あわ〜ストーンU

気ままに訪問記

この文章の著作権は「あわ〜ストーン」にあるので、無断で引用・改変等しないでね。寄稿者には了解済みです。
6.鉱物世界の案内人
 水晶とザクロ石はどこでも採れる。最初にこれを聞いたときはまさか〜と思った。しかし、石の産地を数多く訪ねるうちにそのような事実の多いことがわかってきた。地殻を構成する元素の割合をクラーク数というが、酸素とケイ素が群を抜いて高く両者だけで全体の75%を占める。つまり石の成分のほとんどはケイ酸からできているんだ。簡単に言うとケイ酸だけからできているのが水晶で、それに金属元素が少し含まれるとザクロ石の成分となる。だからどこにでもあるって言うのは的はずれではないだろう。
 今までに訪ねた四国の産地は100ヶ所を超える。小さい場所まで含めれば200ヶ所以上になるかもしれない。その中で水晶の存在を確認したのが20ヶ所くらい。ザクロ石は50ヶ所くらいあった。もっともこれは石を拾っていて偶然見つけただけなので、もっと念入りに探せばもっと多くの産地で見つけられたかもしれない。大雑把に言えば、水晶はマンガンやアンチモン鉱山で見つかりやすい。また、花こう岩などの採石場では石の中の晶洞というすき間に生えていることがある。市ノ川のズリでは細かい水晶がびっしり生えたクラスターが見つかっているし、石英の鉱脈が厚いとその中に結晶が見られたりする。某採石場近くの港では護岸用の巨岩に晶洞があって、そこに煙水晶や長石が生えてていた。
 ザクロ石はあちらこちらで見つけている。何気なく川原の石を拾ったらそれだった・・・ということが何回もある。赤褐色の粒子がもっとも多いが、他に黒色・黄色・オレンジ・ピンク・緑色など様々である。産状もまた粒状・塊状・脈状などいろいろなパターンがある。そのうえに母岩の種類が異なったり別の鉱物と共産していたりするので、そのバリエーションが面白いのだ。拾った石を木製皿において置物にしたり小さなケースに入れて飾ったりすると楽しい。
 他にキースラーガーを集めていた時期もあった。和名は含銅硫化鉄鉱といい、厳密には鉱物ではなく黄鉄鉱・黄銅鉱などを含む鉱石である。四国では東西に走る三波川帯・秩父帯・四万十帯に分布しており、地方によって別子型とか浅川型とか呼ばれている。石英や変成岩を割ると銀白色の鉱脈が走っている。その中に金色や青紫などが含まれているとキラキラしてきれいだ。様々な鉱物や母岩と共産するので、それを採集すると多くの鉱物を同時に副産物として入手できる。
 これらの鉱物が石採集の原点になっている。身近にあってわかりやすくて採集しやすい物ほど奥が深いとつくづく思う。産状の全てのバリエーションを集めたつもりでも、後日訪れるとまた新しい発見があるのだ。それが次の活動にエネルギーを与える源になっている。なお、産地には私有地もあるので必ず許可をもらってから行動している。後から来る人のために入山禁止とならないよう心がけている。
更新日時:
2013/06/23
7.四国の川原で採れる物
 やっぱり砂金だね、鉱物の王様だからね。
パンニング皿の底に残るあのバターのような黄金色の粒を見るのはサイコーだよ。大きい物はめったにないけれどもし見つけたら気分がもっとアップする。誰かが金は魔物だとか言っていたけれど、確かにそう!あの輝きを見れば誰だって正気を失うかもしれないね。
 四国の砂金は量的には少ない。某大学の研究員がそう言っていた。銅山川の上流に別子銅山があったから、そこで鉱石から分離した金が流れてきている。川岸の金鉱脈から分離したのもあるそうだ。砂金は金色と思っている人が多い。そりゃそうだ、金だから金色に決まっている!でもね、赤色をしている砂金もあるんだ。赤金というんだ。銅をかなり含んでいるからそうなっているらしい。24K(純金)じゃなく18Kかもっと純度が下がって14Kくらいだろうか。
 砂金の純度は表面の方が高い。金より反応しやすい銀や銅が溶けてしまうからだってさ。そうだったとしてもそれが気になるほど大きな粒は採ったことがない。せいぜい1ミリくらいのミニミニサイズばかりだ。12グラムもある粒を掘り出した人がいるそうだが、それだったら調べることができるだろうね。でもうらやましいなあ。
 白金もあるんだ。プラチナのことじゃないよ。いやそれもあるんだけど、イリジウムとかオスミウムなど白金族元素と呼ばれる金属のことさ。万年筆の先に使われていた物で、この銅山川が主要な産地だったと聞いている。岩の裂け目に手を突っ込んで砂を掻き出し、パン皿に載せて流水で洗うと最後に比重の大きな物が残る。その中に赤金や白金が残っているからそれを探すんだ。
 赤金でない赤い物もある。透明なザクロ石や辰砂の粒だね。砂金が採れないときは代わりにそれなんかを拾っていったりする。ガーネットだよ。宝石レベルだったよ。リングにするにはとても難しいけれど、それを集めて100%天然のガーネットリングを作ってはどうかな。趣味人たちにネタを後悔しておくよ。いや公開しておくよ。ガンバってね!
