第36号 2019年6月 発行 聖ベネディクト女子修道院

オブレートだより

絵本「おおはくちょうのそら」より 

絵本大好き姉ちゃん

 北の大地はまだ凍てつき、春が遠く感じられる二月。
ある日の早朝、湖から一斉に白鳥が飛び立つ。
明けやらぬ空が白鳥で埋め尽くされるような勢いの旅立ち。
北の大陸を目指しての北帰行の始まりです。
「クォーッ」「クォーッ」と呼び交わすような鳴き声が胸に響く。
それは数ヶ月過ごした大自然への別れの言葉のようにも聞こえます。

 この光景を思いめぐらしていると、フーッと昔、園児たちと読んだ絵本「おおはくちょうのそら」(手島圭一郎作)が思い浮かびました。
松居友著「わたしの絵本体験」から筋の要約を引用してみます。

 「重い病気の子どもを持った白鳥の家族があるのですが、春になり北へ帰る時期になっても治る様子がありません。
そのうち仲間の白鳥たちは、すべて飛び去ってしまいます。
しかし、この家族の父親は子どもの白鳥が治ることを期待して、ぎりぎりまで出発を延ばします。
しかし、とうとう雪解けが来て、家族は病気の一羽を残して飛び立つ決心をするのです。
悲しい別れの末に家族は山のかなたに見えなくなります。
一羽取り残された子どもの白鳥は悲しい声で鳴きます。
その時飛び去ったはずの家族の姿が再び、山の端に現れます。
哀れな子どもを残せずに舞い戻って来たのです。
父さん母さんや兄弟が戻って来た夜、子どもは息を引き取ります。
翌日、家族は北の国へ向かいます。
まだ、氷に閉ざされた北の国に着くと、一家は死んだ子どものことを思い出します。
すると、北国の冷たい空に、死んだ子どもの姿が光り輝きながら浮かび上がり、一瞬にして春の光となって家族の上に降り注いで来るのです。」


北の国に帰る途中、鶴沼の近くの雪解けの田んぼで休憩する白鳥達

 このお話しは北海道の湖で実際に起こった出来事が元になっている悲しいお話しですが、おおはくちょうの家族の愛の絆は何と深いのだろうと感動せずにはいられません。

 さて、私たち人間社会、特に現代の子どもを取り巻く環境に目を向けますと、親の育児放棄や虐待、三食に事欠く子ども、学校でのいじめ、父親からの性的暴力など、悲惨な状況に満ちています。
人間性の荒廃、家庭の崩壊が叫ばれている今、親子兄弟の温かい絆まで失われた原因を複雑な現代社会にあると言うのは簡単かもしれません。
そして、一度失ってしまえば一朝一夕にそれを取り戻すことは不可能にも思えます。
しかし、何か出来ることはないものでしょうか。

 北の大地を飛翔する白鳥の群れを見送りながら、あれこれ考えさせられました。