フレーム補強


社長 「フレーム補強をするって言うんだが、どのくらいまでやるんだ?」

俺様 「はい。ハンドリングがシッカリする様にお願いします。」

バーキンを購入以来、そのハンドリングにはつねづね疑問でした。アームが突っ張った
感じがして、スプリングが底着きし、さらにステアリングレシオはスローでダルかったでした。
さらにフロントの接地感が乏しく、とてもじゃないがバーキンには「命を預け」られません。
私は、バーキンの実力がこの程度だとは、到底思えなかったので、様々な改造を施しました。

まず、タイヤをグリップの良いものに、ホイールを軽いものに交換しました。バーキンのフロント
ホイールのオフセットは+30なので、一般的な6J〜7J14、オフセット+15〜+09に対応する
様にフロントフェンダーステーを改造します。これでホイールの選択肢がグッと増えます。タイヤの
変更で、ハンドリングは激変しました。


これは「ウェッズスポーツ」初期型。AE86の「富士フレッシュマンレース」では定番でしたね。持
つと異常に軽くて驚きます。また、6.5J+9程度の厚みにもかかわらず、かなり「深リム」に見える
のもポイントです。虚飾を排したレーシングホイールなので、コピー商品が一杯出たのも納得です。
残念ながら、’90年代初頭に製廃になり、主に「競技車」に使われたのと、PCD114.3のものは
絶望的に残ってないので、バーキンセブンに履ける、程度の良いタマは、まずほとんどないです。


これに気を良くして次にハブベアリングのOHをしました。
新車のバーキンは、油脂類にすべて真っ黒なモリブデン含有の物を使用してます。なかなか良心的
ですが、唯一、ハブベアリングに粘度の低い、シャーシグリスを使用してます。この為、熱でグリスが
流れ出し、ガタが出てトラブルの原因になってます。そこで粘度の比較的高い、BPの♯3グリスで
オーバーホールを施しました。ついでにキングピンにガタがあったので、取りつけボルトにワンオフで
スペーサーを追加し、確実に締め付ける様にします。トラニオンにも#3グリスを入れました。

さらに「オートジャンブル」誌に当時公表されたばっかりの、ロアアームの補強バーを製作しました。
SUS304の引き抜き材を溶接し、バフ仕上げを施した逸品でした。恐らく雑誌の物より強度が上です。
鈴商の補強バーが発売になる半年前に完成。自分で8万円ほど出資して、SUSの4メーター材を購入。
8本位作りましたが、「譲ってくれ!」と皆から懇願されて、原価で配布した覚えがあります。


これですね。今思えば、もっといい形状を考えられたのですが、「量産」という
事を考えて、雑誌のフルコピーになってしまいました。確かにハンドリングは
変わったような気がします。最後の一本は欲しい人がいたら譲ります。


鈴商のラックアンドピニオンのギアボックスの補強バーも、真っ先に購入して取りつけました。

サスペンションスプリングは、当初、鈴商のレース用を装着してましたが、「跳ねる」「遊びがある」
のでやめました。ご存知の通り、スパックスのスプリングの、アッパーマウントの受けは、
Cの字型をしてるので、「遊びのあるバネ」では、外れたりしたらストリートでは命の危険があります。
また、バネレートも無闇に高く、自由長は短いので、車高はベタベタです(車検は相当キビシイ)。

俺様 「’自家用車’のクセに、ハラを擦って我が家の敷地に入れないなんて!」

格言「車高の低さは知能の低さ」

とも言いますので(笑)、あっさりと止めて、名古屋の「テイストカーズ」のスプリングを装着します。
これはオリジナルのバネレートで、自由長も適度。「跳ねない」「遊ばなくて、車検の最低地上高
をクリアーする」というなかなか良いバネです。

ノーマルは、自由長の長いバネを、目一杯圧縮して取り付ける為、ストロークに突っ張り感があり、
リアに至っては、スプリングがストロ−クする限界を超え、「くの字」に曲がってしまい、ダンパーと
干渉して「キーキー」と音がします(ダンパーにプラスチックが巻いてあるのはこの為です。)。
テイストカーズの物は結構考えて造ってあるので、スパックス装着の方はお勧めですね。



