが、もともと補助事業で何とかやっていける施設なのに、もっと大規模なものとなると、補助が出たかどうかもあるでしょうし、単独事業ならば建設費用が大きすぎ、利用料金もかなり高くしなければならないでしょう。

で、今度は現状の利用状況は?というと、「月会員の値段が安いため、風呂代わりに使っている人も中にはいるらしい」というのよりも、もっとすごい利用のしかたをしている人を耳にしました。
ある飲み屋のママの話ですが、1日に2,3回行く人もいるらしいんです。
これじゃ、安さにまかせての濫用ですよ。
こんな利用状況じゃあ、とてもじゃない、本当に1,000人の月会員ですら、混み過ぎるようになるでしょう。
その割りに施設収入は上がらない。
さらに市の医療費負担削減は、夢の中のまた夢の話です。
このママはこの後に続けて提言しています。
月会費をずっと安くして、その代わり1回利用する毎に、会員料金を200円なり300円なり取ったほうがいいのではないか?ということです。
この利用料金の改善は、必ずしなければなりません(断言です)。

2つ目の問題点は、公益性、もっと具体的に言えば、利用機会の均等性が失われるから可能性が大であり、先着優先的な施設と言えることにあります。
もともと税金で建てたもので、運営もほとんど公といってもいいでしょう。
それならば、市民の誰もが利用すべき施設であって、先であろうが後であろうが、利用する機会は市民の誰にでもあるはずです。
たった1,000人の会員が独占して利用する施設ではないのです。
しかもこのタラソテラピー施設を含む「なあど」の利用対象は、宮古市だけではなく、下閉伊広域。
そして、ある程度内陸方面からの利用者も計画には入っていたはずです。
わざわざ盛岡から来て、濫用者のせいで入場もできないような混雑だったら、こなきゃ良かったと思われてもしようがない。
そんな施設とわかってるなら、内陸へのPRはしなくても良いことになりますね。
この辺の市の見解はどうなんでしょう?

3つ目の問題ですが、民業を圧迫しているのではないか?という疑いが晴れない点です。
「曇り」のち「どっち?」って感じ。
「風呂代わり」に利用してもいいよ!ってな印象を受けるように、利用後のシャワー室にシャンプー、リンス、そしてボディーシャンプーが用意されています。
アクアプールのそばには、サウナもありますし。
プールに興味はなくても、サウナ好きの人もたくさんいますから、それを1ヶ月フルに使えるとなると、そりゃサウナ目当てで行く人もいるでしょう。
普通の銭湯は、シャンプー、リンス、石鹸類は全部利用者負担で、これは銭湯の進化した温泉銀座の八戸でも変わりません。
タラソテラピーの月会員だと、1ヶ月フルに施設を使えば、健康にいい(多分)し、体の垢も落とせ、しかもその洗浄費用はタダ。
もう天国の気分なわけです。
この民業に対する影響の指摘は、「市政暖和室」で現市長と話をした時にしましたが、当時はそうならないように配慮する、と言っていました。
結果は少し違ってしまったようです。
結果は素直に受け止めて、改善すればいいだけですね。

以上、3点の問題点からの課題克服の単純な提言。

月会員の料金体系を変えること。そして、シャンプーの類は施設側では用意しないこと。
仮に月会費を3,000円にし、1回の会員利用料金を300円とすれば、30日毎日1回の利用で、月の利用料金合計額は、12,000円。
銭湯は1回350円だから、30日利用で10,500円で、民業圧迫の課題はクリア。
また、1日の複数回利用の人も1回ごとに料金を取るんだから、恐らくは利用を控えるはず。
特定濫用者が原因での混雑は解消されるはずです。
それにより、たくさんの人の利用が可能になります。
完璧ですね(自己満足。でも現行よりはずっとマシです。)
それから、他のタラソテラピー施設との料金比較をしますと、宮古市と市浦村の料金は安すぎると言えます。
以下に、宮古市からのリンク先の比較を載せます(大人料金のみ)。

青森県北津軽郡市浦村「し?うらんど海遊館」
http://www.wellnessdevelopment.co.jp/shiura/
元気海プール利用料金 1,000円/回。月会員5,000円。

千葉県勝浦市「テルムマラン・パシフィーク」
http://www.thalasso.jp/
アクアトニックプール料金 3,800円/日(プログラム利用者以外は再入場禁止)
コース最低料金は1日コースでも7,000円。

富山県城端市「桜ヶ池クアガーデン」
http://www.sakuragaike.co.jp/
アクアオアシスプール利用料金 1,500円

Webサイトからもわかると思いますが、千葉県と富山県の施設が、宮古市と市浦村の施設とは性格がかなり異なっています。
ほかにも、Googleから検索すればたくさん出てきます。
料金はどこも高いです。
この料金変更の際、既存の利用者から不満がでるはずです。
しかし、平身低頭に理由を説明し、それでも納得いかない人は、公の施設を利用する資格なし。
厳しい話ですが、それほど「公の事業とは何か?」について、何も考えていないという証拠です。
こういう人たちは、いわゆる「タダでくれるなら、何でももらう」人たちなのです。

最後に、市の医療費負担削減をタラソテラピー施設の利用効果に期待するのは、あまりに無理があります。
今書いたように、まず物理的に無理です。
医療費削減を目指すなら、市浦村のような取り組みに学ぶべきで、タラソテラピー施設は保険政策の飽くまで付随的なものにすぎない、ということになるでしょう。
(2004年1月21日)

加筆
この後、タラソテレピー施設には、シャンプー類を置かなくなったそうです。
しかしそれは、ここで取り上げた理由からではありません。
利用者の中に、自分のシャンプー容器に中身を入れ替えて持ち帰る、という人が出現したからです。
なんともお粗末な利用者です。
宮古市民のモラルとは、この程度のものなのでしょう。
がっかりですよね。
(2005年1月17日)

加筆U
なんと!備え付けのドライヤーまで利用者に持っていかれたとか。
それでドライヤーも置かなくなったそうです。
足を引っ張る市民。
サイテーレベルといわれてもしようがないです。
(2005年1月18日)



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