最初は僕から。
僕がまだ小学生だったとき、親戚のおっちゃんが山に石採りに連れててくれた。化石採りは何回か行ってたので今度は何を採りに行くのか楽しみだった。ところが、行ってみると化石なんか一つもない。その代わり赤や黄色や青や緑のいろんな石が落ちてた。きれいだったので何となくたくさん拾ってしまった。まるで桂浜の五色石だった。
残ってる印象はこれだけ・・。そのとき拾った石なんか今はどこ行ったかわかんない。引っ越しの前まであったと思うけど、どさくさに紛れて捨てたかな?片づけが面倒になって窓から外へ放り投げたのかもしれない。
今はそれをものすごく後悔してる。おぼろ気な記憶の中で金色の石と赤色の石だけ鮮明に思い出せる。たぶん金色は黄銅鉱だと思う。でももっと金色だったかもしれない。ひょっとして金かな?赤色は透き通ったきれいな結晶だった。白い石の中に入ってた。たぶん石英だろう。その中にビシッという感じで入ってた。おそらくルチルだ。
□山だ。それを拾った場所は・・。どこだったっけ?どうしても思い出せない。拾った場所は二十年前、捨てた時期もまだ十年くらいしか経ってないのに。そのときはあんまり気乗りがしなかったせいだろか。サークルに入ってしばらくしてから気付いた。僕はとんでもない物を拾ってたかもしれないのに捨てちゃったかもしれない。
メンバーからもよく聞かれる。どこで見つけたの?どこに捨てたの?わ〜ん、思い出せないよ。仕事が忙しくて遠くへ行くのがおっくうだから、近場の□山に行って散歩してる。何とか記憶を蘇らせようといろいろ歩いてるけど、なんか靄がかかったみたいにぼんやりしてるだけだ。健忘症なのかな?
最近は無理に思い出そうとしてない。メンバーから、「それはたぶん最初から君の手元に残る物ではなかったんだよ。でも代わりにきっとそれに匹敵する何か良い物がやって来るよ。」と言われた。それから三年、僕の手元に県内唯一の石がある。いや国内唯一かな、いやいや世界で唯一かな・・。話はどこまでも尾ひれがついて伝わって来るからこれくらいにしとこう。
「一期一会」という言葉がある。人との出合いも石との出合いも同じだろう。人の方は相手次第で良くも悪くもなるけど、石の方はこちらがきちんと相手すれば答えてくれる。そういった出合いを大切にしていこうと思ってる。
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