更新日時:
2013/06/24
8.唐ノ浜の新生代化石
 高知県東部に唐ノ浜という新生代化石を産出する場所がある。全国的に有名なのは静岡県や宮崎県などだが、四国でも高松市周辺・徳島市南部・愛媛県西部でも採集されている。主に海棲生物の化石が多くて、特に貝化石は昔からよく研究されている。マクラガイやキサゴなどの巻き貝、サルボウやツキヒガイなどの二枚貝、クジラの耳骨、サメの歯などが砂質の地層中に含まれている。
 奈半利線唐ノ浜駅のすぐ北側一帯に分布しており、山肌に砂からなる地層と白い貝殻の欠片が見られる。この地層は安芸市南東部へも続いており、羽根地区の粘土層からも貝を産出する。また、亜炭層も分布していて当時は数カ所の炭鉱が稼働していた。このように産出品は地味だけど、少し深く調べてみるとかなり面白い地域なのである。
 ただしとても遠い。徳島市を起点とすると自動車道を走り高知市を経由すると3時間、国道55号線を走って室戸経由で行くと3時間半はたっぷりかかる。関西圏から何とか日帰りできるギリギリの場所にあるのだ。サーフィン目的で近所の海岸に来る人もいるくらいだから、化石が好きな人ならさほど苦にはならないだろう。
 砂を掘ると砂の塊が出てくる。この砂を慎重に取り除いていくと貝殻が見えてくる。貝が割れない程度にまで砂を除いてからケースや標本箱に収納するのだ。また、大きな砂の塊はそのまま採集して後日ゆっくりと割ってみればよい。ミリサイズの小さな化石もこうして見つかっている。
 以前に道路工事現場の近くからクジラの背骨が見つかった。見つけた当人に様子を尋ねたことがある。昼間に見つけておいたが人の目があるのでそのままにして、工事が終わって薄暗くなってから掘り出したそうだ。とても重たかったので背負子を持参してそれに載せて、離れたところに駐車した軽四に積み込んだ。今は某機関にて保存されている。
 現地は保存用の場所と採集可能な場所に分けられている。行かれる人はきちんとそれを区別して行ってもらいたい。それと他の産地の化石を置いていくことも遠慮して欲しい。以前に北海道産のアンモナイトが転がっていたことがあった。誰が見ても唐ノ浜産ではないとわかるのなら構わないが、もし誰かにあげるつもりならついでにラベルも付けてあげてください。
更新日時:
2013/07/18
9.四国の砂鉄は赤いな
 岩石に含まれる鉄分が粒子として分離した物。それが砂鉄だ。少し標高のある陸上で採れる山砂鉄。川原や川底から採れる川砂鉄。海岸や浅瀬で採れる海砂鉄。このように採れる場所で分類されているが、実際は場所ごとに全部違う。
 香川県小豆島では領家帯の花こう岩から分離された鉄が砂鉄になった。ものすごくきめ細かな粒でメッシュをすり抜けてしまう。仕方なく船上のポンプで吸い上げたが、今度は機械が錆びてしまってどうしようもなかった。イルメナイト(二酸化チタン)を数%含んでいたから、もし大量に取れていたら大もうけだったに違いない。
 愛媛県土居町の関川河口では砂鉄とガーネットサンドを取っていた。ガーネットはザクロ石のことだけどこの関川にはそれが非常に多い。ザクロ石は硬いから風化して粉になったものを、物を磨く研磨剤として利用していた。ここの砂鉄もイルメナイトが多かった。20トンくらい取っていたらしい。
 高知県幡多町の海岸にも砂鉄があった。海砂鉄だ。鉄の含有量が多くてたぶん古代のタタラ製鉄にも使われていたと思う。足摺岬のジャングルには山砂鉄があった。黒い鉄粒の中にジルコンやウラノトール石などを含んでいる。本にまで地図が紹介されてすっかり有名になってしまった。しかし、国立公園内だと思うけれど掲載して良いのだろうか?
