魚菜王国いわて

「日本のタブー」

本当は書かないつもりでした。
が、これだけはどうしても、という思いが強いです。
「噂の真相」ネタですが、「またか!」と思う人も絶対に読んでもらいたいです。
まず、引用文から。

将来の検事総長を約束されていた東京高検検事長の則定衛は、検察のタニマチといわれた業者と一緒に訪れた銀座のクラブホステスに年甲斐もなく一目ぼれ。程なく交際が始まり、同伴出張をしてみたり、「生のままで構わないから」と避妊もしないで情交を重ねた。その末にホステスを妊娠させ、その堕胎費用を業者に肩代わりさせたそのハレンチぶりには誰もがあきれ返ったものだ。
もちろん、このスキャンダルをすっぱ抜いたのは『噂の真相』2000年5月号。法務・検察のほぼ頂点に立つ人物のことだけに、せっかくの特ダネも記者クラブに黙殺されるだろうかと思いきや、朝日新聞が「『噂の真相』によると」とクレジット付きで異例の一面トップ記事扱い。これに記者クラブ各社も追随したため激しい則定ブーイングが巻き起こり、雑誌発売の3日後に、則定は辞任へと追い込まれたのだった。
ところで、このスキャンダル報道には不可解な点が多いといわれた。「どうして朝日は追っかけネタを一面で報じたのか」。この疑問の輪はどんどん広がり、「『噂の真相』と朝日が仕組んだキャンペーン」「則定と折り合いが悪い石川達紘・東京地検検事正が朝日にやらせた」と"謀略説”も飛び交い、事実、石川は各社に「オレじゃないから」と必死に否定して回るという紛らわしい行動に出ていた。
実は、疑問を解くカギになりそうな"秘話”がある。私の「事件日記」によると、スキャンダル報道の2ヶ月ほど前、大手紙の社会部長を集めた「在京紙社会部長会」が都内で開かれ、ここに検察幹部が招かれた。議題は自ずと「出入り禁止」問題に及び、席上、朝日の松本正部長がこう切り出している。
「どうして検察は出入り禁止ばかり連発するんです?特捜部の事件なのに高検、最高検まで取材に応じないとはおかしな話だ。そもそも、あなたたち検察幹部が報道対応しないで、どうして国民に真実が伝えられるんだ」
松本部長の"切れた”ような剣幕に検察幹部も気色ばみ、会議は気まずい雰囲気に包まれた。当時の朝日は、頼みの綱だった特捜部長の熊崎勝彦が更迭されて検察情報が取れなくなっており、則定たち法務・検察主流派とうまくやっていた読売や毎日の後塵を拝する劣勢ぶりだった。「今の検察体制では『検察報道の朝日』は滅びる」。そんな危機感が編集局上層部にも芽生え、つまりは、「何も失うものはない。他社のネタ元は潰してしまえ」という本音が則定報道にあった?これが私たちが当時たどりついた結論である。
"タブー”を打ち破ったといわれた則定スキャンダルをめぐる新聞報道ですら、実は、記者クラブ各社の利害がからみ合った末の産物だったことがみてとれる。事実は常にねじ曲げられて世間に伝わり、『噂の真相』のような媒体がない限り、真相は知れわたらない。
こうしてみてくると、いまの記者クラブはもはや、単なる当局のスキャンダルの"隠ぺい装置”では済まなくなっている。調活費問題のような組織ぐるみの「犯罪」に手を染めた当局をかばい、代わりに、脱税のような悪徳企業ばりの「犯罪」を免罪してもらう―まるで記者クラブは、闇取引が横行する"ブラックマーケット”なのだ。こんなものに自浄作用など望むべくもなく、記者クラブが解体しない限り、"タブー”はなくなりはしない。それが新聞記者をやってきた私のたどり着いた率直な結論である。
(「噂の真相」2004年1月号別冊「日本のタブー」p42)

