No.35/2006.7
他館レポート
紫の雨−福井爽人の世界(日本画) 

日帰りボランティア研修〔札幌芸術の森美術館〕


  6月9日(金)8時20分、たら丸バスは総勢22名を乗せて木田美術館を出発した。中山峠経由で、およそ2時間半の道程。
  到着するとすぐに学芸員の方から、福井爽人と鑑賞のポイントのオリエンテーションがあった。
  旭川生まれ。小樽―札幌と成長期を北海道で過ごした画家で実に実直な人柄という事である。 平山郁夫との出会いから、「同じ苦労をするなら好きな日本画の道を行こう」と、日大から東京芸大に移り、同大で後身の指導に当たり、2005年に退官。名誉教授となり現在に至っている。
  タイトルの『紫の雨』というのは、彼がインドに取材旅行した時、雨を待ち焦がれるこの土地の少年が描いた紫色の線状の雨であり、この事が深く胸に刻まれていたのだろう。
  展示室にはカッティングシールという技法で壁に彼の詩が何編か効果的に施されていた。バレエは血のにじむような努力を決して観衆に悟られてはいけないという。バレリーナはまるで体重をなくしてしまったかのようにふうわりと舞う。福井の作品は真にこれだと感じた。憂いも厳しさも何もかも静寂と美しさで包み込んでしまう。白馬の絵に近付いてみた。筆致はとても複雑で、宝石のようにキラキラと輝いていた。「叙情と瞑想の世界」とでもいうのだろうか。
  冷たい雨で森の散策は出来なかったけれど、体が軽くなった様な不思議な感覚に満たされた時間であった。
S.M
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