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  著者は、神戸在住の本人曰く歌詠みカメラマン。歌集「大震一年」に続く、阪神淡路大震災後九年間の短歌と写真をまとめたずしりと重い一冊。
  まずは神戸南京町春節にて撮影の史人游行麗妃のお姿に驚いた。これから映画がはじまるような、映画が終わるような、口は堅く閉じているのに何かを語ろうとする見返り姿。
  歌を読むと、行政を見つめるにも自然を見つめるにも己を見つめるにも、強くまっすぐであることがわかる。それをずっと貫き通してきた方なのだと思う。
  短歌は語りすぎに思えてあまり縁を持たなかった。木山さんの短歌はわかりやすく、すとんすとんと落ちてくる。心地よさに惹かれてまた頁を開いている。

  臍出しの乙女ちびっ子ビバ・サンバ、ビバ・神戸いま復興まつり
  近道のつもりが木叢ぼさに径失せて頭上の天はあっけらかんの冬
  湯屋ビルにボランティアの描きし人魚たち復興計画に潰されて失す
  ネオン街に月昇るときうれしくて佇てばさわさわ人ら過ぎゆく
  死の床に呼びたい人が無いほどの淋しい男でよしとするべし
  OB会オトナノハナシ分る派に頑固純情派孤立して混じる
  発想がまとまらないも一発想 六根清浄ろっこんしょうじょう 六根清浄どっこいしょう
  死心地よき古墳よと老い妻は朱塗を残す玄室に言う
  国境を構わず鶴は渡来して泥鰌少なければ籾食むという

 

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