天下(?)の朝日新聞が「噂の真相」に頭を下げ、それを1面に載せた事件で、もし朝日新聞が記者クラブの了解事項を破り、これを掲載しなかったら、則定衛は検事総長になっていたのでしょう。
その背景には、私がこのサイトで過去取り上げた(「村串栄一著『検察秘録』」)熊崎勝彦の更迭のため、朝日新聞は検察ネタを取れなくなっていた、ということがあり、これを裏返して、朝日新聞が記者クラブでうまくやっていた、と仮定すれば、その時、則定衛は、検事総長になっていたのです。

この筆者は、全国紙社会部デスクとして、仮名で書いています。
これが誰であるか発覚すれば、その新聞社は「出入り禁止」となるからでしょう。
この文章には、あの武富士盗聴事件の裏側も詳細に書いてあり、これは盗聴だけでは終わらない、しかも、警察汚職事件です。
それが記者クラブによって、たった一人の警察署長が書類送検されただけで、闇に葬られました。
しかも、この書類送検は、辻本清美社民党元代議士逮捕と同じ日にされ、警察スキャンダルは片隅の記事に追いやられました。
したがって、ほとんどの人は、その事件さえ記憶されていないでしょう(私も知りませんでして、後の「噂の真相」で知りました)。

ほかにも筆者の「事件日記」によるものが記述されていて、改めて記者クラブの弊害を実感できます。
長野県知事の記者クラブ制度廃止に、各県の知事も同調すべきでしょう。

この別冊「日本のタブー」は、新聞・雑誌メディアのタブーを集大成したものです。
以下に目次を書いておきます。

新聞やテレビは絶対に出来ない!週刊誌ゲリラ報道の中のタブー域
  北村肇元『サンデー毎日』編集長
  花田紀凱元『週刊文春』編集長
  元木昌彦元『週間現代』編集長
  (司会)岡留安則『噂の真相』編集長
拉致発覚以降に暴走を始めた北朝鮮『救う会』『家族会』の絶対タブー化
  特別取材班
イラク自衛隊派遣で対米追従一辺倒外務省に見る日本外交の絶対タブー(米国タブー)
  天木直人前レバノン全権大使
『噂の真相』も流血の惨事となった天皇制タブーと右翼団体の暴力威嚇(天皇制タブー)
  篠田博之『創』編集長
検察・警察の不祥事に手をつけない記者クラブの犯罪的な"タブーの闇”(検察・警察タブー)
  大和田三郎全国紙社会部デスク=仮名
"差別と偏見”の糾弾闘争が生んだ恐怖と自主規制の部落タブーの現在(部落タブー)
  新島洋
出版社系週刊誌が絶対に書けない売れっこ作家たちの私生活のタブー(文壇・文化人タブー)
  特別取材班
自民党も大手メディアも裏で操る創価学会の"鶴のタブー”の恐怖支配(巨大宗教タブー)
  藤原弘太郎
宣伝費でマスメディアを支配する影武者・電通の視えないタブー(広告タブー)
  特別取材班
ジャーニーズやバーニングが圧殺する有名芸能人のスキャンダル・タブー(芸能界タブー)
  特別取材班
コンビに読者に圧倒的に支持されるタブーを恐れぬパワフル雑誌の裏側
  寺島知裕『ブブカ』編集長
  久田将義『実話GON!ナックルズ』編集長
  岡留安則『噂の真相』編集長

ほかに、項目ごとにタブーに対する過去の「噂の真相」記事が並んでいます。

「噂の真相」は、初期に、「皇室ポルノ事件」で痛い目に遭い、その時から「広告収入に頼らないこと」と「印刷会社は絶対に表に出さない」ことを厳守に、雑誌を作ってきたといいます。
このように、タブーに対する挑戦権は、広告に頼らず、読者への販売のみにかける意気込みがあってこそ、得るものです。

この別冊だけは、過去「噂の真相」を読んでいない人にも絶対に読んでほしい。
報道機関の本当の実態が書いてあり、現在の報道において、もしかしたら、週刊誌のほうがいいのかも、と思ってしまうような気持ちさえ持ってしまいます。
それほど新聞、テレビのメディアは、墜落しきっているようです。
たぶん各本屋さんに置いてあり、どうせ売れていませんから、手に入るはずです。
定価1,000円です。
(2003年12月30日)



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