ノーマルのリアスプリング。良く見ると、左右で巻数と自由長が違う。市販車では
まず見かけない。私が知ってる限り、こんな事する車は初代フェアレデイZ432の
レース車「432R」だけだ。バーキン社は日産ワークスより志が高くないはずなので
(笑)、「一人乗り用」にわざわざセッテイングしたのではなく、たまたま間違ったの
だろう。私は、ノギスで測って車高調整したのに、全く左右で車高が揃わなく、かなり
焦った(笑)。これだけ長いスプリングならさぞかし「乗り心地は最高!」と言いたいとこ
だが、これを思いきり縮めた状態がノーマルなので、ストロークの限界が過ぎ、スプリ
ングが「くの字」に曲がってギシギシ言う。新車後2年で外したのに、すでに曲がり
クセがついている。ヘタリ易く、寿命も相当短そうだ。


アッパーアームは、鈴商のハイキャスター型に交換しました。低速からキョロキョロする、ノーマル
と比較して、いい意味でハンドリングのドッシリ感が増して、いい感じです。理論的には、トラニオン
部がねじれてフリクションの元になりそうですが、特に弊害は無いです。

鈴商のリアスタビ(旧タイプ)も装着してます。リアの横揺れが激減して、ダンパーを柔らかく出来るので
乗り心地が向上します。調子こくとリアが「スパッ」と流れるので注意が必要ですけどね。

このように、人が見たら、

「そんなにヤッテる奴は滅多に居ないよ!」

と言うくらい改造の嵐の状態ですが、私は、

俺様 「もっと、何とかならないかなー?」

と常々思ってました。ハンドリングの問題点を洗い出し、遊びを取ってくたびに、

俺様 「土台(フレーム)の剛性が足りない」

と痛感しました。そこで、フロント回りのフレーム補強を依頼したのです。

社長 「んじゃ、フレームの補強するからよ。」

と作業に取り掛かります。エンジンレスの車体がウマに掛けられ、フレームのチェックを行います。
社長、点検ハンマーでパイプを叩いていきます。「コンコン。」「カンカン。」


オイルのペール缶(20L)をウマにして作業は進む。エンジンレスは軽いですね。

俺様 「何やってるんですか?」

社長 「ん、音で、フレームの弱いとこ探してるの。」

俺様 「バッチリ補強して下さいね!!」

社長 「そう言うけどよ、あんまりガチガチに補強入れると、パイプのしなりが無くなって、
  アンダー出て、峠で刺さるぞ!程々がいいのよ。」

今思うと、全くその通りですね。釣り竿と同じです。もし、釣り竿の穂先を補強したとするでしょう。
確かに調子は硬くなった気がしますが、もし大物が掛かったら、間違い無く根元から折れます。
全体のバランスが崩れて、破壊してしまうのです。セブンのフレームも、同じだと思います。よく見ると、
クラッシュした時の「逃げ」のために、わざと補強を抜いている個所が見うけられます。DIYでやられる
方は、よくよく考えて作業した方がいいでしょう。

社長 「んー、どうしよっかなー?」

二時間くらい悩んだでしょうか?結論が出たみたいです。溶接機を取り出します。


フロント回りに8ヶ所ばかり補強を入れた。ノーマルとの違いが分かるかな?スタボンには
TIG、MIG、アルゴン、酸素、半自動、スポットとあらゆる溶接機がある。


社長 「ま、こんなもんだろ。」

フレームの、トラスの入ってない個所やラックの台座、ロアアームの付け根に
ガッチリと補強が入れられ、さらにアルミ削り出しの牽引フックもワンオフで製作。
ステーを溶接してボルトナットでしっかり装着しました。完璧です。