 四国でただ一つ徳島県にはこれといった産地がない。強いて言えば山川町の銅山川くらいだろう。別子銅山のカラミが丸くなった銅山石から鉄分が分離してできた物と思う。川砂鉄だ。ここは砂金も取れる。
 以上、仲良しメンバーの合作です。いっそのこと四国砂鉄の会でも立ち上げて、四国各地の砂鉄を調べようか。地味な活動になりそう・・。
更新日時:
2013/07/24
10.三種の神器は今どこへ
 八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)。天孫降臨の際に天照大神からニニギノミコトに送られた鏡・玉・剣のことで、それぞれ伊勢神宮・皇居・熱田神宮にご神体として祀られている。これに端を発するかどうかわからないが、日本各地の小さな神社にもご神体が祀られて、お盆や稲刈りの後に地元の総代や氏子が神主をよんでお祭りしている。
 鉱山では危険な作業が多かったので、ヤマの神を祀った山神社があった。そのご神体は地下から掘り出したばかりの新鮮な鉱石であった。ある鉱山では高さ30cmほどの青光りする斑銅鉱の塊であった。坑道の最下層、地下120mの富鉱帯から採り出された物で、どっしりとした山形だったという。これを社に安置して毎日の朝礼時には山神社の方向を見てその日の安全を願った。
 鉱山が閉鎖されるとき、そのどさくさに紛れて山神社のご神体が行方不明となった。忙しい中でふと気付いた職員が軽トラで見に行ったが、すでにもぬけの殻だったそうだ。その後、某施設にあるのがそれでないかと調べたりしたが、未だに行き先がはっきりしない。人知れずホコリをかぶっているのか、それとも誰かに割られて売り飛ばされたのか。早く見つけて博物館で永久保存してもらいたいところである。
 ある夏の暑い日、地元の方々と山神社跡を訪問した。細いくねくね道を辿ったその先にそれがあった。敷地は狭くその半分は林になってしまって、藪をかいくぐって社の前に立った。建物はつぶれていた。長年訪れる者もなく柱がすっかり朽ちていた。当時奉納された石灯籠も倒れかけていた。ご神体を安置していた小さなほこらも飛ばされて、山の斜面の下に落ちていた。この有様を見てなんともやりきれない気持ちになった。ヤマの閉鎖とともにそこで生活していた人々の記憶までも途絶えてしまう。とても悲しくなってきた。
 顔を背けて何気なくほこらの傍らを見ると何かがキラッと光った。斜面を下りて拾い上げると金属質の丸いお盆のような物体だった。地元の自治会長に手渡すと、これは鏡かもしれないと言われた。確かに形状は鏡そのものであった。表面はツルツルで光を反射するようになっているし、裏面には唐草のような文様が入っている。しかし、ほとんど錆びていないので当時の物ではないかもしれない。
 会長に再度手渡したが要らないと言う。これがもし本当の鏡であっても鉱山がなくなった今は誰の物でもない。また、地元の誰かが持っていてもそれを生かせる術を知らない。そうだったら君のように物の価値を知っていて、それを大切にできる人物に託した方が良かろう。・・このように破格の言葉を頂いてその鏡は私の手元に来ることとなった。
 鏡を得たことはとてもうれしい。それよりも地元の方から信頼されていることがもっとうれしい。そして、今後も鉱山跡を調べたり採掘された鉱石を収集して、それらの記録や遺品を後世に残していきたい。
更新日時:
2013/07/26

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Last updated: 2014/1/2
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