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「油絵で描く おくのほそ道」画集によせて

美術評論家 富山 秀男

03.png 2000年から始めて12年の歳月を費した73点の連作であるという。芭蕉が辿った奥の細道を厳密に吟味し、季節と時間を選んではその1か所1か所で現場制作するという行程には、思いのほか日数がかかったのに違いない。私はそのうちのほんの一部の作品を実見した程度で、あとは沢山の写真を見せてもらったに過ぎないが、率直にいってその実直、真面目な仕事ぶりにはしばし呆然という以外にない意外さというか、新規さを感じた。「意外」とか「新規さ」といったのは、これまでの俳画の伝統的スタイルを覆す新規さをものっていることに対する驚きというか、戸惑いの情を表明したものにほかならない。私としてはこの快挙が、雪国東北山形の努力家沖津信也さんの手によって宿願成就されたことを、何よりも喜ばずにいられない気持である。


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「奥の細道」油絵点描のさらなる高みへ

NPO法人芭蕉翁「おくのほそ道」ネットワーク理事
「おくのほそ道」台学長 梅津保一

04.png 沖津さんは独自の点描表現の技法と政策理念の深化を歴史や文化や文学を咀嚼研究し、表現の壁を突き破る啓示を芭蕉の「奥の細道」の中に発見した。旅の中で感受した自分自身の感性の全てをキャンバスに表現した。その間、東日本大震災や福島原発事故もあり、「鎮魂」、「希望・復興」へと物資や義援金を届ける支援を続けながらの旅でもあったようだ。現場の各地で出会った人々や歴史や文化や制作した作品から得た新たな発見や感動体験は、今後もはるかに続く「芭蕉の世界を描く旅」への夢の拡大と大きな製作エネルギーとなっているという。願わくば、今後も曾良役の修子夫人とともに「奥の細道」の旅を続けられ、「奥の細道」油絵点描のさらなる高みをめざしてほしいと切に祈るものである。


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沖津先生のライフワーク 「点描 奥の細道」に期待する

山形美術館館長 加藤千明

05.png 沖津さんから、奥の細道連作への熱い思いを何度か聞いた。芭蕉の足跡を調べて現場に行き、光と風を感じ、鳥の声を聞き、その土地の歴史を想う。画架を立て、キャンバスに向かい、芭蕉の詠んだ俳句や紀行文を心に呼び戻し、場H層の言葉をつぶやきながら画面の構想をめぐらす。それが至高の時であるという。沖津さんの点描画法は独特である。最初から小さな色点を描くのではなく、写実的で堅牢な画面を一旦仕上げてから、光の粒子としての小さな色点をキャンバスに一つ一つ打ち込んでいく。奥の細道連作が、俳聖松尾芭蕉と日本の風景美に捧げられるものならば、光の散華である“沖津点描”こそ、最もふさわしいと信じている。


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