2. ベネフィットとリスク




 ベネフィットとリスクという言葉は、核推進者たちが、好んで使う言葉である。何のことはない。日本語で言えば、ベネフィットは利益のことであり、リスクは危険可能性、あるいは、危険負担のことである。リスクは、日本語で表現するほうが難しいが、ベネフィットなどという外国語は、使う必要などない。

 私たちは、常に、利益とリスクを考え、行動している。利益とリスクを天秤にかけて、利益に比べ、リスクが小さいときに、人間は行動にでる。逆にリスクが大きい場合には、行動は控える。これには個々の置かれている状況により、その価値判断は変化する。例えば、雪道で運転に自信のある人は、リスクが小さいと判断し、自動車を使うだろう。しかし、自信のない人には、リスクは大きく、公共交通機関を利用するだろう。言葉にすれば長ったらしいが、このような判断を私たちは常に行っているのであり、ベネフィットとリスクなどという言葉を難しく考える必要はない。

 自由な個人の行動を制限しているのが、さまざまな社会的規則や法律であり、これらの規則や法律も、あらゆる社会の利益とリスクを考慮し作成されている。個々の社会の慣習は、長い歴史の上で積み重ねられたものであり、言葉では表されないにしても、長期的視点からの利益とリスクが経験的に考慮されているのである(とボクは考える)。そして、各国の国家戦略や国際協定などは、利益とリスクを、大掛かりな天秤で計って策定されるものである。




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