魚菜王国いわて

追悼!噂の真相

「噂の真相」、ついに休刊。
って書きましたが、実は、先月の10日発売号で終わってまして、その後3月末頃に別冊「追悼!噂の真相」というのが発売されました。
表紙を開くと、岡留編集長の遺影が掲載されています。
私がこれを手にしたのはごく最近でして、本屋さんに取りに行くにも行けなかった事情もあり、「お悔やみ」も遅くなりました。

私が「噂の真相」を初めて手にしたのは1994年でして、もう10年になります。
あの頃、私的にいろいろありまして、いろいろあったゆえに、「噂の真相」を読む破目になりました。
読み始めた動機は変なことで、そのことは恥ずかしくて書きようがありません。
最初は単発的に買っていて、毎号買うようになったのは、翌年からです。

ゲリラ性の大きいスキャンダル月刊誌で、しかし総合誌でもあるこの「噂の真相」は、論文ではなく記事が主です。
堅気の「文藝春秋」「正論」「中央公論」などとは位置づけが違います。
どちらかと言えば、週刊誌に近い性格もので、即時性から言えば、新聞や週刊誌には明らかに負けます。
しかし、腰をすえ、徹底的にスキャンダルを暴くという手法で、読者を獲得したのでしょう。

私は、記事の真実性を5割とみても、おもしろい雑誌だと過去に書いています。
「追悼!噂の真相」では、俎上に上げられた人たちからのメッセージも載せており、言論人や文壇スキャンダルについては、やはりかなりの誤報もあったようです。
おもしろいのは、そのことを編集長自身が、俎上に上げた人へ「エール」だと思っていること。
書かれた側からの抗議の電話なんかでは、そう返答するそうです。
笑ってしまいます。

編集部内部の出来事や記事に対する抗議としての暴力事件の裏話なども、この別冊1冊で編集部の「情報公開」をやっていました。
近年では、あの「毒まんじゅう」の産みの親で、あっさりと国会議員を引退した野中広務氏との裁判闘争があり、しかし、あの野中氏も、こわもてのくせに面白い人だったんだなあ、と思わせる記事が、別冊中の「トラブル全史」にありました。
毎号掲載される「噂の真相匿名座談会」というコーナーに、「野中も年だし、男女関係はないんじゃないの?」という記述に対し、野中氏側が「その記述こそ最大の名誉毀損だ」と思わず笑ってしまう指摘をしてきたとか(しっかりチェックしているんですねえ)。
また、創刊間もない頃、皇室ポルノ事件で廃刊の危機に見舞われ、その反省(この事件で広告主からはすべて掲載拒否、印刷会社からも中止通告されるが、結果的にこれは「噂の真相」を強くする)から、印刷会社名を隠していましたが、最後の別冊で、「凸版印刷」と情報公開しています。
それはなんと!、事件前の印刷会社と同じではないですか!
凸版印刷って、なかなか骨のある会社なんですねえ。
見直しました。
この凸版印刷は、電子ペーパーの実用化にも取り組んでいます(溝口敦著「日本発!世界技術」参照)。

「噂の真相」存命中、タブー領域(タブー領域は別冊「日本のタブー」参照)では孤立無援でした。
しかも最近では、名誉毀損裁判の賠償額高額化という問題もあって、タブーがもっとタブー化しつつあります。
権力側は?といえば、民事に関することで検察側が名誉毀損の刑事告訴をするという前代未聞の事件も発生し、それも有罪判決がでるという有様(大ショック「噂の真相」有罪!参照)。
ますます他の雑誌が反権力的な思い切った記事をためらうことになるのでしょう。
こんな中で、「やめるなコール」が起きるのも無理ありません。
なにせ黒字経営でやめるんですから。
しかし、この雑誌の創刊は1979年ですから、25年間も頑張ってきたんです。
岡留編集長、川端副編集長以下が、かなり疲れたんでしょう。
ここで川端副編集長を初めて登場させましたが、彼の興味深い発言を少し引用します。

本来、人の秘密を暴くのって嫌な仕事じゃない? でも、「反権力」という岡留の物語はその動機付けをきちんと与えれくれるわけよ。だからストレスもたまらないし、攻撃的になれる。
(別冊「追悼!噂の真相」p111)

他にもこの別冊には岡留編集長の人柄や雑誌に関する考え方の底流みたいなものを、他の人たちが想像して書いています。
通読している人にとっては、爆笑モノもたくさんあり、なんとも堪えられない別冊です。
私が読み始める前は、もっとゲリラ性に富んでいて、おもしろかったようです。
当時読まなかったことは、非常に残念に思います。
さて、岡留編集長がこの黒字雑誌をやめた理由を、いろいろと各方面の人たちが想像で言っていますが、雑誌界その他のマスメディアに対し、期待をこめて、弁護士の弘中惇一郎さんのメッセージを載せます。

蟻の集団は、怠け者蟻と働き者蟻とに分かれていて、働き者がいる限りは、怠け者は仕事をしようとしない。ところが、怠け者の蟻だけを集めて新たなグループを作ると、怠け者蟻の中の一部のものは働き者蟻に転じるという。
『噂の真相』が休刊するというのは、どうもこの辺りに真の理由がありそうな気がする。『噂の真相』が孤軍奮闘している限りは、他のメディアは、それを横目にして横着を決め続けるからである。
『噂の真相』が休刊すれば、どこかのメディアが代わって奮闘するようになるかもしれない。疲れた身体と心を沖縄の海で休めて、酒でも飲みつつ、その奮闘ぶりを眺めてみたい。それさえも実現しないのであれば、所詮、日本社会は蟻の社会以下とあきらめるしかない?。
以上が私の推察する岡留編集長の深層心理である。
(前掲書p69)

「噂の真相」様、ご苦労様でした!
(2004年4月22日)



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