社長 「ステアリングシャフトのガタも取るか。」

と、ステアリングシャフトの加工も行いました。97年末に発売された、ゼーテックの新式
フレームになる以前の型のバーキンは、シャフトが単なる角パイプで、しかもベアリング支持
ではないので、イマイチ、ハンドルを回した感じがシャッキリしません。フレーム支持部、
キーシリンダーのあるとこの、シャフトをクランプしてるとこに付いてる、カラーとスプリング
の入ってる個所を加工します。「カラー+スプリング+ワッシャー」で構成されてる個所です。
恐らく溶接の出来により、寸法が狂っても、組み込める様になってる造りですが、スプリング
を切断。ワッシャーを溶接して固定し、遊びのある個所を取っていきます。

俺様 「シャフトの、スライドする個所のガタを取れないっすかね?」

社長 「ああ?この、角パイプに鉄の角材が刺さってるとこ?」

俺様 「はい。某雑誌では、隙間に薄い銅版を挟むと良い、ってありましたよ。」

社長 「はあ?!あのよ、こういう時は、こうするんだ。」

そして、社長、板金ハンマーと当て板で、シャフトの角パイプを叩きました。

「ガンガン!」


ステアリングシャフトの加工をするには、ラジエーター、ペダルボックス、キャブ、インマニ、
ステアリングを外さなければならず、結構大変です。フォーミュラ用のクイックリリースの
ボスを着けたかったら、こういう時に一緒に加工するといいでしょう。

社長 「ほれ!どうだ!」

俺様 「おおー!ガタが無くなってる!すげえ。目からウロコだ。」

社長 「ところで、例のブツ、加工終わって着たから。」

俺様 「おおー!!待ってたんですよ。それ。」

それは鈴商製の「クイックラックピニオンギア」です。ノーマルの6枚歯に対して5枚歯
で、ナックルアームの位置変更でクイックにするのと違い、据え切りしてもタイヤが
ボデイに当たらない、優れもののはずでした。このパーツは、ステアリングシャフト部に
このパーツのスプラインが刺さり、ボルトで挟み込む形状です。しかし、スプライン部の径が
「0.3ミリ大きく、取りつけ不可能」
という代物でした。スプラインの凸凹部すべてが0.3ミリ大きいので、どう考えても、
入りません。もう、こう言う事で心配を抱えるのは、コリゴリなので、買ったプロオートにクレームです。
色々とやり取りがあり、結局、大分値引いてもらいました。このように、プロオートは、私に対しては、
クレームには親切に対応してくれます。もし、不具合が生じたら「しょうがないのか?」などと悩まずに、
お互い気持ち良く付き合う為に、ハッキリとクレームを言いましょう(笑)。クイックギアは、ノーマルのギアの
スプライン部を切り離し、「ニッケル溶接」という特殊な結合方法で合体して使用出来るように
しました。この加工は、「某レーシングコンストラクター」に頼み込んで溶接してもらいました。DIYや、
そこら辺の鉄工所では、高周波焼入れした鋼には溶接は無理です。絶対真似しないで下さい。

ところで、最近の鈴商製のパーツは、なんか品質が落ちたような気がします。「クイックギア」の
件もありますが、例えば、「リアスタビライザー」。旧型はどこにも干渉しませんが、現行型は、太い
タイヤが収まる様に仕様変更した結果、車高を下げると、フレームに干渉します。完全な設計ミスです。
バーキン乗りなら必ず購入するベストセラーの「マスターシリンダーストッパー」も、マルカツで類似品を
出して、対抗して値下げしましたが、旧型に比べて面取り加工やマシニングの出来は大分落ちます。
鈴商と言えば、問い合わせしても、いつまでも返答が来ないマルカツと違い、いつも親切丁寧。
「信頼の鈴商」って感じだったんだけどなあ。鈴鹿の「ウエストレーシング」で製作してる新型車の方に
一生懸命なので、バーキンはもう守備範囲外なのかな?私はバーキン買ったときから鈴商のファンなので、
もっと頑張って欲しいものです。

とうとうエンジンを載せるばかりになりました。いよいよエンジン音が聞けるのでしょうか?